2007年10月21日(日)「しんぶん赤旗」

仏独 共同歴史教科書シンポ 東京で開く

東アジアが学ぶべきは?


 フランスとドイツでは二〇〇六年から共同歴史教科書による授業が始まっています。そこに至るまでの独仏間の和解過程から東アジアは何を学べるか―をテーマに十九、二十の両日、東京都内でシンポジウムが開かれました。ドイツ文化センターなどが主催したもので、仏、独、日の歴史研究者が熱心に議論を交わしました。


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(写真)19日、東京都内で開かれた仏独共同教科書シンポ

 十九日はドイツのゲオルク・エッカート国際教科書研究所のジモーネ・レシッヒ氏が基調報告。歴史の共同研究には市民のイニシアチブとともに政治の力が必要だと強調しました。

教師の間で交流

 ▽何度も戦争をたたかってきた旧敵国同士の独仏が共同教科書をつくるまでの前史として、すでに第一次大戦後に独仏の歴史教師の間で交流があった。

 ▽第二次大戦後には学者や教師などの市民が積極的に動き、一九五一年にはすでに市民がイニシアチブをとって独仏共同教科書への勧告をまとめた。

 ▽一九六三年の独仏協力条約(エリゼ条約)を境に戦後政治での西独とフランスの協力の中で、歴史の共同研究はさらに促進された。

 ▽一方、独・ポーランド間の歴史共同研究は冷戦時代の政治体制の違いという厚い障壁に阻まれてきたものの、西独の緊張緩和政策により、七二年に共同研究の窓が開かれ、七六年には「歴史と地理の教科書に関する勧告」をまとめることに成功した。政治の力も必要だった。

高校生模擬国会

 基調報告後のパネル討論では次のような議論がかわされました。

 静岡県立大学・剣持久木氏=共同教科書づくりを呼びかけた独仏高校生による二〇〇三年の模擬国会の模様を紹介。「重要なのは模擬国会の呼びかけを当時のシラク仏大統領とシュレーダー独首相がただちに活用したことだ」と政治的イニシアチブの重要性を訴え。

 フランス国立科学センター研究員・ドゥフランス氏=独仏共同教科書は敵対する二国の「長い長い和解の道のりがあってこそできたものだ」と語り、とくに市民レベルでの交流・理解を強調。

 東京大学・川島真氏=日本と中国の共同歴史研究に携わる。日本と中・韓両国との関係と仏独関係の決定的な違いは「侵略をしたというだけでなく、植民地支配をしていたということだ」。そういった難しさの中でも、ともに歩み寄ろうとして(共同の)歴史認識の方向性が形成されつつあると発言。

 神戸大学・木村幹氏=日韓の歴史共同研究に参加。戦後二十年間もの間、日韓に国交がなく、その間にそれぞれの国の歴史観ができあがってしまったと指摘。そのうえで欧州側に「(教科書が)できた、よかったではなく、いかに苦労したかを語って教えてほしい」と要望。

“国史”から卒業

 欧州側からは、日本の質問にも答えて次のような発言がありました。

 独キール大学・コルネリーセン氏「独仏でうまくいったのは、それぞれの国の“国史”こそが大事だという時代を卒業したことだ」

 レシッヒ氏「教科書が民族主義をかりたてる道具であってはならない」(片岡正明 写真も)



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