2007年12月5日(水)「しんぶん赤旗」

主張

児童扶養手当削減

「凍結」ではなく撤回を


 母子家庭の命綱・児童扶養手当の削減をめぐる新たな動きがすすんでいます。

 政府は二〇〇二年の法改悪で、児童扶養手当の支給開始から五年を超えたら最大半額の削減を来年四月から実施すると決め、準備をすすめていました。しかし、「中止」をもとめる国民の声と運動の高まりのなか、与党は一部見直しをうちださざるをえませんでした。いま必要なのは一時の「凍結」ではなく、削減そのものを撤回させることです。

「就業意欲が基準」では

 与党合意は、本人や子ども等の障害や病気などで仕事につけない事情がないのに「就業意欲がみられない者」には、支給額を半額にするというものです。ほぼすべての人が継続して受給できるといっています。

 しかし、「就業意欲」を支給額の基準にすることに、母子家庭の母親たちから不安の声があがっています。生活保護をめぐって、病弱でも就労ができるとして辞退届の提出を強要され餓死した例まで生まれています。あいまいで意図的な対応が可能な基準であり、不安は当然です。

 現在、与党合意をうけ、厚生労働省で「就業意欲がある」と判断する方法などの検討がすすめられています。ハローワークや訓練所、自立支援センターなどの証明書添付などを義務づける方向だとされています。

 母子家庭の母親のなかには、「子どもの世話をしてくれる人がいない」ために就労していない人、「年齢的」「時間的」に「条件のあう仕事がない」人もいます(厚生労働省「全国母子世帯等調査」)。もともと児童扶養手当には所得制限があり、低所得者に支給されているものです。そのうえ、こういう条件にある人たちが、時間も交通費もかけて、ハローワークなどに行かなければ「就業意欲なし」となるのでしょうか。

 日本の母子家庭の母親は八割以上が働いています。しかも臨時・パートなど非正規で働く母親が増加し、二カ所以上、深夜も働く母親も少なくありません。年収は、児童扶養手当や生活保護費をいれても平均二百十三万円、一般世帯の収入の38%です。先進諸国のなかでも、とくに低い水準におかれています。

 自公政府はこれまでも、児童扶養手当の削減をすすめてきました。二〇〇二年には所得制限の引き下げによって三十三万人が支給額の減額をされています。児童扶養手当が「就労の妨げ」になっており、「自立」を促進することが必要だということでした。ところが与党も認めるように「就業支援」は前進していません。

憲法25条の生存権保障を

 日本共産党は、「母子家庭の命綱・児童扶養手当を削減するな」と国民とともに反対してきました。OECD(経済協力開発機構)も、貧困状態にある日本の母子家庭にもっと公的支出を重点配分すべきという勧告をしています。

 二〇〇二年の法改悪のときには、自民、公明、民主党などが賛成するなかで、日本共産党は反対の論陣をはりました。今年二月には志位和夫委員長が衆院予算委員会で、憲法二五条で保障された国民の生存権を侵害すると、削減中止を強く求めました。参議院選挙政策でも、「緊急福祉一兆円プラン」の一つに児童扶養手当削減中止をかかげました。

 今回、対象者全員、最大で半額削減した場合の金額は百六十億円程度で、新鋭イージス艦一隻分千四百億円のわずか九分の一です。日本共産党は、法改正による削減の中止と充実のために、全力をあげます。


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