2007年9月17日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress

バイトも社員も働き方異常

人ごとじゃない

過労死青年の母の叫び 大学生の心に響いた


 過労死で息子を失った母親の訴えを大学の講義で聞いた学生が「この事件のようなことが、私のアルバイトでまさに起きています」と、感想文につづりました。若者が死ぬまで働かされる異常な日本の職場を大学生はどう感じたか――。矢野昌弘


 埼玉県吉川市の矢田部暁則さんがくも膜下出血で27歳の若さで亡くなったのは2000年9月8日早朝のこと。レンタルビデオ店のクオークで正社員として働いた1年8カ月間の疲労が命を奪いました。疲労困憊(こんぱい)の末、退職して6カ月ほど後のことでした。この時、暁則さんは体調が回復しないまま別の会社で働いていました。

 暁則さんの労働時間はいつも10時間以上で、残業が100時間を超える月もありました。午前2時すぎまでの深夜労働で、出勤時間が猫の目のように変わり深夜3時に帰宅して午前9時には出勤する勤務もありました。

 休みの日も前日の勤務が終わるのは、当日の午前2時というありさま。店長代理として、お客とのトラブル対応や営業成績に追い立てられるストレスも重なりました。休みの日も突然呼び出され、在職中は代休や有給休暇を1日も取ることができませんでした。

 母親の和子さん(67)が元気な暁則さんを見たのは亡くなる前夜、部屋にカルピスを持っていったのが最後でした。和子さんは翌朝、呼び起こしに行った部屋で冷たくなった暁則さんを発見しました。

 現在、両親はクオークでの過酷な勤務で蓄積した疲労が発症につながったとして同社に損害賠償を求める裁判を起こすとともに労災の認定を求めています。

矢田部和子さん語る

 暁則が亡くなってから8回目の命日が過ぎました。息子はクオークで働いた1年8カ月間、服を1着も買うことなく、写真の1枚も撮ることはありませんでした。

 前に勤めていた会社では同僚と、海外旅行や飲み会に行き、職場対抗の運動会にも参加していた暁則。クオークに就職してからは、友人から連絡が来ても「とりつがないでくれ」というようになって、昼夜逆転の仕事と過労が彼から若者らしい生活を奪いました。仕事中は心休まる時間がなく、自宅から電気ポットを持っていって手待ち時間にカップラーメンをすするような食生活でした。

 暁則にクオークを辞めるよう説得したことがありました。その時、暁則は「自分が辞めると、もうひとりの正社員のことが心配」と言って辞めようとしなかったんです。私たちが署名をお願いすると「自己責任」をいう人がいますが、社員の安全や健康、労働時間に責任を負うのは会社です。長時間労働で残業代未払いが横行し、労働基準法違反が当たり前の日本の企業が異常です。

 自分の子どもが働くことで命や健康を奪われ、生きる意欲を閉ざされる社会を許せますか。若いみなさんが、これからの生き方、働き方の参考にしてもらえれば息子の死もこうした形で生かされたのかなと思います。直接、みなさんにお話ししてみたいです。


10時間労働は「ベリーショート」? 学生の感想から  

 「私のアルバイト先にもYさん(暁則さんのこと)のように働いている社員の方がいます」

 「人ごとのように感じなかった。私もコンビニで22時〜6時までの深夜を、前にやっていたが、次の日の1日は永遠と寝ていたいと思うのが常だった」

 「私もレンタルビデオ店でアルバイトをしています。本当にトラブルが多い職業」

 「(アルバイト先で)10時間で帰れる日のことを『ベリーショート』と言っています。基本の8時間を超えているのに短いと呼ぶなんておかしな話」

 「いろいろなアルバイトを経験してきましたがアルバイトなどを一番に思っている所は一つもありませんでした。このような日本の労働体制が続いてしまったら、アルバイト、社員の人々はみんな死んでしまう」

人間らしく働くルールを

日本共産党が提案

 日本共産党は3月、「いまこそ人間らしく働けるルールを」を発表し、残業時間の上限を法定化することやEUのように午前0時まで働いたら翌日の出勤は11時以降にするとした最低11時間連続の休息時間の確保を提案しています。


東京経済大学講師 矢木 毅さん

高学費で学生もバイト漬け

 東京経済大学講師の矢木毅さん(68)は、矢田部和子さんらの裁判を支援するひとり。矢木さんは6月下旬、「青年論」の講義で和子さんの意見陳述書を読みました。その一節――。

 「27歳という人生でもっとも健康と気力の充実した時期に、店の営業効率、会社の収益以外は何も考えない、企業はそれだけのためにあるのだ、という会社の考え方のなかで、全てを奪われた」

 この母親の訴えについて、矢木さんは学生に感想を求めました。62人が感想を寄せ、うち24人が自身の経験を書いていました。(別項)

 矢木さんはいいます。

 「感想はどれも気持ちのこもったものでした。学生自身が深夜の過酷なアルバイト経験を多く書いていて、アルバイトぬきに大学に通うことができない、日本の高学費の実態も見えてくるようです。必死で働く人が報われていない社会への疑問や、死に追いやられるような働き方の社会はいやだという学生の気持ちが伝わってきました。お母さんの訴えは重い問いかけになりました」


お悩みHunter

バレンタインチョコ渡したけど反応なく

  数年間ずっとあこがれている人がいます。今年のバレンタインにもチョコを渡しましたが、本気にされていないのか、それから会っても反応がありません。口ではっきりと直接伝えたほうがいいのでしょうか。それとも、もう望みがないのでしょうか…。(27歳、女性)

自分できちんと伝えよう

  バレンタインは渡すほうも受け取るほうも心を惑わす記念日ですね。ストレートに「愛の告白」のときもあれば「日ごろの感謝の気持ち」のときもあるわけです。どちらにしても相手との距離が縮まるきっかけにはなっていると思います。

 お互いに意識し合っているもの同士なら、とくに何も言わなくても、これをきっかけにトントン拍子にうまくいくこともあるかもしれません。

 でも本当に伝えたいことは、はっきりと自分の口で言わないと相手には伝わらないと思います。相手も憶測でしか判断できないため、どう返していいのかわからないのではないでしょうか。

 恋愛に発展するためには、相手に自分を意識してもらう、知ってもらうことがはじめの一歩だと思います。

 チョコを渡したのですからあなたのことは無関心ということはないと思います。あきらめることはないです。思い切って自分のお気に入りのカフェにでも誘ってみたらどうですか。もっとお互いのことを知って打ち解けてきたらきっとうまくいきますよ。

 もしフラれることがあってもあまり自分を責めないでください。フラれると自分の何が悪かったんだろうと考え込んでしまいますが、たんに縁がなかっただけかもしれません。

 あなたの思いが相手に届くことを願っています。


第41代日本ウエルター級チャンピオン 小林 秀一さん

 東京工業大学卒。家業の豆腐屋を継ぎながらボクシングでプロデビュー。99年新人王。03年第41代日本ウエルター級チャンピオン。


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