2007年11月20日(火)「しんぶん赤旗」

イラク派兵

差し止め訴訟棄却

札幌地裁 市民監視、ゆゆしき問題


 自衛隊のイラク派兵は違憲だとして、全国で初めて差し止めを請求した北海道イラク派兵差し止め訴訟(原告・故箕輪登氏ほか三十三人)の判決が十九日、札幌地裁でありました。竹田光広裁判長は、「平和的生存権」が侵害されたとして損害賠償を求めた原告側の主張を棄却する不当判決を出しました。

 判決は、民事上の差し止め請求権が認められる余地がないとし、「判断するまでもなく差止請求は不適法」と断じ、“門前払い”にしました。

 憲法前文に盛り込まれている「平和的生存権」の侵害については、「基本的人権の保障の基礎的な条件」といって、原告らの戦争に加担したくないという「心情は軽視されてよいものではない」としました。しかし、「(イラク派兵による)精神的苦痛が、社会通念上の受忍限度を超えるとまではいいがたい」と切り捨て、訴えを退けました。

 自衛隊のイラク派兵を強行する前後に自衛隊情報保全隊が平和運動を監視していたことについては「国民一般に対する情報収集活動が行われていたことがうかがわれ、ゆゆしき問題といわざるを得ない」と認めました。

 一方で、「派遣の違法性を基礎付ける事情として考慮することは格別、直ちに原告ら個々人の個別、具体的な権利、利益に対する侵害ととらえることはできないし、原告らに直接的、現実的なプライバシーの侵害が生じているとまではいえない」と判断を避けました。

原告ら談話

 弁護団事務局長の佐藤博文弁護士の話 差し止め請求を門前払いにすることは、当初から予想できたが、裁判所として憲法判断に踏み込んでほしかった。損害賠償請求は「棄却」だったが、「却下」ではなく、実質審理までさせたことは大きな成果だ。情報保全隊の活動を「ゆゆしき問題」と認めさせたのは、今後の運動に大きな力になる。


 北海道イラク自衛隊派兵差し止め訴訟 小泉自公内閣が二〇〇四年一月九日に強行した自衛隊イラク派兵は憲法九条に違反し「平和的生存権」を侵害すると主張し、故・箕輪登元防衛政務次官(元郵政相)を原告に、全国に先駆けて札幌地裁に同年一月二十八日、提訴しました。〇五年三月の第二次提訴では、共産、民主、社民各党の元国会議員らも原告に加わり、政党政派を超えた訴訟になっています。



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