2007年10月20日(土)「しんぶん赤旗」

公務員に労働協約締結権

60年ぶり前進へ一歩

基本権全面回復へ 官民の共同を


 政府の行政改革推進本部専門調査会(座長・佐々木毅学習院大学教授)が十九日、非現業公務員に労働協約締結権を付与することを明記した報告書をまとめました。争議権付与を見送るなど問題点を抱えていますが、戦後六十年にわたって労働運動全体の焦点となってきた労働基本権回復のたたかいで、大きな前進に転じる情勢を開く一歩となるものです。


 公務労働者だけでなく民間を含めた全労働者のたたかいや、公共サービスを守る国民的な運動にとっても大きな影響を与えるものです。

 日本国憲法は第二八条で団結、団体交渉、団体行動権の労働基本権をすべての労働者に保障しています。しかし、戦後の労働運動の高まりを恐れた占領軍の指示で一九四八年に公務員のスト権がはく奪されて以来、団結権や団体交渉権も厳しく制限されてきました。

 国際労働機関(ILO)の「結社の自由および団結権の保護」条約に反する日本政府の態度は、一九六五年にドライヤー調査団が報告をおこなうなど国際的にもたびたび問題になってきました。

 二〇〇〇年以降、公務員制度改革が再び焦点となり、ILOが三度目の労働基本権付与の勧告を行いましたが、日本政府は「労働基本権の制約は現状維持する」として背を向けてきました。

 全労連、連合はじめ日本の労働運動は、これにたいして全面回復をもとめるたたかいを広げてきました。政府みずから成績主義の導入や「官民交流」の拡大をすすめるもとで、これ以上、基本権をはく奪することができなくなったものです。

 しかし、労働協約締結権と一体不可分の関係にある争議権について両論併記にとどめたことは問題です。争議権が保障されてこそ、団体交渉権も有効に機能するものだからです。

 消防職員や監獄職員への団結権付与を見送ったことも、団結権は当然となっている国際的流れから見ても許されません。

 付与を明記した労働協約締結権についても、「改革に伴うコスト等に十分留意しつつ、慎重に決断する必要がある」としており、後退しかねない余地が残されています。

 結社の自由を侵害しかねない「少数組合の協約締結権の制限」に言及していることも見逃せません。

 国民や住民の安全・安心を脅かす公共サービスの切り捨ては、公務労働者の人員削減や労働条件改悪とセットになって強行されています。

 天下りはじめ政官業の癒着や腐敗も、上意下達の行政システムや特権的官僚制度のもとで起きている問題です。

 公務員に労働基本権を全面的に付与することは、公務員が「全体の奉仕者」の立場にたって、国民犠牲の公共サービス切り捨てや癒着・腐敗など行政のゆがみを現場からチェックし、ただしていく力となるものです。

 しかも、公務の職場では、公共サービス切り捨てと併せて一方的な賃下げや労働条件改悪、独立行政法人への「転籍」など雇用破壊が強行されています。民間であれば労働者の合意や労働組合との交渉が不可欠な労働条件の不利益変更も、問答無用で行われています。

 労働基本権回復は、こうした雇用破壊から公務員労働者の生活と権利を守るとともに、日本に雇用のルールを確立していく力になるものであり、すべての労働者の課題になっています。

 労働協約締結権の早期具体化とともに、両論併記となった課題でも前進を勝ち取るために、官民問わずすべての労働者が、公務員労働者の労働基本権の全面的回復めざす共同を広げることが求められています。(深山直人)


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