2007年12月1日(土)「しんぶん赤旗」

主張

診療報酬改定

医療崩壊の大もとを正せ


 県内でお産ができない、妊婦の救急搬送先が見つからず十回も断られた―産科医療の危機や小児科廃止など地域医療の崩壊が各地で重大問題となっています。医師、看護師不足の下で患者が「医療難民」となっている事態は一刻も放置できません。

 これは「構造改革」の名ですすめられた公的医療費抑制の結果です。二年に一度の診療報酬改定の論議が始まっていますが、医療危機打開の重要な転機にする必要があります。

医療費総枠の拡大を

 診療報酬は公的医療保険から患者への診療の対価として医療機関に支払われるもので、これによって医療の内容と質、価格が決まります。医療機関の経営にも、患者が受ける医療にも直接に影響し、事実上、日本の医療費の総枠(二〇〇四年度の国民医療費は三十二兆円)を決定する意味をもっています。

 たとえば、前回〇六年度の診療報酬改定では、マイナス3・16%の改定となり、医療費で一兆円が削られることになりました。

 その結果、療養病床の削減と患者の追い出しやリハビリ打ち切り、手術料、入院料の減収をもたらしました。そして全国で、大学・国公立病院から地域医療を担う中小病院に至るまで、不採算や体制縮小、廃院を余儀なくされる深刻な事態を広げました。報酬を抑えられている歯科医療では「歯科医師の年収三百万円」時代などといわれるありさまです。

 国民のいのちと健康をまもり、安全な医療を提供するためには、ここで思い切って医療費の総枠を拡大することが不可欠です。

 医療改悪の際に自公政権は、高齢化で医療費がかさむと大宣伝しました。しかし国内総生産に占める医療費の割合は、わが国はカナダ、フランス、ドイツの10%より2%も低く、経済規模からすると十兆円程度も医療費が少ないのです。この上、医療費抑制を続け、勤務医の診療報酬引き上げは開業医の初再診料を引き下げて賄うというのでは、矛盾と「崩壊」を拡散するだけです。

 舛添要一厚労相でさえ医療費抑制では「とてもではないが地域の医療ニーズに対応できない」(経済財政諮問会議)とのべている通りです。削減の標的にされている「後期高齢者の診療報酬」でも、「うば捨て山」同然の差別医療を押し付けるようなことは絶対に許されません。

 見過ごせないのは診療報酬引き下げを主張する財界が、公的医療保険の範囲の縮小と株式会社による医療サービス解禁を要求し、薬代などの保険はずし=自己負担化を求めていることです。また「混合診療解禁」といって自由診療拡大を強調していることです。

 財界がこんな要求をするのは、自らの税・社会保険料の負担を免れるためであり、もっぱら患者負担の増大により医療をもうけの場に変えようとしているからです。これが財政制度等審議会の意見書や、規制改革会議の答申に色濃く表れています。本末転倒というほかありません。

公的保険制度を守りぬく

 公的医療費の総枠を確保すること、そのための診療報酬引き上げがいまこそ求められています。あわせて「新薬」などの高薬価や高額医療機器など、医療費のムダにメスを入れるのは当然です。受診抑制を生んでいる重い患者負担を軽減し、歯科でも医科でも保険適用の診療を拡大して、患者が安心してかかれる保険制度に改善すべきです。

 日本共産党はこうした立場で国民的な合意を広げるため、力を尽くします。



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