2007年11月23日(金)「しんぶん赤旗」

党首会談での志位委員長の発言

(要旨)

当面の政治課題で3つの提起


 二十二日の党首会談ではまず、福田首相が米国とアジア訪問の報告をおこない、新テロ特措法案について、「ぜひご理解を」と強調しました。そのうえで、当面の政治課題についての意見を聞きたいとの首相の提起をうけ、志位和夫委員長が三点にわたり発言しました。


アフガンでの和平を促す外交努力を

写真

(写真)記者会見する志位和夫委員長(右)と市田忠義書記局長=22日、国会内

 志位 第一は、新テロ特措法案についてです。テロ根絶というのなら、何よりもアフガニスタンの現実がいま何を求めているのかから出発した、冷静な議論が必要だと思います。互いに立場が違っても、そういう議論が必要です。

 いまアフガニスタンでは、対テロ戦争――報復戦争がゆきづまっています。そのもとで、カルザイ大統領は「平和と和解のプロセス」――「アルカイダやテロリスト・ネットワークの一部でないすべてのタリバン」との交渉による和平を追求しています。アフガニスタン上院は、和平をすすめるために米軍などに対し、タリバンなどへの軍事掃討作戦を中止するよう求める決議を可決しています。

 首相は、わが党議員の質問に対して、「和平のプロセスの推進は重要だ」と答弁しました。それならば、いま日本がなすべきは、対テロ戦争支援を再開することではなく、アフガンにおける和平を促進する外交努力であり、その障害となっている軍事掃討作戦は中止すべきだということを米国に対してきっぱりいうべきです。そういう外交努力こそ求められているのではないでしょうか。

 わが党は、新テロ特措法案は、憲法違反の海外での戦争支援法であり、もちろん反対ですが、いま述べた問題での首相の見解をうかがいたい。

軍事利権問題――任命権者の首相が究明を

 第二は、軍事利権の問題についてです。守屋武昌前防衛事務次官の証人喚問で、額賀福志郎元長官、久間章生元長官が、(軍需専門商社「山田洋行」元専務の)宮崎元伸容疑者の接待攻勢の対象とされていた事実が明らかになりました。

 わが党は、国会での証人喚問など真相究明が必要だと考えていますが、ことは現職大臣、元大臣、自衛隊員のトップである事務次官が関与した疑惑です。首相は大臣の任命権者であり、自衛隊の最高指揮官として、責任を持って自ら真相究明にあたるべきであり、国民に説明責任を果たすべきだと考えますが、そのつもりはありますか。

“社会保障財源”として消費税増税を認める立場なのか

 第三は、喫緊の国民生活の問題についてです。

 私は、先の代表質問で、小泉内閣の「骨太の方針」以来、社会保障予算の自然増を認めず、毎年二千二百億円を削減してきた問題をただしました。いわゆるシーリングの問題です。そのことが、社会保障制度のあらゆる分野で負担増と給付減をもたらし、社会保障から排除される人々を生み出していることを具体的に示し、社会保障費抑制路線からの転換を求めました。その後、舛添要一厚生労働大臣などからも「二千二百億円の抑制は限界にきている」と再三にわたって発言がありました。来年度予算編成にあたり、この枠組み、シーリングは取り払うべきではありませんか。

 いま一つは、消費税の問題です。二十日に発表された政府税調答申では、一方で、「(社会保障財源を)消費税率引き上げで賄うことを選択肢の一つとして検討する」と述べつつ、他方で、「法人実効税率の引き下げ」を求めました。首相も同じ考えでしょうか。端的にいえば、社会保障財源を消費税率引き上げでまかなうことは当然だという考え方をお持ちでしょうか。

 わが党は、社会保障財源は、空前の利益をあげている大企業に応分の負担をもとめるなどによってまかなうべきであって、大企業へのいっそうの減税をすすめながら、貧困と格差を拡大する消費税増税などは、絶対に反対ですが、首相の基本的見解をうかがいたい。

