2007年12月23日(日)「しんぶん赤旗」

軍政の人権侵害裁く

南米3カ国 負の遺産清算へ


 民主的な変革がすすむ南米で軍事政権時代の人権弾圧にかかわった人物にたいする司法の裁きが進行しています。背景には軍政の負の遺産を清算しようとする政府の強い姿勢があります。(メキシコ市=松島良尚)


 チリのサンティアゴ控訴裁判所は十九日、ピノチェト軍政下(一九七三―九〇年)で国民弾圧の指揮をとったコントレラス元国家情報局長官に対し、共産党員三人の行方不明事件に関与したとして、一審どおり禁固十年の判決を下しました。弁護側は控訴にあたって時効と恩赦法の適用を求めていましたが、控訴裁は「人道に対する罪」として退けました。

 軍政時代の死者・行方不明者は約三千二百人といわれています。司法当局が時効も恩赦法も適用せずに初めて関係者を起訴したのは二〇〇四年でした。それ以来、サンティアゴ控訴裁は三十件以上について判決を下しています。

 〇六年三月に就任したバチェレ大統領は、軍政時代の「負の遺産」を取り除くことに力を入れています。

 アルゼンチンでは十八日、元軍人ら八人に軍政下(一九七六―八三年)の人権侵害の罪で禁固二十年から二十五年の判決が出されました。同国ではキルチネル前政権下の〇三年に恩赦法が廃止されました。軍政下の死者・行方不明者は三万人以上といわれます。

 フェルナンデス大統領は二十日の軍学校の卒業式で、クーデターや人権侵害の過去から解放された、これまでとは「異なるよりよい軍事組織」の構築を呼びかけました。

 ウルグアイの最高裁は十七日、軍政(一九七三―八五年)最後の大統領だったアルバレス元軍司令官を、左翼活動家ら二十人以上の失踪や秘密裏の移送に関与したとして有罪判決を出し、同日収監しました。

 ウルグアイには軍事政権時代の軍関係者らによる人権侵害を不問にする失効法(恩赦法)がありますが、バスケス大統領は、事件を失効法の対象外との判断を示しています。軍政下の行方不明者は約二百人と推定されています。人権侵害に関与したとされる軍人らの裁判は、バスケス左派政権発足後の昨年九月に初めて実現。同年十一月には、軍政を開始したボルダベリ元大統領が逮捕されました。


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