2007年11月9日(金)「しんぶん赤旗」
ワールドリポート
広島―ロシア・チェルノブイリ
ヒバクシャの新たな出会い
「連帯を感じた」
米国と並ぶ核兵器大国のロシアをこのほど、広島の被爆者代表らが訪問しました。日本被団協によると、一九九一年末のソ連崩壊後のロシアで被爆の証言がおこなわれるのは初めて。ミュージカル「はだしのゲン」も上演され、若者はじめロシア市民には衝撃的な企画となりました。準備にはチェルノブイリ原発被害者らが協力し、日ロのヒバクシャの新たな出会いともなりました。訪問した村田さんたちに聞きました(田川実)
広島県原爆被害者団体協議会の副理事長、村田忠彦さん(67)が訪れたのは、モスクワの北東二百五十キロにあるヤロスラブリ。ロシア正教会の建物など市の一部が世界遺産にも登録されている、人口六十一万人の古都です。
村田さんは十月二十三日から三十日まで、市内の学校や大学などで記録映画「ヒロシマ・母たちの祈り」を上映しながら被爆体験を語りました。合間には原爆写真展の会場でも説明に立ちました。初日に地元テレビ、ラジオ、新聞の取材を受け報じられたこともあり、どこでも多くの若者や市民が集まりました。
本当の悲惨さ
大半の市民には被爆の実相を伝える映画や被爆者の直接の話は初めてで、涙を浮かべる人も。「これまでイメージがわかず真剣に考えたことはなかったが、本当の悲惨さが分かった」「原爆を使い、他人の人生を壊す権利は、誰にもないと思う」(第五十七番校の八年生のビクトリアさんとターニャさん)などの感想が返ってきたといいます。
「核兵器を一番多く持っているのはどこの国?」と質問した子に、「数だけで言えばロシア」と答えると、びっくりされる場面もありました。
一方、老人福祉施設では、「私たちはナチス・ドイツの侵略を受け、戦後は米国にだまされ苦労してきた。核兵器をなくせと説教するなら米国に行くべきだ」との意見も出ました。
村田さんが「米国にも被爆者は行っている。ロシアだけでなく、世界の核兵器をなくしたい」と話すと、相手は納得したといいます。
補償強い関心
被爆者証言は、ロシアのNGO「チェルノブイリ同盟」の協力で実現しました。これまで日本との交流は少なく、急な要請だったにもかかわらず、目いっぱいの日程を組んでくれました。
「同盟」は、チェルノブイリ事故の消火活動に動員され被曝(ひばく)した人たちを組織しています。ここ数年は、ロシア政府が医療支援などを削っているとして抗議を続けており、日本の被爆者とその子どもの健康、国からの補償・支援の現状に強い関心を持っています。
村田さんは、「滞在中、体調など細かい配慮をしてくれた。爆弾と原発の違いはあるが、ヒバクシャ同士の連帯を感じた」といいます。
できることは
「はだしのゲン」(企画・木山事務所)の公演も、モスクワの四回、ヤロスラブリでの一回、すべて満員でした。感動してゲンと被爆をテーマに詩を書いて届けた女性もいます。
「核兵器をなくすために何かできることはないか」。どこでも出た質問です。村田さんが、「私の話を覚えておいてほしい。家族や友人にも伝えてほしい。すみやかな核兵器廃絶を求める署名にも協力を」と話すと、一人で五十人分の署名を集めて持ってきた生徒もいました。
「初めての国だったが、行ってよかった。真剣に訴えれば欧米でもロシアでもこたえてくれると確信した」。これからも交流を続けたいと村田さんらは考えています。

