2007年12月8日(土)「しんぶん赤旗」

12・8太平洋戦争開始 66年

侵略戦争から何を学ぶのか


 今から六十六年前の十二月八日未明、日本軍は、東南アジアのマレー半島北端に位置するコタバルに上陸する一方、ハワイ・真珠湾の米海軍を爆撃し、太平洋戦争を開始しました。三百万人を超える日本国民の命を奪い、アジアで二千万人を超える人々を犠牲にした日本の侵略戦争から何を学ぶのか、いまに問われています。


「慰安婦」問題

国際的に広がる批判

 太平洋戦争開戦で日本政府は、「南京大虐殺事件」に象徴される中国侵略戦争を継続するための資源獲得をもくろみ、アジア・太平洋地域に侵略の手を広げました。予算編成上も「支那事変(日中全面戦争)と大東亜戦争(太平洋戦争)とは一体のもの」(一九四一年十二月十六日、貴族院予算委員会で賀屋興宣蔵相)でした。

 侵略戦争をつきすすんだ日本は、ドイツ、イタリアとの間でファシズムと軍国主義の軍事同盟を結び、世界に巨大な惨禍をもたらしました。戦後、この反省のうえに「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやう」(憲法前文)決意したのでした。

 ところが、戦後自民党政治は一貫して侵略戦争に無反省な態度をとりつづけ、とくに侵略戦争肯定の「靖国」派が中枢を占めた安倍前内閣では、歴史を逆行させる動きが表面化しました。

 とくに日本軍「慰安婦」問題では、安倍前首相自身が「強制性」を否定し、「軍や官憲による強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」(三月十六日)という政府答弁書まで決定。自民、民主の国会議員は米紙ワシントン・ポスト六月十四日付に同様の全面広告を掲載し、米国内で大きな怒りを買いました。

 こうした動きに対し、米下院が七月三十日、「慰安婦」問題で証拠がないという日本政府に対して明確な謝罪を求める決議を全会一致で採択しました。その後、オランダ下院が十一月八日、日本政府に元「慰安婦」への謝罪と賠償を求める決議を全会一致で採択。カナダ下院も十一月二十八日に謝罪を求める動議を全会一致で採択しました。国際社会からの批判はいっそう強まっています。

 国際社会で連続して日本政府が断罪されているのは、侵略戦争への無反省ぶりが世界からみて異常だからです。

 「戦後レジームからの脱却」など極端な復古的・反動的スローガンを掲げた安倍「靖国」派政権の崩壊は、歴史の改ざんを許さない内外の良識の成果といえます。

教科書検定

問われる「負の遺産」

 安倍政権下での歴史逆流の動きに、高校日本史の教科書から、沖縄戦で起きた「集団自決」への日本軍の強制が削られた問題があります。今年三月の教科書検定で、文部科学省が強行したものです。

 その後の日本共産党などの追及で、「軍の強制」削除が専門的な検討もなく、文科省ぐるみでおこなわれたことが明らかになりました。

 「靖国」派は沖縄戦「集団自決」問題を、南京虐殺、日本軍「慰安婦」問題と並ぶ「自虐史観象徴の三点セット」と位置づけて教科書の書き換えを求めてきました。

 教科書執筆者の一人である石山久男・歴史教育者協議会委員長は、その狙いについて「過去に日本の軍隊がやった残虐行為を隠し、軍隊や戦争を美化したい。そうしないと、憲法を変えて、国民が戦争に参加するようにならない。それに尽きる」と指摘します。

 この検定問題は、沖縄県民の悲憤を呼び起こし、九月二十九日、検定意見撤回を求める県民大会には十一万人が参加しました。戦場で「軍官民共生共死」を強いられ、手榴(しゅりゅう)弾で「集団自決」を図り、死に切れなかった家族を手にかけるという悲痛な体験の記憶は、六十二年たったいまも鮮明なのです。

 ところが、文科省は検定意見の撤回を拒否し続けています。アジア外交で安倍内閣から一定の変化を見せる福田康夫首相ですが、歴史認識ではあいまいなままです。

 十一月二十八日には、「靖国」派の中心である日本会議国会議員懇談会が総会を開き、「事実に反する『軍命令による沖縄住民に対する自決の強制』が教科書記述となることは許されない」とする決議をあげるなど、巻き返しを図っています。

 アジアの平和に貢献するのか、それとも再び海外で戦争する国にするのか―安倍政権が残した「負の遺産」を克服し、歴史をゆがめる異常な潮流を日本の政治から一掃することは、引き続き重要な課題です。


今に生きる反戦の歴史

日本共産党の真価

 侵略戦争反対を訴えることが犯罪とされた時代に、命がけでこれに反対したのが日本共産党でした。

 今年七月十八日に亡くなった日本共産党元議長の宮本顕治さんが入党したのは、一九三一年でした。この年、日本は中国東北部への侵略を開始して、第二次世界大戦に道を開く最初の侵略国家となりました。

 宮本さんは、日本共産党の最も困難な時期だった三三年に党指導部に加わり、治安維持法違反容疑などで不当逮捕されました。

 五年にわたる戦時下の法廷闘争の最後の陳述で宮本さんは、「人類的正義に立脚する歴史の法廷は、我々がかくのごとく迫害され罰せられるべきものではなかったこと、いわんや事実上生命刑に等しい長期投獄によって加罰される事は、大きな過誤であったという事を立証するであろう」と喝破しました。

 「九条の会」の呼びかけ人の一人である加藤周一さんは、「しんぶん赤旗」に寄せた追悼の文章のなかで、「十五年戦争に反対を貫いた」宮本さんの態度をたたえ、「宮本顕治さんは反戦によって日本人の名誉を救った」と書きました。

 日本共産党の反戦・平和の伝統は、「靖国史観」「靖国」派政治を正面から告発し、安倍「靖国」派内閣を退陣においこんだたたかいをはじめ、イラク戦争やアフガニスタンでの報復戦争反対、自衛隊海外派兵反対の追及に生きています。戦争でテロはなくせないと論陣を張り、憲法九条を守り生かす日本をめざして活動しています。


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