2007年10月27日(土)「しんぶん赤旗」

柏崎原発の教訓を無視

浜岡原発訴訟静岡地裁判決

M8級想定震源域の直上

無謀な立地を追認


 マグニチュード(M)8級の巨大地震の震源域にある浜岡原発。世界の常識では考えられない原発の立地条件です。M6・8の新潟県中越沖地震は、柏崎刈羽原発に「想定外」の被害をもたらしました。中部電力の主張を全面的に受け入れた静岡地裁の判決は、柏崎刈羽原発の教訓を無視したもので、安全を求める国民の声にはこたえていません。(中村 秀生)


 原発の耐震設計をめぐっては、柏崎刈羽原発が今年七月に新潟県中越沖地震の被害を受け、実際の地震の揺れが、設計で想定した揺れを大きく上回りました。現在の原発耐震設計の想定の甘さが露呈しました。

 原発構内のいたるところで地盤沈下や崩落、亀裂が発生。調査では、すでに約三千件もの事故や損傷が確認されています。変圧器火災で実証された消火体制の不備、放射性物質の漏えい事故のほか、原子炉の“ブレーキ”にあたる制御棒が取り出せなくなるなど、原発中枢部の変形を示唆する安全上重大な事故も発生しました。

 柏崎刈羽原発の揺れを全国の原発にあてはめた場合に、浜岡原発を含む全原発で、想定した耐震設計値が小さすぎることがわかりました。

 中越沖地震は全国どこででも起こりうる規模の地震であり、原発の耐震設計を根本的に改める必要性を示しています。想定される東海地震の規模ははるかに巨大なものです。

 耐震性にとって、原発の老朽化も問題です。浜岡原発1、2号機は、それぞれ一九七六、七八年に運転を開始し、もともと三十年程度といわれていた原発の寿命にきています。老朽化原発では、中性子を浴び続けることによって材料が劣化し、配管の亀裂や減肉が発生し、耐震強度が低下します。老朽化した原発の耐震性を確かめた実証データはありません。

 国民を重大な危険にさらす恐れのある浜岡原発は運転を停止して、予想される東海地震に備えることが必要です。

スタートから間違い

 茂木清夫・東京大学名誉教授(前地震予知連絡会会長)の話 東海地震という、マグニチュード8級の巨大地震の震源の真上に原発をつくるということ自体、スタートのところから間違っていました。マグニチュード8はおろか、マグニチュード7の地震でも、確実に起こることがわかっているところに原発をつくるなど、世界中どこにもありません。

 東海地震が起こる可能性があることは一九六九年に私が初めて指摘しました。1、2号機はその直後に申請が出され、数カ月で許可が出ています。そんなことで十分地下の様子がわかるはずがありません。

 なぜ、こういう原発の立地によいとはとても思われず、地震予知のために法律までつくったところへ、急いで、しかも5号機まで次々とつくったのか。裁判では、そういう基本的な議論をすべきでした。今回の判決で、こうしてつくられた原発の運転が今後も続けられることは納得できません。

 原発は、チェルノブイリ原発事故の例にみられるように、それ自身の危険性を注意すべきものとされています。このようにただでさえ危険なものを、基盤が不安定で大地震が起こることがほぼ確実とされているところにつくることの是非を考えてほしいと思います。

 しかも、地震を含む破壊の問題はまだまだ不明な点が多く、断定的にその安全性をいえる状況にはありません。

疑問なんら解消せず

 原発問題住民運動静岡県連絡センター事務局の岡村哲志氏の話 不当判決で残念。判決が原子炉施設の設置、設計及び運転は各種審査基準に適合し、中電の想定以上の地震はないと言い切っていることも不当だが、私たち住民運動側が問題にしている国の基準の不十分さや想定される地震動での耐震安全性について十分にこたえていない。また、中越沖地震における世界初の原発震災発生をうけ「浜岡は大丈夫?」と不安を感じる県民の疑問をなんら解消するものではない。

事実に目ふさぐ判決

 原発問題住民運動全国連絡センターの伊東達也・筆頭代表委員の話 一九九五年の兵庫県南部地震以来、日本では、国や電力会社がおよそ現実的には考えられないといってきた想定地震の揺れを上回る地震が六回も発生しています。その六回目となった七月の新潟県中越沖地震では東京電力の柏崎刈羽原発が大きな被害を受け、7号機では原発の安全に直結する制御棒の異常が見つかるなどしています。

 老朽化も深刻です。東京電力の福島第一原発6号機では二〇〇〇年七月に発生した茨城県沖の地震で震度4相当の揺れだったにもかかわらず配管が破断する事故が起こっています。東京電力は、老朽化が原因だったと認めています。老朽化した原発では、地震によって重大な事故が起こりうることを示しており、判決が老朽化は耐震安全性に影響がないとしていることは到底受け入れられるものではありません。

 今回の判決は、地震列島の日本で現実に発生しているさまざまな問題を無視したもので、事実に目をふさぎ国と電力会社の言い分だけをうのみにした不当判決です。


判決骨子

 一、安全評価審査指針が定める評価方法に問題はない。

 一、浜岡原発の耐震安全性は確保されている。

 一、浜岡原発の地盤は堅固で、地震発生時に安全性に影響を及ぼす変化は考えられない。

 一、点検、検査で腐食によるひびの発生を捕捉できる体制が整っている。

 一、浜岡原発の運転で原告らの生命、身体が侵害される具体的危険はない。


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