2007年9月15日(土)「しんぶん赤旗」

イラク米軍

増派分のみ削減

大統領 駐留継続を強調


 【ワシントン=山崎伸治】ブッシュ米大統領は十三日夜、イラク情勢について全米に向けてテレビ演説し、イラク駐留米軍は「任務成功に応じて帰還する」として、来年七月までに現在の十六万八千人から増派前の十三万人規模に戻すことを表明し、実質の削減はないまま占領を継続することを明らかにしました。


 直前のCNNテレビの世論調査でも「増派は成功している」と答えた人が四割にとどまるなど、イラク政策への国民の不信が募る中での演説。しかし先のペトレアス・イラク駐留軍司令官、クロッカー駐イラク大使の議会証言で強調された通りの「成功」を繰り返し、米軍の削減数もそこで示されたものと変わらないなど、新味に欠ける中身となりました。

 ブッシュ氏は一月以来の「増派」について、国際テロ組織アルカイダの拠点だったアンバル州が変化したことをあげて「成功」だと強調。「米軍部隊が減っても治安の回復を維持できるところまで達した」として、一部兵力の削減の方針を打ち出しました。

 そして米軍の任務も「作戦の指導から、イラク軍との提携に、最終的には彼らの監視に移る」と指摘。「米軍は対テロ作戦やイラク軍の訓練・装備提供・支援などますます限定された任務に集中する」との見通しを示しました。

 さらに「自由なイラクを確立することは、米国の安全保障に不可欠だ」とし、「永続的なイラクへの安全保障上の関与」を強調。「米国の政治・経済・治安での関与が私の大統領任期を超えて必要だ」として、自分の任期(二〇〇九年一月)以降も占領が継続することを示唆しました。


解説

撤退求める世界への挑戦

 ブッシュ米大統領は今回、米軍の一部撤退に初めて言及しましたが、これは一月に米国民世論を無視して強行された増派以前の十三万人規模に兵力を戻すものにすぎず、「現状維持」でしかありません。

 イラク国民は最新の調査でも八割の人が米軍など外国軍の駐留に反対しています(米ABC、英BBC、NHK合同調査)。ブッシュ大統領の駐留継続表明はイラク、米両国の国民をはじめ米軍のイラク撤退を求める世界の世論に挑戦するものです。

 ブッシュ政権は、ペトレアス司令官らによる連日の議会証言で、増派作戦の「成果」を強調してきましたが、増派作戦のそもそもの目的である、治安の回復、イラク国内の「政治的和解」は未達成のまま。ブッシュ氏が治安状況の改善の実例としてあげたイラク西部アンバル州でも大統領演説当日の十三日、協力していた部族指導者が暗殺されました。

 米ABC、英BBC、NHKの合同調査では、イラク国民の72%が増派作戦で「治安が悪化」と回答しています。

 演説でブッシュ大統領は、「自由イラクの成功は、米国内の安全に決定的に重大な意味を持つ」と述べ、テロとのたたかいと結びつけて占領継続に固執しています。一方、十一日に上院軍事委員会で証言したペトレアス司令官は、「イラクでの作戦が米国を安全にしているのか」とウォーナー議員(共和)に追及され、「実のところ分からない」と答えています。イラク戦争の矛盾がいっそう鮮明になっています。

 十日現在の米軍兵士の死者は、三千七百七十六人に上ります。撤退を求める米国世論を無視した増派作戦発表(一月十日)後、七百七十三人の米兵が戦死した計算です。イラク国民の被害はさらに甚大で、毎月千人近い犠牲者を出し続けています。

 イラク戦争に関するブッシュ大統領の米国内の支持率は33%(十―十二日調査)。民主党が多数を占める議会への支持率も26%という異様な低さです。開戦から四年半、戦争の行き詰まりとともに、米国民の政治不満がますます強まっています。(ワシントン=鎌塚由美)


民主、対抗演説で批判

 【ワシントン=山崎伸治】十三日夜のブッシュ米大統領のテレビ演説に対抗して、直後に民主党もテレビ演説を行い、ジャック・リード上院議員が「戦争を成功裏に終わらせる計画も、それを継続する説得力ある理由付けも大統領には示せなかった」と批判しました。

 同議員は「イラクに永続的な平和をもたらす唯一の方法は、イラクの指導者が長年の紛争を交渉で解決することだ」と指摘。「しかし増派して九カ月たつが、大統領自身の助言者も、イラク指導者にはそれができていないし、できそうにないと言っている」と非難しました。

 「責任をもって速やかにイラクから米軍部隊を撤退させる」ことを始めるべきであり、「終わりのない、際限のないイラク派兵は選択肢ではない」と述べました。

 ただ具体的な兵力削減数や時期については明言しませんでした。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp