2007年9月26日(水)「しんぶん赤旗」

自公が連立政権合意


 自民党の福田康夫総裁と公明党の太田昭宏代表は二十五日、国会内で会談し、十五項目の合意書に署名して、連立政権の合意を確認しました。両党は、今後、政治資金に関して与党内で実務者協議を行います。また、高齢者医療の負担増と児童扶養手当の一部削減の凍結については、与党内にプロジェクトチームを発足させ、結論を出す予定です。

継承

「格差」と「派兵」路線

 今回の政権合意は、参院選で示された民意について「改革を急ぐ余り、そこから取り残された人たちや地域、弱者に対するセーフティネットが十分でなかったことを率直に反省し、負担増・格差の緩和など国民生活に重きを置いた方向の政策を断行する」などと述べ、“路線修正”をにおわせています。一定の手直しをせざる得ないこと自体は、国民の世論と運動に自公政権が追い込まれた結果です。

 しかし、政権合意は、その前提として「構造改革路線は確固として継続させなければならない」と宣言しています。「負担増・格差」を招いてきた「構造改革」を継続しておいて、どうして深刻化する貧困と格差を是正できるのか。合意には根本的な路線転換の姿勢は皆無です。

大企業を優遇

 明確なのは、大企業中心の「成長戦略」の継続を数値目標付きで掲げ、法人税減税などの口実とされてきた「国際競争力強化」についても、そのための「取り組みを強化する」などとしていることです。

 一方、格差問題では、地域間格差について「地方自治体間の財政力格差の是正」に対応するとしているものの、具体的な財源には言及なし。ニート、フリーターの常用雇用・正規雇用への転換促進策にふれてはいますが、肝心の労働法制の見直しはなく、実効性が問われます。

 また、外交・安全保障では「アジア重視」を打ち出したものの、「強固な日米同盟」を基軸にすえ、海上自衛隊によるインド洋での給油活動継続については「今国会において…可能とするための法整備を行う」とし、唯一具体的に目標を掲げています。

 結局、「民意」はこれからの検討項目程度にないがしろにされ、「構造改革」継続と「日米同盟」強化という基本路線が宣言されているのです。

先送り

社会保障負担増見直し

 社会保障分野では、高齢者の医療費負担増や母子家庭に対する児童扶養手当の一部削減について、負担増「凍結」などの部分的見直しを打ち出しました。障害者自立支援法も「抜本的な見直しを検討する」ことを盛り込みました。

 どの問題も、七月の参院選での国民の厳しい審判や反対世論の急速な広がりを受け、与党が「見直し」を言い出さざるを得ない状況に追い込まれたものです。日本共産党は参院選で、改悪の全面見直しや削減の中止を公約していました。

 しかし、高齢者医療費負担増などは制度自体の抜本的見直しに踏み込んだものではなく、部分的な「凍結」を打ち出しただけです。それでさえ、自民党内から財源を理由に難色を示す声が出され、「早急に結論を得て措置する」との表現にとどまっています。

扶養家族のみ

 高齢者医療をめぐって盛り込まれたのは、来年四月に実施が予定されている七十―七十四歳の窓口負担の二割への引き上げ(現行は一割)の凍結です。また、七十五歳以上を対象にした後期高齢者医療制度では、現在扶養家族になっている約二百万人についてのみ保険料徴収を凍結することを打ち出しました。

 これに必要な国の財源は、七十―七十四歳の二割負担引き上げが年間約五百億円、七十五歳以上の扶養家族の保険料負担が約四百億円で、合わせて九百億円程度(厚労省の試算)。政治の姿勢を国民の暮らし重視に変えれば、実現は可能です。

 「先の参議院選挙で示された民意を真摯(しんし)に受けとめ」るというならば、国民の不安の声にこたえて、後期高齢者医療制度をはじめ社会保障制度改悪の全面見直しこそが求められています。

 年金では、「社会保険庁の日本年金機構への円滑な移行に万全を期す」として、社会保険庁を解体して国の責任を放棄する方針の継続を表明しました。

図

後ろ向き

領収書の一般公開

 「まず『政治とカネ』の透明化を進め、政治に対する国民の信頼を取り戻さなければならない」

 政権合意は、福田内閣の政権運営の前提として「政治とカネ」の問題をあげました。安倍前政権で相次いだ閣僚らのでたらめな事務所費・光熱水費計上疑惑は、政権存立を脅かす問題に発展しているからです。

 「国民の信頼を取り戻」すという以上、これまで明るみに出た架空の事務所費計上や補助金の不正受給問題などを徹底して調査し、国民に説明すべきです。ところが、政権合意には、この立場がまったくありません。

 具体策として示したのが、政治資金収支報告書の経常経費と政治活動費の一円以上のすべての支出に領収書添付を義務付けるための、政治資金規正法の再改定です。これ自体は、政治資金の透明化をはかるうえで当然のこと。自民党自身、参院選惨敗を受け「すべての政治団体に一円以上の領収書公開を求めるのが民意の大勢だ」(中川秀直元幹事長)と認めており、遅きに失した判断です。

あいまい合意

 しかし政権合意は、領収書の一般公開には後ろ向きで、「公開のあり方については、独立した第三者機関の設置など…政党間において協議し、今国会で成案を得ることを目指す」とあいまいです。現行制度でも五万円以上の領収書は三年間の保存義務がありますが、疑惑を指摘された政治家はあれこれ理由をつけて説明責任を果たさずにきました。公開されなければ、いまと実態はほとんど変わりません。

 「政治活動の自由がある。すべてを公開することが妥当か疑問」(福田首相)という立場に固執する限り、国民の審判にはこたえられないでしょう。


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