2007年10月4日(木)「しんぶん赤旗」

臨時保育士 99人笑顔

雇用継続勝ち取る

派遣への切り替えストップ

宮城・石巻市


 宮城県石巻市が市立保育所に勤める臨時・パートの保育士九十九人全員を十月からNPO法人に移籍させ、派遣労働に切り替えようとしていた問題で、市が計画を断念したことがわかりました。保育士たちが「これでは安心できる保育につながらない」と声をあげ、労働組合に加入してたたかい、直接雇用の継続を勝ち取りました。

 臨時・パートの保育士らは、時給八百五十円という生活保護基準ぎりぎりの低賃金など正規職員に比べて劣悪な労働条件におかれながら、担任を受け持つなど正規職員と同じ仕事をしています。

 市は七月、人件費削減と保育所の民間委託に向けた受け皿づくりを狙い、臨時・パート保育士を新たに設立したNPO法人に移籍させ、同法人に派遣を委託する形に切り替える提案をしました。

 しかしこれは、派遣労働を最長三年間までとする労働者派遣法の規定をくぐり抜けるために三年間の派遣のあと三カ月間、市の臨時・パート雇用とし、その後再び三年間再派遣するという違法・脱法派遣でした。市はこうした実態を隠し、これによって保育士らの「長期の雇用安定」をはかれるとの口実で、保育士全員の移籍同意書を取りつけました。

 保育士らの間では、「本当に子どもたちのためにいいことなのか」と心配する声が広がり、父母からも「先生たちはどうなるんでしょうか」と不安の声が上がりました。

 保育士らは、宮城自治体一般労働組合に相談し、組合に加入してたたかうことを決意。九月に市と団体交渉し、保育サービスを守るために直接雇用を継続するよう求めました。

 九月二十一日の交渉の席で組合が、市の提案は脱法行為ではないかと追及したのに対し、市はすでに八月に宮城労働局から脱法行為に当たると指摘されていたことを明らかにしました。保育士らからは「団交がなかったら隠し通すつもりだったんですか」「安定雇用はうそだったんですか」と怒りの声が噴出。地元紙も報道し、市の姑息(こそく)なやり方への批判が一気に広がりました。

 市議会では、以前から日本共産党の水沢ふじえ市議が「保育現場で大事な役割を果たしている臨時・パート保育士たちを不安定な身分に追いやるな」と追及。NPO法人への委託費を含む補正予算案が委員会で可決したあとも他会派の議員から「議会軽視だ」「説明不足で、拙速だ」と批判の声が上がりました。

 こうした中で、市は二十八日、派遣切り替えの提案を白紙撤回し、直接雇用の継続を表明。保育士らに保健福祉部長が謝罪し、臨時・パート保育士らの待遇改善を検討することを明らかにしました。土井喜美夫市長も二日の定例会見で陳謝しました。

 組合の一員として市と交渉してきた女性保育士は、「交渉して派遣化をやめさせることができてよかった。これからも市立保育所の一員として頑張ることができる」と話しています。



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