2007年10月29日(月)「しんぶん赤旗」

変わる 動いた

地方政治は今


 各地で広がっている、地方政治を動かしうるという地方議会などの変化のいくつかを見ました。


三重県議会

乳幼児医療費、障害児…

請願採択 次つぎ

「議員たちが住民に目を向けるようになった」

 三重県議会定例会(十月十九日閉会)では、日本共産党も参加する「県民本位のやさしい三重県政をつくる会」が、約四千人の署名とともに提出した乳幼児医療費の無料年齢引き上げ請願が全会一致で採択されました。

 公明党議員団が慌てて同趣旨の請願を出してきたため、同党との共同提案という極めて異例の形になりましたが、日本共産党が一貫して主張してきた施策に全会派が賛成するという画期的な結果になりました。

 さらに、障害児のための特別支援学校の分校設置を求める請願二件も、全会一致で採択されました。日本共産党の萩原量吉県議が積極的にかかわってきた案件です。

異例の参考人陳述

 請願を審査した教育警察常任委員会では、萩原議員のリードで現地調査や障害児の親など参考人の意見陳述も行われました。参考人を委員会に呼ぶのは、三重県議会では近年なかったことです。

 教科書に沖縄戦の「集団自決」記述の回復を求める意見書も、全会一致で可決されました。民主党系会派が提出したものですが、日本共産党の真弓俊郎県議が賛成討論に立ち、文科省と自公政権を厳しく批判した上での全会一致です。

 県議会の変化は、これにとどまりません。最終日の本会議で行われる各常任委員会委員長の報告は従来は通り一遍の内容でしたが、各委員長が、委員会での論議を踏まえて異口同音に県政への注文を付け加えたのです。

 県議会の変化を生み出した要因の第一は、何と言っても、萩原、真弓両議員が四年ぶりに議席を奪回し、日本共産党がゼロから二議席になり、県民の声を代弁しているからです。

 第二は、四月の県議選、つづく参院選を経て、悪政に怒り、新しい政治を求める県民の声が確実に強まり、多くの議員の姿勢が変わったことが挙げられます。

 「今の時代、県民の声を無視した議員活動はできんわなぁ」(自民系議員)というつぶやきも聞かれました。日本共産党以外の議員が、一般質問などで県民の暮らしや福祉をめぐる具体的な問題を数多く取り上げました。「こんなに活発な議論は今までになかったこと」(萩原議員)という状況でした。

各市議会でも

 こうした変化は県内の市議会でも生まれました。鳥羽市の九月議会では、国保税の適正引き下げを求める請願が全会一致で採択されました。六月の議会では乳幼児医療費の就学前までの無料化を求める請願が出され、全会一致で採択されて来年四月から実施されることになっています。

 いずれの施策も、日本共産党の戸上幸子議員が繰り返し主張してきたものです。戸上議員は、背景に市民要求の強まりと、四月の市議選を経て各議員の姿勢が変化してきたことがあると指摘します。

 いなべ市の九月議会では、老人福祉施設のパークゴルフ場料金値上げ案に、日本共産党の石原瞭議員とともに、他会派の議員が反対討論を行い、結局七人が反対に回りました。

 衣笠民子党市議は「当局案にこんなに反対者がでたのは初めて。議会の様子は参院選前と明らかに変わりました。議員たちは敏感で、住民の方に目を向けるようになった。党の第五回中央委員会総会決定で言われた『国民の声で政治が動く情勢』は、自分とはかけ離れたことだと思っていたが、私の周りにその情勢があった」と話しています。

 四日市市の九月議会では、水道料金大幅値上げ案に日本共産党だけでなく保守系議員を含む十五人が反対、もう少しで否決するところまで追い込んでいます。同議案には公明党議員も反対しました。同党が当局案に反対するのは珍しく、支持者の声の強まりを無視できなかったことがうかがえます。


宮崎県議会

前屋敷県議、世論が共同

豪華海外視察 中止に

 四月の宮崎県議選で日本共産党の前屋敷えみさんが当選し、四年ぶりに党議席を回復したことで、県議会に大きな変化があらわれました。

 その一つが、県民から「ただの海外旅行ではないか」と批判の強かった豪華海外視察問題。二〇〇二年度から〇五年度までの四年間で自民、民主、社民などのべ二十七人が実施し、費用は総額約二千五百万円にのぼります。

