2007年12月16日(日)「しんぶん赤旗」

警官が囲み「かばんの中見せて」

職質乱用に批判

新宿駅周辺


 「もしもし、かばんの中身を見せて」「新宿は犯罪が多いので」―。JR東日本で一日の平均乗降客数がトップの東京・JR新宿駅。西口地下改札を出ると、二人組の警官が立ちはだかります。この一年ほど、同駅界わいで警官の職務質問(職質)の乱用が問題になっています。


 インターネット上でも「新宿署に十徳ナイフ(ナイフやつめ切りなどが折りたたまれて収納されている)を持っていたので捕まった」「ヨドバシ近辺で、リュックを背負った人だけに職質している」など多くの書き込みが見られます。

1年半で7回

 都内で働く男性Aさん(37)は、この一年半の間に新宿駅周辺と歌舞伎町で計七回の職質を受け、うち二回はかばんの中に手を入れられました。

 Aさんによると「警官が二人組で前を遮り『急いでいる』というと交番にいこう」というのが常です。

 かばんの中にあった、ひげそり用のカミソリや、自転車の工具(六角レンチ)について、詰問されたり、かばんを開けることを拒むと「見せられないのは怪しい」と五、六人の警官に囲まれたこともありました。

 警官の職質の対象は何か―。Aさんが警官に問いただすと…。

 警官は、(1)迷彩服(2)鎖やカギをつけている(3)気が弱そう(4)バンダナをしている(5)革製品を着ている―などの特徴を備えた人に注目。「往々にしてナイフを持っているから」というのが理由でした。

 また、警官は「背広を着た人には声をかけづらい。同じ背広を着た刑事の役目」ともらし、「だんなさんも殺されてからじゃ遅いでしょう」とすり寄ったといいます。

 Aさんは日ごろ、頭にバンダナをして一見、“目立つ”いでたちです。「見せる必要もないものを見せるのは屈辱的だ。人を加害者に見立てたと思えば被害者扱い。むちゃくちゃだ」と憤ります。

買い物途中で

 電気工の男性Bさん(36)は、作業ズボンと迷彩色の登山用シャツを着て買い物にいく途中、四人の警官に囲まれました。

 仕事でこん包の箱を開けるときなどに使う、十徳ナイフとカギを一緒につけていました。銃刀法違反で連行されました。

 銃刀法では刃渡り六センチを超える刃物、軽犯罪法では、それ以下のものが対象。ピッキング防止法では十五センチを超えるドライバーも取り締まりの対象になります。

 ある法律関係者は「職質を乱発しても、犯罪摘発の成績が上がらないと批判されるので、無理やり摘発しているのではないか」と指摘します。

 日本国民救援会の瑞慶覧淳事務局長は「職質は警察官職務執行法二条で異常な挙動や、『犯罪の疑い』がある場合に認められている。むやみやたらにできるものじゃない。戦前の反省から国民の人権を侵さないように警察官の活動を制限している。警察は、テロや不審者など社会不安をあおり国民の監視を強めているのではないか」と話します。


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