2007年12月16日(日)「しんぶん赤旗」

主張

薬害肝炎

政府の責任で一律救済を


 汚染された血液製剤でC型肝炎になった患者らが国と製薬会社を訴えている薬害肝炎訴訟の控訴審で、大阪高裁(横田勝年裁判長)が和解案を提示しました。これを受け、福田康夫首相は十四日、舛添要一厚生労働相と町村信孝官房長官に、解決にむけて「厚労相を中心に関係省庁と連携して対応を」と指示しました。

 大阪高裁の和解案は、血液製剤が投与された時期によって、救済の範囲を限定したものです。原告団と弁護団は「同じ被害を受けた仲間を線引きし、切り捨てる案だ」と即刻拒否しました。原告が求める「被害者全員の一律救済を」という当然すぎる要求に応えるのは国の責任です。

安全確保怠った薬事行政

 ウイルス性肝炎の大半は、医療行為に起因する医原性の感染です。感染被害を防ぎ、国民の生命の安全を確保することは国・厚労省の責任です。放置すれば肝硬変や肝がんなど生命にかかわります。

 C型肝炎ウイルスが混入した「フィブリノゲン」など血液製剤は、多くの妊産婦や赤ちゃん、外科手術を受けた人の止血剤などに使われ、感染が広がりました。フィブリノゲンは一九六四年、第九因子製剤は一九七二年に、それぞれ製造・販売が開始されました。

 薬害肝炎訴訟は五年前の二〇〇二年十月、C型肝炎患者を代表するかたちで、東京、大阪の血液製剤の被害者が原告となり、国と田辺三菱製薬を相手取り提訴されました。被害者らはその後も福岡、名古屋、仙台の各地裁に相次いで訴えました。

 薬害肝炎訴訟の原告や被害者が願っているのは、▽ウイルス性肝炎の感染拡大への国・製薬会社の責任の明確化と謝罪▽すべての被害者の救済▽真相の究明と薬害の根絶―などです。これに対し仙台を除く各地裁で、国と製薬会社の責任を認める判決がつづきました。名古屋地裁の判決は、フィブリノゲンは止血剤としての有用性はなく、国と製薬会社は「安易に止血剤として使用されないように説明する義務を怠った」と指摘し、七六年以降の国と製薬会社の責任を認めました。

 大阪高裁の和解案は、国に「解決責任がある」としたものの、責任を認める範囲を国については八七年四月―八八年六月、製薬会社には八五年八月―八八年六月に限定しています。これでは多くの患者が救済対象から排除されてしまいます。「命の重さを差別するのか」「国民の健康を守るという基本を忘れているのではないか」という原告の怒りは当然です。

 日本共産党の志位和夫委員長は十四日の記者会見で、薬害C型肝炎訴訟の和解問題について「被害者全員の一律救済を求め、『この大原則は譲れない』と主張する原告の姿勢は、当然の態度だ」とのべました。そして「首相自らが政治的な決断によって、すべての被害者の一律救済をはかるべきだ」と強調しました。

政府は薬害根絶に責任を

 C型肝炎をはじめ薬害の被害者には何の落ち度もありません。血液製剤が投与された時期にかかわらず、感染とその被害を拡大した国・厚労省と製薬会社に大きな責任があります。とりわけ国民の安全に責任を負う政府は「どうか命を助けてください」との原告や被害者の悲痛な訴えを正面から受け止めるべきです。

 福田首相は原告らとの面会さえ実行していません。患者らの救済に責任を負うなら、首相自らのイニシアチブを発揮し、国・厚労省が直ちにすべての被害者の一律救済と薬害根絶に踏み出す決断をすべきです。


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