2007年9月25日(火)「しんぶん赤旗」

自民新総裁 海外メディアの反応

選出過程に問題 報道姿勢を批判


●米国

 【ワシントン=山崎伸治】福田康夫元官房長官が自民党の新総裁に選出されたことについて、米主要紙は安倍晋三首相との路線の「違い」を指摘する一方で、選出過程の問題を指摘しています。

 ロサンゼルス・タイムズ紙(二十三日付電子版)は福田氏の外交政策について、「少なくとも、退任する安倍首相が押し進めた野心的で国家主義的な政治から変化するものと歓迎されている」と分析。「ことに福田氏に期待されているのは、安倍氏の北朝鮮対応の特徴となっていた激しい物言いを弱めることだ」と論じています。

 ニューヨーク・タイムズ紙(同日付電子版)は福田氏を選出した過程について、「党の実力者がすでに一週間前、東京の高級料理屋や携帯電話で一日半にわたる激しい交渉を行い、福田氏を選んでいた」と指摘。「密室政治の時代に戻った」と報じました。

 クリスチャン・サイエンス・モニター紙(二十四日付電子版)は自民党総裁選を報じた日本のメディアの姿勢を批判。カリフォルニア大学サンディエゴ校のイリス・クラウス教授の次のコメントを紹介しています。

「自民党は明らかに安倍首相から関心をそらし、メディアに福田氏と麻生氏の全国遊説ばかり報道させて、安倍氏の失敗を忘れさせようとした。少なくともある程度は成功したと思う。メディアの報道がそれを容認したからだ」

 ワシントン・ポスト紙(二十三日付電子版)は福田氏と安倍晋三首相、麻生太郎外相ら「日本で首相を志す者は、ほとんど親せきに元首相がいる」と指摘。「名門の出であることは、自民党の最高位に上り詰めるのを容易にするようだが、福田氏が日本の深刻な経済課題や人口問題を解決するには役立ちそうにない」と評しています。

中韓との関係改善など注視

●アジア各国

 アジア各国の新聞社説は、福田氏が自民党内の「右翼勢力」の支持も得て新総裁に選出された点に着目し、次期政権下での中国や韓国などとの関係改善や米国の「対テロ戦争」支援継続がどうなるかを注視しています。

 シンガポール紙・聨合早報二十四日付社説は、「日本の指導者は当面の国際情勢に対応しなければならないが、一方で自民党内の右翼保守勢力の支持を得なければならない。しかも、後者の方がますます重要になっており、そうしなければ自民党の総裁には当選できない」とのべています。

 こうした厳しい見方を示したうえで同社説は、次期政権が中国や韓国との「関係修復の道」を進展させたり、「日本とアジア諸国との距離」を縮められるかどうかを慎重に見守る姿勢を表明しています。

 香港・星島日報二十四日付社説は、参議院で野党が過半数を占めているなかで福田氏が主張する米国主導の「反テロ軍事行動」への後方支援の継続が可能かどうか、次期政権は「重大な試練に直面する」と指摘。一方で、「自民党内では、右翼勢力が教科書問題などで騒ぎを引き起こす」可能性もあり、福田氏にとって「日中関係の安定化」も容易ではなさそうだとしています。

自民主流派の権益を堅持

●中国

 【北京=山田俊英】二十四日付の中国メディアは、自民党総裁に当選した福田康夫氏について、首相在任中は靖国神社に参拝しないとしていることなどを紹介しました。同時に新総裁が直面する困難さを指摘しました。

 新華社通信は「福田氏は与党の難局を打破できるのか」と題する論評を配信し、「自民党が国民の信頼を回復できず、再び問題が起きれば致命的打撃となり、政権を引き渡さざるを得なくなる可能性がある」と指摘しました。

 環球時報は、福田氏は「政策やその運用において、官僚体制と自民党主流派の権益を堅持する人だ」との専門家の見方を伝えました。

自民党政治の継続性を指摘

●英国

 【ロンドン=岡崎衆史】自民党新総裁に選出された福田康夫元官房長官の外交政策について、英BBC放送(電子版)は二十三日、福田氏は対中国、北朝鮮で融和方針を追求しようとしている一方、「日米関係が外交政策の『要』であり続けると述べてきた」と紹介しました。また「アフガニスタン戦争への兵たん支援について、国内で反対論が増えているにもかかわらず続行を目指している」と述べるなど、これまでの自民党政治の継続性を指摘しました。


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