2007年9月27日(木)「しんぶん赤旗」
主張
疑惑大臣再任
これではとても信頼できない
福田康夫首相は新内閣の発足にあたる記者会見で、年金問題とともに「政治とカネ」が「国民の不信を買った大きな問題」と認め、「政治不信の解消に全力を傾ける」とのべました。
ところが福田内閣の組閣人事そのものが、この言明を裏切っています。疑惑が次々噴出した前安倍改造内閣の大臣たちを、ことごとく再任させたのです。これではこの内閣が「信頼」を回復することなど到底できません。
変わらぬ「腐敗不感症」
今回の組閣で閣僚交代は「小幅」という観測のなかでも、下馬評で「この二人だけは入れ替え」とみられていた人物がいます。若林正俊農水相、鴨下一郎環境相です。
官製談合の緑資源機構関連団体からの献金、農水省補助団体代表の政治団体代表兼任やパーティー券購入など「疑惑のデパート」の若林氏、行方不明の八百万円、空白領収書の提出とあまりにずさんな処理をしていた鴨下氏―二人の再任は、疑惑に甘い福田首相の姿勢を示す皮肉な「サプライズ」人事でした。
閣僚の疑惑にまみれて参院選に惨敗した安倍前首相は、入閣候補の身辺を洗う「身体検査」を入念に行ったというのに、遠藤武彦元農水相がすぐ辞任に追い込まれ、高村正彦防衛相(当時)、岸田文雄沖縄・北方担当相、上川陽子少子化担当相らが、収支報告書の「訂正」を乱発しました。安倍前首相は、悪質なら辞任、軽微なミスなら「訂正」でおかまいなしという不当な「二重基準」で、疑惑閣僚をかばいました。疑惑閣僚をそのまま再任・横滑りさせた福田首相は、前首相と同じく、閣僚の不正をかばい、見逃す姿勢を示したといわれても弁解の余地はありません。
さらに改造前の内閣から巨額事務所費疑惑が指摘され、「法にのっとり適正に処理した」という一点張りで大臣に居座り続けた伊吹文明前文科相は党ナンバー2の幹事長に登用、同じく甘利明経産相も再任というのですから開いた口がふさがりません。
福田首相は参院選で民意が明確になった政治資金の公開で、領収書の一円からの添付について「収支の一切について完全に説明できる仕組みを提案した」といいます。しかし、添付はしても領収書は非公開で、問題が指摘されたときには国会に新たに設ける第三者機関がチェックし、必要があれば公開するというだけです。国民が求める資金の透明化とは程遠いものです。
日本の国会には、「疑惑解明」の名を冠した機関がすでにあります。衆参両院に設けられた政治倫理審査会です。しかし、その実態は、国会の追及を逃れ、密室での議員の勝手な弁明で、疑惑に幕を引く道具立てにすぎません。
必要なのは、「政治とカネ」の問題をすべて国民の前にガラス張りにし、国民がその実態を批判・監視できる仕組みをつくることです。密室の新たな機関をつくるという福田首相の提案は、検討にも値しません。
「背水」の危機感なし
福田首相はまず国会で、「政治とカネ」の問題の解決にどう取り組むか、きちんとのべるべきです。まだ国会の追及の洗礼を受けていない安倍改造内閣以来の疑惑閣僚たちも、国会の場で、国民にたいする説明責任を果たさなければなりません。
「政治とカネ」で国民の信頼を失った自民・公明の政治は、国民との間で「背水」の位置まで追いつめられていることを自覚すべきです。危機の認識を欠いたままの新政権では長続きするはずがありません。