2007年9月17日(月)「しんぶん赤旗」

総裁選街頭演説に聴衆

“国民はカヤの外”


 安倍晋三首相(自民党総裁)の突然の辞任表明で始まった後継選びの党総裁選。立候補した福田康夫元官房長官と麻生太郎幹事長は十六日、そろって東京・渋谷ハチ公前で街頭演説に立って売り込みましたが、聴衆は――。

 「安倍さんの政権の投げ出しには、びっくりしちゃいましたよ。あそこまで無責任な辞め方できる人がいるんだって」と早くもあきれ顔で語った男性(64)は、雪崩をうつように自民党の各派閥が福田氏支持になったことに「昔のような派閥の力関係で、首相決めるような自民党の体質が復活している」。

 福田、麻生両氏は参院選で手痛い審判を受けた弱肉強食の「構造改革」路線を推進すると明言しました。男性は「福田さんにしても、麻生さんにしても言っていることが同じでしょ。政策論争なしに、勝ち馬に乗るような流れで、総裁選やっている自民党が問題」と指摘しました。

 動員された自民党員の女性(77)も「派閥の力で引っ張られている感じ。日本をしょってたつ総裁を選ぶのにこれでいいのかな」と納得できない党内の空気を語ります。

 総裁選のお祭り騒ぎに疑問の声も。三十二歳の男性は「自民党の中では騒いでいるけど、僕らはカヤの外。演説聞いても、総裁選に投票できるわけでもないし。結局、国会議員と一部の自民党員のなかで、談合みたくして決まるんじゃないですか」といいます。

 同日、NHKで中継された総裁選の立会演説会をみて参加した東京・武蔵野市の男性は首をかしげました。

 「この間、大臣が決まったばかりなのに、また決め直さなければいけないんですか。何やっているんだろうねえ。国民のことをまったく考えていないというか、政治空白ばかりつくって、総裁選って一体何なんですか」

庶民とズレ/早く総選挙を

総裁選 聴衆の声

 街頭演説会は、主催者発表で一万三千人。宣伝カーから自民党総裁候補の福田康夫元官房長官と麻生太郎幹事長は「若い人が希望を持ち、お年寄りが安心できるような国、社会をつくっていきたい」(福田氏)、「小さくても強い政府、小さくても温かい政治でなければならない」(麻生氏)などと聴衆に訴えました。

 しかし、宣伝カー上の“熱狂”は届いていません。神奈川県からきた会社員の男性(56)は「自民党総裁選なんだから別に街頭でやらなくてもいい気がする。自民党総裁だから総理大臣になる、というのはおかしい。本来なら別の話だ」と疑問視。

 「実物をみたかったから来ただけなんです」というのは東京都中央区の日本橋から訪れた男性(39)。麻生氏が呼びかけたインターネットをみて来たといいます。「話がわかりやすいのは麻生さん。でもチャンスは次かな」と笑い、携帯電話で写真を撮りながら「僕の世代は、自分の問題として政治をとらえてない人が多いし、政治に何を期待するかっていわれてもね」。

 買い物途中に、夫と聞いていた女性(36)は「政治家には、がんばってもらいたい」といいつつ、こう総裁選をみました。

 「あまりに庶民の感覚とずれてるんじゃないですか。一番気になるのは、格差が広がっていること。私もアルバイトやっていて、下(貧困層)がどんどん下に落ちていくって感覚は、よく分かる。でも、政治家は、みんな大金持ちの子どもで、そんな国民の気持ちわかってないのかも」

 福田、麻生両氏は同日のテレビ番組でインド洋での海上自衛隊の派兵継続は国民の反対世論があっても続けるべきだとの姿勢をあらわにしました。

 友人と待ち合わせついでに演説を聞いたという男性(22)は小泉政権からのアメリカべったりぶりに頭にきていました。「イラクへの自衛隊の派遣も、テロ特措法でもアメリカいいなりぶりが際立ってますよね。新総裁になったからって自民党が変わるとは思えない。どちらにしても早く解散・総選挙をしてほしいですね」

派兵継続と増税言明 両氏

 自民党総裁選に立候補している福田康夫元官房長官と麻生太郎幹事長は十六日、テレビ番組や街頭演説で政権運営への考えを語りました。この中で両氏は、インド洋への海上自衛隊派兵を継続するためのテロ特措法の延長問題について「世論が反対でもやらなければならない」(麻生氏)、「(世論より)国益だ」(福田氏)と述べ、派兵継続反対の声を押し切っても延長のための法案を成立させる考えを示しました。

 民放番組で福田氏は、「いろんな国が(海自から)燃料の補給を受けている。その活動が止まったら相当な国際批判を受ける」と強調。延長の法案が参院で否決された場合の衆院での再議決について「それは最後の最後の最後(の手段)だ」と否定しませんでした。麻生氏も「(世論が反対でも)そういう覚悟を総理・総裁になるものは腹の中におさめておかないといけない」と述べました。

 また、消費税問題で福田氏は「いずれ(税率引き上げを)お願いする時代がくる」と発言。麻生氏は福祉目的税化した上での引き上げに「年金財源だけに限れば1%、約二兆五千億円だ。とりあえずそれだけなら分かりやすい」と消費税増税の姿勢をみせました。


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