2007年9月23日(日)「しんぶん赤旗」
主張
「構造改革」
自民党の深刻なゆきづまり
自民党総裁選の二人の候補者が、そろって小泉・安倍「構造改革」の続行を表明しています。
福田康夫元官房長官は「小泉改革は大きな成果をあげた。改革を実行する上で生じている問題には丁寧に対応していくが、方向性は変わらない」とのべています。
麻生太郎幹事長は「光が強ければ影も強くなる」、影の部分には対応が必要だと語っています。
安倍晋三首相も辞任表明直前の所信表明で「改革を進める一方、改革の影の部分にきちんと光を当てる」と演説しました。二人の候補に安倍路線を変える姿勢はありません。
貧困と格差の大もと
参院選での与党の歴史的大敗の根本には自公政治の基本路線の破たんがあります。くらしと経済の問題では、弱肉強食の「構造改革」による庶民の痛みを理解できない政権が、住民税大増税に続いて消費税増税の追い打ちをかけようとしたことに国民の深い怒りが噴出しました。
「構造改革」は輝く光であり、「痛み」は光が当たることで生じる影にすぎないという議論は、「構造改革」に固執する詭弁(きべん)です。
福田元官房長官は「若い人に希望を、お年寄りに安心を」と言い、麻生幹事長は中小零細企業、高齢者、要介護者、地方に表れた「ひずみ」に対応すると言っています。
しかし、「ネットカフェ難民」が若者の間で広がり、「介護難民」「医療難民」を急増させ、とりわけ高齢者を標的に庶民の負担を大幅に増やしたのは「構造改革」そのものです。中小企業や農業、地域経済を衰退させたのは、経済規制を撤廃して市場に任せればすべてうまくいくという市場原理主義にほかなりません。
毎日働いてもアパートさえ借りられず、終夜営業の店で寝泊まりせざるを得ない人が増えているのは、大企業のコスト削減のために派遣労働の自由化など雇用規制を緩和し、生活保護基準を下回るような低賃金労働を広げてきたからです。
自公連立政権の八年間は毎年のように庶民増税が繰り返され、その総額は五・四兆円に上ります。他方で大企業・大資産家には毎年のように減税し、四・三兆円にも積み上がっています。庶民増税の八割が大企業・大資産家に回った計算です。
小泉・安倍「構造改革」は、庶民から吸い上げて大企業・大資産家にばらまく、所得再分配の逆流をごまかす看板でしかありません。
「構造改革」は庶民から光を奪って大企業・大資産家を照らしました。「貧困と格差」が大きな社会問題として深刻化したのは、こんな「改革」の必然的な帰結です。
小泉「改革」を始めた当時、小泉純一郎首相は国民に「今の痛みに耐えて明日を良くしよう」と呼びかけました。これこそ「構造改革」の最大の虚構です。
大企業中心を変えて
福田元官房長官は総裁選公約で、高齢者の医療負担増と障害者自立支援法の二つの見直しを掲げました。
国民の切実な要求に応えるのは当然です。しかし、「改革推進」を強硬に迫る財界さえ、福田氏らの政策には「改革の負の部分」への是正策が「見えてこない」(経済同友会)と注文を付けるほど、部分的な「手直し」しか打ち出せないでいます。
国民に「ノー」を突きつけられ、破たんがはっきりした「構造改革」にしがみつかざるを得ないというのは、自民党政治の衰退とゆきづまりの深さを示しています。大企業中心の自民党の経済政策を、生活中心に根本から転換する必要があります。