 九月県議会で、総額一千万円にのぼるヨーロッパ視察議案が提案されました。視察する都市や施設など詳しい行程は明らかになっておらず、“一千万円の海外視察”が先にありきでした。

 前屋敷県議は、ただ一人、反対討論に立ち、「県が財政難のいま、県民の理解は得られない。視察は中止して県民の負担を少しでも軽くするべきだ」と主張しました。

 賛成派県議は、ヤジを飛ばすだけでした。

 多くの県民から、海外視察を予定していた県議のもとに、連日のように抗議の電話や手紙が寄せられました。日本共産党は、街頭宣伝やビラで県民に知らせ、どこでも励ましを受けました。

 県議会は十月十八日、ついに海外視察の中止を決定しました。一度決定した豪華海外視察を中止させたことは、県政史上、初めてです。党県議の論戦と県民世論の共同で、中止に追い込みました。

 党支持者からは「日本共産党の議席が、一議席でもあると、全然違うね」との声があがっています。


千葉市議会

妊産婦健診の無料回数拡充

委員会で請願採択

 千葉市九月定例議会の保健下水委員会で、「妊産婦健康診査の無料受診回数を増やすことを求める請願」が採択されました。新日本婦人の会千葉支部が提出、日本共産党が紹介者となったもの。五対五の可否同数の末、委員長(民主)が賛成しました。

 保守系議員からは「裏切り者」の声も。六月議会では日本共産党紹介の請願を否決してきた民主の変化です。

 請願は、経済的な負担から健診を控える妊婦がいると指摘し、厚生労働省が昨年、「五回は無料化に」と通知して以来、全国の自治体が補助を進めているとして、「無料受診を現在の二回から五回以上に」と求めています。

保守、公明が本会議で否決

 それだけに本会議で否決した保守、公明の責任は重大です。

 また同定例会では、日本共産党が要求してきた政務調査費の一円からの領収書添付、費用弁償の廃止、常任委員会の傍聴が、全会一致で決まりました。

 自民、公明などはこれまで政務調査費の領収書添付義務化を否定。昨年、市民が提出した添付の義務化を求める「請願」には、民主系会派も含め賛成しませんでした。

 しかしその後、「五万円から」(自民)、「一万円から」(公明)と領収書添付の方向へ変化。先の参院選後、「一円から」に同意しました。

 議会の交通費などの名目で一日八千円支給される費用弁償は、「議員報酬の二重取り」「税金のムダ遣い」など世論が高まり、廃止に。多くの市民の要求にもかかわらず、自民、公明などが「委員会室がせまい」と拒否してきた常任委員会の傍聴は、「主権者である市民の傍聴は当然」「非公開は異常」などの批判を受け、全会派が合意しました。


高松市

市営住宅は残った

住民と共産党 市を動かす

 香川県では「老朽化が著しい。財政状況の悪化」を理由に、高松市が廃止しようとした上之町(かみのちょう)の市営住宅を住民の運動と日本共産党の共同で存続させました。

 住民運動と日本共産党地域支部、市議団の奮闘が実を結び、市は九月十二日(説明会は二十八日)、上之町すべての市営住宅廃止を撤回しました。

 上之町市営住宅の住居者あてに市から、「三年以内に、ほかの市営住宅に移転するように」(回答期限一月末)との書類が送られてきたのは、二〇〇五年十二月でした。

 突然の手紙に驚いた住居者十人が、共産党員の自治会長に相談。地域支部や日本共産党市議らとともに相談会を開きました。住民は翌〇六年一月二十一日、「上之町市営住宅を考える会」を結成。相談会を開き、約六百人から署名を集め、市と交渉を繰り返しました。市議会では日本共産党市議団が質問に立って追及しました。

 「運動が始まると、岡田まなみさん(現市議)や共産党の支部の人は、自分のことのように親身になってがんばってくれた。苦しいときにも逃げ出さず、住民を励まし、最後まで一緒にたたかってくれた。本当に信頼できる党だ」と、森上務さん(考える会代表世話人)は話します。

 岡田市議は「いち早く『会』をつくり運動してきたことがよかった。運動を通して、住民の力の大きさを改めて実感した」と話しました。


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