2007年12月21日(金)「しんぶん赤旗」

軍事費

疑惑のなか5兆円規模

米軍再編・「ミサイル防衛」…


 財務省が内示した二〇〇八年度の軍事費は、前防衛事務次官の守屋武昌容疑者逮捕を発端に防衛省・自衛隊の装備調達をめぐる疑惑に対して国民の怒りが広がっているにもかかわらず、これまでの約五兆円規模をあくまで維持し続けるものになっています。

216億円増

 〇七年度予算で初計上した在日米軍再編経費は、今回の財務省原案では大幅増の五百二十九億円(二百十六億円増)となりました。「ミサイル防衛」関連経費は、〇七年度に比べ若干減ったものの、千七百十四億円です。いずれも、日米の軍需企業などが利権の対象にして群がっている事業です。

 たとえば在日米軍再編に基づく在沖縄海兵隊のグアム移転事業には、守屋容疑者に接待を繰り返した宮崎元伸容疑者の「日本ミライズ」や、同氏が専務を務めていた軍需専門商社「山田洋行」が参入しようとしていました。また、東京地検特捜部が、防衛省への捜索の際、米軍再編に関する資料を多数、押収したとも報じられています。

 特捜部が家宅捜索した「日米平和・文化交流協会」(秋山直紀常勤理事)が主催団体の一つになり、毎年、米国と日本で開いている日米安全保障戦略会議―。そこで日米の軍需企業などが声高に求めているのが、「ミサイル防衛」システムの日本への配備のいっそうの推進です。

 現在、進めているシステムの導入経費だけでも、一兆円をつぎ込む計画です。同時並行で開発を進めている次世代の迎撃システムを導入すれば、経費はさらに膨らみます。その巨大利権に軍需企業や政治家、防衛省幹部が群がっているのです。

 これだけの疑惑が指摘されても、福田・自公政権が在日米軍再編や「ミサイル防衛」を進めるのは、いずれも米国の要求があるからです。

 米軍再編も「ミサイル防衛」も、ブッシュ米政権が掲げる先制攻撃戦略を支える一環です。米国の要求に応え、日本政府は、「ミサイル防衛」を含む再編計画を「徹底して実施する」(〇六年五月)ことを合意しています。

海外想定

 財務省原案に盛り込まれた次期哨戒機(PX)四機調達(六百四十六億円)も、海外での作戦まで想定したものであり、地球規模での日米軍事協力を「同盟の重要な要素」とした日米合意に基づいています。

 日米地位協定は、基地提供以外は米側負担としています。それにも違反する在日米軍への「思いやり予算」が今回、わずか九十億円減にとどまったのも、米国の負担増要求に屈したからでした。

 国民はいま、度重なる負担増にくわえ、原油高騰などによる物価高に苦しめられています。

 それでも米国の要求であれば、疑惑があっても、法的義務がなくても負担する―。財務省原案からは、こんな福田・自公政権の卑屈な姿勢が浮かび上がってきます。(田中一郎)



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