2007年11月28日(水)「しんぶん赤旗」

日米にまたがる軍事利権

自民党政権が疑惑を生んだ


 守屋武昌前防衛事務次官の接待疑惑に端を発する問題は、日米両国にまたがる巨大な軍事利権疑惑へと発展しています。現職閣僚をはじめ歴代防衛庁長官、米政府元高官の名前まで浮上した疑惑を生み出した自民党政権の責任が問われます。


相次いだ癒着事件

組織いじりに終始

 一千億円にのぼるCX(次期輸送機)エンジン調達をめぐる疑惑、グアムでの米軍住宅建設など在日米軍再編にからむ疑惑、さらには沖縄県名護市に狙う米軍新基地建設をめぐる利権の疑い―。今回の疑惑で浮上している軍事利権だけでも、これだけあります。

 大本にある防衛省(庁)の装備品調達は、二〇〇五年度実績で国内調達一兆八千九百十七億円、一般輸入千五百二十五億円、FMS(米国による有償の対外軍事援助)調達九百三十七億円で、合計二兆一千三百七十九億円に達する巨大な規模です。このほかに、在日米軍再編経費やSACO(日米沖縄特別行動委員会)経費なども利権にからみます。

 戦車や艦船などの装備品の最大の特徴は特定メーカーしか生産していないため、市場価格がなく、事実上企業の「言い値」になっていることです。そのうえ、「労借り」といって、装備品の開発研究に企業が防衛省(庁)に社員を派遣し、莫大(ばくだい)な日当を受け取った上に将来の受注を確実にするという癒着関係もあります。企業側が見積もり価格にさらに上乗せする水増し請求も発覚してきました。

 ところが、政府・自民党は、一九九八年に水増し請求・背任事件、二〇〇六年に防衛施設庁官製談合事件と、防衛省(庁)をめぐる政官業の癒着事件が相次いできたにもかかわらず、癒着の根本にメスをいれず、組織いじりに終始してきました。

 背任事件では調達実施本部を解体、官製談合事件では施設庁を解体しましたが、癒着構造にはメスをいれてきませんでした。疑惑は後を絶たず、今回も守屋前次官を接待してきた軍需商社「山田洋行」が水増し請求の事実を認めました。

 癒着の温床とされる随意契約(防衛省が競争入札なしに業者と契約するもの)は、二〇〇五年度実績で金額で99・8%、同省の「見直し後」も40・3%を占めます(同省資料)。二〇〇七年度からすべて「一般競争入札」に移行するとしていますが、「選定に当たり個々の防衛装備品固有の高度な知識や技術的専門性が必要となる」として、「総合評価方式」という方法をとるとしています。これでは癒着の構造は断ち切れません。

 年間五兆円もの軍事費を「防衛」「安保」を口実に聖域扱いしてきたことが、浪費と癒着を生む根本原因であり、それを放置してきた歴代防衛庁長官や防衛相、自公政府自体の責任は重大です。

ミサイル防衛・海外派兵

軍拡政策が背景に

 日米軍事利権が巨大化したもう一つの背景に、小泉内閣以来の海外派兵・軍拡政策があります。

 小泉内閣は〇一年のインド洋派兵、〇四年のイラク派兵と、海外派兵を常態化させ、有事法制など米国とともに「海外で戦争する国づくり」を進めてきました。この路線が旧ソ連対応の兵器に加え、ヘリ空母や大型輸送艦など海外派兵型装備という無駄遣いにつながってきたのです。

 〇三年十二月には、それまで「研究」段階だった「ミサイル防衛」で導入に踏み切り、総額一兆円ともいわれる巨大利権に道を開きました。沖縄新基地建設を加速させ、岩国・座間などの基地強化、グアムでの米軍住宅建設を日本が負担するなどの在日米軍再編も小泉政権下ですすめられました。

 今回、軍事利権の中心にいる「黒幕」と指摘される「日米平和・文化交流協会」の秋山直紀常勤理事が中心となり、自民、民主、公明の国会議員や日米軍需産業が集合する日米安保戦略会議も、〇三年から毎年開催されるようになり、ミサイル防衛を中心に兵器の展示・売り込みはもちろん、軍拡戦略が公然と語られるようになりました。

 もともと利権の巣だった軍事費をめぐる癒着構造を巨大化させた責任が自公両党にはあるのです。小泉政権で長く官房長官を務めた福田康夫首相の責任も問われます。

 疑惑の発端となった守屋前次官は、一九九五年に防衛庁内に設置された「弾道ミサイル防衛研究室」の室長を務めて以来、ミサイル防衛と深くかかわってきました。沖縄の米軍基地をめぐっても九六年のSACO合意を審議官として担当、その後は防衛庁幹部として沖縄問題を扱い、在日米軍再編まで主導した人物でした。

 こうしたなかで、久間章生元防衛相、額賀福志郎元防衛庁長官といった「国防族」との結びつきも強くなり、軍需産業からの接待におぼれていったのです。

 日米軍事利権の闇に徹底的にメスをいれるとともに、巨大な軍事費を抜本的に削減することが利権一掃のためにも必要です。(藤田健)


自公政権の軍拡政策

 《海外派兵》
01・10 米国のアフガン報復戦争を支援するためのテロ特措法成立
11 海上自衛隊艦船がインド洋へ
03・7 イラク特措法成立
04・1 空自部隊(本隊)がイラク戦争支援のためクウェートへ
陸自部隊(本隊)がイラク・サマワへ
06・7 陸自部隊がイラク撤収
07・11 海自部隊がテロ特措法期限切れで撤収

 《ミサイル防衛》
02・12 石破防衛庁長官が「開発・配備を視野に検討」と発言
03・5 小泉首相が日米首脳会談で「ミサイル防衛」の「検討の加速」を表明
12 小泉内閣が「ミサイル防衛」の導入を閣議決定

 《在日米軍再編》
05・2 日米外交・軍事首脳会談で「日米共通の戦略目標」確認
10 同上、基本文書「日米同盟:未来のための変革と再編」を発表
06・5 同上、「再編実施のための日米のロードマップ」発表
07・5 同上、「同盟の変革:日米の安全保障及び防衛協力の進展」を発表

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