首相とのやりとり

 志位委員長の発言をうけ、首相との間で次のようなやりとりとなりました。

【新テロ法案】

 首相 和平のための努力は重要だ。ただ、和平のテーブルにつくという点については、まだその時期ではない。同時並行でやる必要がある。

 志位 同時並行といわれたが、何を(和平と)同時並行でやるべきだというのか。

 首相 タリバンの掃討だ。

 志位 掃討と同時並行で和平というのは、まったく矛盾している。和平の方向に切り替えるべきではないかと問うている。

 首相 和平の交渉は時間がかかる。潮時がいつくるか、つねづね考えながら同時並行で事をすすめている。いまはそういう時期ではなく、もう少しの辛抱が必要だ。いまはその時ではない。NGOの活動も誰かが守ってやらないとそれはできない。

 志位 タリバン全体を掃討の対象と首相は考えているのか。

 首相 タリバンについては(自分も)よく分からない。

 志位 分からないのに掃討の対象か。

 首相 タリバンのなかには、いいタリバンもあるし、危険なタリバンもいる。いろいろあるんでしょう。

 志位 和平の話し合いは重要といいながら、こん棒で殴る。こん棒で殴りつけながら話し合いをおこなうことは成り立たない。タリバンを掃討するという立場で、タリバンをどうやって、和平の方向に変えるのか。説明がつかない。

【軍事利権】

 首相 私も頭にきている。志位さんと同じくらい怒っている。それで、官邸に第三者委員会を設けた。官房長官を責任者にして、規律問題、情報管理の問題、調達の問題で第三者委員会をやる。

 志位 聞いていることに答えていない。総理として、真相解明にあたるべきではないか(と聞いた)。首相自身が自衛隊の最高指揮官だ。自ら任命した大臣が疑惑の渦中にあるというもとで、これを自ら解明する立場にたつのか。

 首相 私に何をやれというのか。そんな権限はない。もう司法の世界に移っている。

 志位 宮崎氏はすでに逮捕されているが、額賀氏は現に大臣として仕事をしている。司法の問題ではなくて、政治の世界できちんとやるべきではないか。

 首相 共産党は委員会で厳しく追及しているではないか。何をやれというのか。

 志位 大臣を呼んで真相を問いただしたらいい。首相としての解明責任、説明責任が問われているのだ。

【消費税問題】

 首相 年々、社会保障費は増えるので、当然、その財源に消費税をあてるということになる。ただ、消費税だけでは無理だ。消費税だけで社会保障財源をまかなおうと思えば20%の消費税率にする必要がある。だから、他の財源も必要だけれども、社会保障財源に消費税をあてるという点では自分も(政府税調と)同じ考えだ。

 志位 これは大事な論点だ。社会保障財源を消費税率引き上げでまかなうということは、首相自身も同じ考えか。

 首相 そうせざるを得ない。

 志位 重大な発言だ。絶対に認められない。


志位委員長が感想

 日本共産党の志位和夫委員長は二十二日、市田忠義書記局長とともに国会内で記者会見し、同日開かれた党首会談の内容について詳細を報告したうえで、感想を語りました。

 志位氏は、アフガニスタンの現状について、首相が「タリバンの掃討と和平を同時並行ですすめる」と述べたことを紹介。「タリバンを掃討する立場で、どうやって和平の方向に変えるのかと(首相に)聞いても回答はなかった」と述べ、「アフガンの実態について、あまりに現実を踏まえないで派兵を再開しようとしていることに驚いた」と語りました。

 そのうえで、志位氏は、首相の姿勢について、「アフガンの現実が求めているものから出発するのではなく、アメリカから言われたから『給油活動』という名の『報復戦争支援』を続けるというだけのものだということが浮き彫りになった」と強調しました。

 また志位氏は、軍事利権の真相究明に対する責任について、首相が「私に何をやれというのか」と述べたことをあげ、「要するに、国民に説明責任を果たす意思はないというのが回答だった」と指摘しました。首相からは、「司法の問題」「権限はない」との回答しか返ってこなかったことをあげ、「自分の問題だという自覚がまったくない」と述べました。

 さらに、社会保障財源について、政府税調の答申が、消費税引き上げを「選択肢の一つ」として検討の対象にしたのに対し、「首相は『そうせざるをえない』と結論として言いきった」と強調。「これは非常に重大な発言だ」と述べ、「我々としては、もちろん認められない」と指摘しました。


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