2007年11月3日(土)「しんぶん赤旗」
子育ての希望と現実に乖離
背景に非正規増・長時間労働
少子化白書
政府は二日の閣議で、少子化の現状と対策をまとめた二〇〇七年版少子化社会白書を決定しました。白書は、昨年十二月の新人口推計(中位推計)に基づき、二〇五五年には総人口は約九千万人、出生数は五十万人を切ると記述。十四歳以下人口は七百五十二万人(〇七年は千七百二十四万人)、総人口に占める割合は8・4%(〇七年は13・5%)にまで減少するとしています。
同時に、国民の結婚や子どもを持ちたいという希望は高く、希望子ども数の平均は男女ともに二人以上となっている調査をあげながら、希望と実態との乖離(かいり)を解消することで少子化の流れを変えることは可能だと強調しています。
〇六年の日本の合計特殊出生率(女性一人が生涯に産む子どもの数)は1・32と、欧米諸国と比べて低い水準にあります。
白書は、急速な少子化の進行の背景として「就業継続と子育てとが二者択一的となっている状況」や、非正規労働者の増大、長時間労働などの「働き方をめぐる様々な課題」があると指摘。「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現に向けた働き方の改革」を最優先の課題に位置づけています。
また、スウェーデンやフランスのように、二〇〇〇年以降、出生率が回復する国が出てきていることに注目しています。家族関係社会支出の規模(対GDP比、〇三年)がフランスで3・02%、スウェーデンで3・54%と、日本(0・75%)に比べ非常に高いことや、児童手当などの手厚い経済的支援とともに、仕事と育児・家庭の両立支援に多くの公的支出がなされていることを報告しています。
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国民の願いに沿う対策を
解説
今年の少子化白書は、国民の「子どもを持ち、育てたい」という希望と、それができない実態との乖離に焦点を当て、「障害」を取り除くための施策の必要性を説きました。
子どもを産み育てていく上での日本社会の「障害」を、国民は日々、肌身で感じています。白書発表直前の十月末、さいたま市で開かれた少子化対策についての政府と国民との対話集会でも、そうした思いが噴き出しました。「子どもともっとかかわりたいが今の働き方では無理だ。でも、生活のためには仕事を辞めるわけにもいかない」(栃木県の男性)「放課後子ども対策が貧弱だ。マンションの一室に五十人が詰め込まれている」(横浜市の女性)「不妊治療で授かった命を六カ月で早産。受け入れ病院がなかなか見つからなかった」(東京都小平市の女性)―。北は秋田、南は福岡から駆けつけた人たちが、最後まで発言の機会を求め、手を挙げ続けていました。
白書が強調する働き方の改革=「ワーク・ライフ・バランス」は、財界の狙う雇用の多様化・柔軟化促進のテコとしてでなく、男女がともに人間らしく働き生活できる社会を実現する力として生かされなくてはなりません。
具体的な施策は、年内に政府の「『子どもと家族を応援する日本』重点戦略検討会議」の報告書でまとめられる予定です。どれだけ国民の願いに沿った中身が打ち出されるのか、注目されます。(坂井 希)


