2007年11月18日(日)「しんぶん赤旗」

中南米の貧困縮小

経済成長・所得再分配を反映

極貧人口 90年比ほぼ半減


 国連中南米カリブ経済委員会(ECLAC)は十五日、「極貧を半減する国連ミレニアム開発目標の達成へ順調に向かっている」と題する声明を発表し、この地域の貧困人口、率とも一九九〇年以来最低となったことを明らかにしました。前進が著しいのは、新自由主義からの脱却を掲げるアルゼンチンとベネズエラです。(メキシコ市=松島良尚)


国連機関が発表

 声明は「二〇〇七年ラテンアメリカ社会概観」の発行に伴って発表されました。

 声明によれば、〇六年に千五百万人が貧困から脱出し、貧困人口は一億九千四百万人で、36・5%。前年より3・3ポイント減少しました。貧困人口が二億人を割ったのは九〇年以降初めて。貧困人口に含まれる極貧人口は七千百万人(前年比一千万人減)、13・4%(同2ポイント減)です。

 「貧困」とは必要なものを満足に手に入れられない水準を指します。数値は各国で違いますが、「非都市部の貧困層」では、一人当たり月三十二ドル(約三千五百円)―百一ドル(約一万一千百円)の収入です。

 「概観」は改善の背景として、域内で5・6%に達した経済成長のほか、平均給与が二〇〇〇年以降初めて実質で2%以上、アルゼンチンやブラジル、ベネズエラなどでは3%増えたこと、社会政策などを通じた所得再分配の促進などをあげています。

 ECLACは〇七年の貧困率を35・1%、極貧率12・7%と予想しています。これは、一九九〇年当時の極貧人口22・5%を二〇一五年までに半分にするというミレニアム目標からみれば、半分の11・25%に対し9・8ポイントまで削減したことになり、目標達成率は87%です。

 声明は、「九〇年当時の貧困人口48・3%の半減」というさらに高い目標の設定も可能だと強調しています。

 域内でもっとも貧困削減が進んだアルゼンチンの〇六年貧困人口は、前年比5ポイント減の21%。経済危機の影響を強く受けた〇二年からみると24・4ポイント減、半分以下です。

 ベネズエラでは、〇五年比約7ポイント減の30・2%。チャベス政権が発足した九九年当時からは19・2ポイント減です。

 ブラジルの貧困人口は〇五年比3ポイント減の33・3%になりました。「概観」は、一億八千万人以上という人口規模からみて、同国の前進が域内全体に与える大きな影響を強調するとともに、前進の「決定的要因」は、貧困世帯向け支援策を中心とする社会計画だと指摘しています。

 世界食料デーの十月十六日、国連食糧農業機関(FAO)のグラシアノ地域責任者は、全消費量の一・四倍以上に達している域内の食料生産やこの間の経済成長のほか、社会的不平等の縮小にとりくんでいる「革新政権の急増」を今後の貧困克服の好条件として生かそうと呼びかけました。


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