2007年10月6日(土)「しんぶん赤旗」

新テロ特措法

国会承認規定を削除

与党骨子案 派兵期限、2年に拡大


 自民党の大島理森国対委員長は、五日開かれた与野党国対委員長会談で、海上自衛隊のインド洋派兵を継続するための新テロ特措法案の骨子案を提示しました。会談には日本共産党から穀田恵二国対委員長が出席しました。

 穀田氏は「新法は憲法違反の戦争支援法であり、認められない」と主張しました。

 会談で大島氏は「新法骨子案を野党とも協議し、予算委員会での議論も踏まえながら、合意形成をはかる努力をしたい。その上で国会提出したい」と述べました。野党側は「新法骨子案の与党の説明はうけたまわった」「法案が提出されれば、国会の正規の場で堂々と議論したい」との態度をとりました。

 与党側が提示した新法案の名称は「新テロ対策特措法」(仮称)とし、法律の目的に「国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取組に積極的かつ主体的に寄与する」ことを挙げています。このなかで国連安保理決議一三六八と一七七六を盛り込むとしています。

 現在の自衛隊派兵の根拠法であるテロ特措法は、海自による給油・給水などのほか、「捜索救助活動」「被災民救助活動」も可能と規定していますが、新法案では「自衛隊による補給活動に限定する」としています。

 テロ特措法に規定されている派兵の国会承認規定も削除。一年後に活動内容を報告するだけになっています。

 また、テロ特措法と同じく時限立法とし、期限は二年間で、さらに「二年以内の期間を定めて延長することを妨げない」としています。

 テロ特措法は成立当初(二〇〇一年)、期限を二年間としていましたが、〇五年と〇六年の改定で一年間になりました。新法案は、期限をテロ特措法の二倍に拡大し、その後の延長まで視野に入れたものになっています。


解説

新テロ特措法骨子案

戦争支援の本質変わらず

 政府が五日の与野党国対委員長会談で野党側に提示した海上自衛隊のインド洋派兵を継続するための新テロ特措法骨子案は、活動を給油・給水に限定することを目玉の一つにしています。しかし、どんなに限定しても、憲法違反である米軍主導の「対テロ報復戦争」(米軍の作戦名は「不朽の自由作戦」)支援という本質は変わりません。

 政府・与党が、テロ特措法の「改正」ではなく新法案で派兵を継続しようとするのは、テロ特措法の期限である十一月一日を過ぎると、同法そのものが失効してしまい、その「改正」案の審議もできなくなるからです。

 新法骨子案は、その目的に「国際的なテロリズムの防止及び根絶」を挙げています。しかし、テロ特措法に基づき展開されてきた海自の給油活動とは、どういうものだったのか。

 日本共産党の志位和夫委員長が四日の衆院本会議で指摘したように、海自が給油した米海軍の強襲揚陸艦の艦載機=AV8Bハリアー垂直離着陸攻撃機が、アフガニスタン空爆を繰り返したことが明らかになっています。こうした米軍の作戦は、アフガニスタンの罪もない民間人を殺りくし、それへの報復の悪循環をつくりだしています。

 さらに「海自の油がイラク戦争に使われたことはない」という政府の説明も根底から揺らいでいます。政府は九月になって、イラク戦争直前の二〇〇三年二月に、海自が米補給艦を介して米空母キティホークに給油した量を、国会で説明していたものの四倍に訂正しました。キティホークが当時イラク作戦の任務を持っていたことから、海自による給油がイラク作戦支援にも使われてきた疑いが、いっそう強まっています。

 新法骨子案に盛り込まれている海自の活動は、「テロ根絶」どころか、テロの拡散を助ける軍事作戦への支援にほかなりません。

 しかも重大なのは、新法骨子案では派兵継続をゴリ押しするために、現行法にある派兵の国会承認規定まで削除するものになっていることです。

 狙いは、派兵に反対する野党が多数の参院で国会承認が否決され、派兵が継続できなくなることを回避することです。

 テロ特措法をはじめ、イラク特措法、周辺事態法、国連平和維持活動(PKO)法といった自衛隊の海外派兵法のいずれも、派兵にあたって、国会で承認を得る規定が盛り込まれています。

 かつて福田康夫官房長官(当時)も、海外で自衛隊が活動する場合について、「国会の承認をいただくことは必要なこと」(二〇〇三年十月七日の参院委)と答弁していました。それさえ削除するのは、政府が掲げてきた文民統制(シビリアンコントロール)も投げ捨てるものです。(田中一郎)


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