2007年12月19日(水)「しんぶん赤旗」

就労と出産 両立困難

少子化対策 政府会議が認める


 少子化対策を検討してきた「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議(議長・町村信孝官房長官)は十八日、首相官邸で会議を開き、重点戦略を決定しました。

 重点戦略では、国民の結婚・出産にたいする希望と現実に大きな乖離(かいり)が存在すると指摘。とくに女性にとって「就労と出産・子育ては二者択一」になっている構造を解消する必要性を提起しました。

 そのために、「働き方の見直しによる仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現」と、「出産・子育て支援の給付・サービスなど社会的基盤構築」を「『車の両輪』として、同時並行的に取り組んでいくことが必要不可欠」としています。

 また、「効果的な財政投入が必要」として、現在四兆三千三百億円(二〇〇七年度推計)の「児童・家族関係の社会的支出」を、欧州諸国並みに引き上げた場合、一・五兆―二・四兆円の新たな追加支出額が必要と推計。「これを単に社会的コストの増大としてとらえるのでなく」、将来、より大きなベネフィット(利益)が生まれる「『未来への投資』と認識すべき」と強調しました。

 制度設計と財源については「直ちに着手の上、税制改革の動向を踏まえつつ速やかに進めるべきだ」と明記。政府・与党の消費税増税論議と一体のものとして具体化する方向を打ち出しました。

 政府は同戦略にもとづき、地方自治体に少子化対策推進本部となる「総合司令塔」の設置を要請することにしています。


解説

立ち遅れが鮮明に

 「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議の発足の直接のきっかけは、昨年十二月に国立社会保障・人口問題研究所が発表した「将来推計人口」にあります。同推計は、二〇五五年の合計特殊出生率(女性一人が一生に産む子ども数の推計)は、前回推計よりも低下し、一・二六になると予測。政府は「少子化の流れを止めることができないことは深刻」(安倍晋三前首相)と事態を直視せざるをえなくなったのでした。

 政府は、若者の約九割が結婚を希望し、夫婦の理想子ども数は二人以上という調査結果を踏まえると合計特殊出生率は一・七五程度にまで上昇する「仮定値」を推計。「希望実現を妨げる要因の除去」のため、(1)家族政策・制度の国際比較(2)働き方のあり方―などを検証してきました。

 そこで鮮明になったのは、大きく立ち遅れた日本の「子育て・家族政策」の実態でした。家族関係の社会的支出のGDP(国内総生産)比は、スウェーデン3・54、フランス3・02、ドイツ2・01に対して、日本はわずか0・83というけた違いの低さ。合計特殊出生率が二に回復したフランスなみの政策を実施した場合の社会的支出の総額は、現在の二倍以上の十・六兆円になるとも試算しました。

 「働き方」をめぐっても、正規労働者の長時間労働と、非正規労働者の低賃金という二極化構造が、結婚・出産・子育ての重大な障害になっていることが具体的に示されました。

 問題は、明らかになった課題の解決方向が見えないことです。長時間労働の是正をめぐっては、「労使の自主的な取組が基本」とするだけ。異常な働かせ方への規制措置は盛り込まれません。

 子育て支援の財源では、消費税増税という子育て世代にも負担を強いる方向をにじませました。

 重点戦略では、早期対策をしないと、「国民の(結婚・出産への)希望水準が低下し、それが一層の少子化を招く」悪循環を警告しています。空前の利益を上げる大企業に応分の負担を求めることや、軍事費のむだを削るなど財政的確保をはじめ抜本的な打開策の検討は急務です。(宮沢毅)


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