2007年9月11日(火)「しんぶん赤旗」

第五回中央委員会総会

志位委員長の幹部会報告


 日本共産党は八、九の両日、党本部で第五回中央委員会総会を開きました。志位和夫委員長がおこなった幹部会報告、結語は次の通りです。


 みなさんおはようございます。CS通信をごらんの全国のみなさん、おはようございます。私は、幹部会を代表して第五回中央委員会総会への報告をおこないます。

一、参議院選挙の結果と教訓について

 報告の第一の主題は、参議院選挙の結果と教訓についてであります。

参議院選挙の結果について

 まず、参議院選挙の結果についてのべます。

日本共産党の結果、比例代表での440万票の意義について

写真

(写真)幹部会報告をする志位和夫委員長=8日、党本部

 参議院選挙で日本共産党は、比例代表選挙で五議席獲得、二〇〇五年総選挙比の130%、六百五十万票以上を目標に奮闘しました。選挙区選挙では、現職の東京での議席確保とともに、三年前の参院選で議席を失った選挙区での議席奪還をめざしてたたかいました。

 選挙の結果は、比例代表での獲得議席は三議席、選挙区では議席を失い、改選五議席から三議席に後退しました。力およばず、目標が達成できず、議席を後退させたことは残念であります。わが党に暮らしと平和の切実な思いを託して投票してくださった国民のみなさんに、党中央を代表しておわびするとともに、つぎの機会での前進の決意を申し上げるものです。

 同時に、比例代表で、前回、前々回の参議院選挙の到達点を基本的に維持する四百四十万票(得票率7・5%)を獲得したことは、貴重であります。

 五月に開催した第四回中央委員会総会では、参議院選挙にのぞむ構えとして、「前進の条件」とともに、「二大政党づくり」という最大の「反共シフト」の「厳しさ」を直視してたたかいぬくことを強調しました。選挙戦の様相は、自公政権にたいする国民の空前の怒りが野党第一党の民主党への投票に集中するという流れと、いよいよ激しさをました「二大政党づくり」のキャンペーンが相乗的に作用して、わが党の前進をはばむ厳しい条件をつくりだすものとなりました。

 そのもとで日本共産党が四百四十万票を獲得した意義は大きなものがあります。ご支持いただいた有権者のみなさん、大奮闘された支持者、後援会員、党員のみなさんに、心からの感謝の気持ちをのべたいと思います。

選挙結果の全体を大局的、歴史的につかもう

 選挙結果をみるさい、わが党の進退だけでなく、その結果の全体を大局的、歴史的にとらえることが重要であります。

 私たちは、このことを、開票の翌日に出した「常任幹部会の声明」と、八月九日に開催した党創立八十五周年記念講演会での二つの「記念講演」のなかで強調しましたが、その中心点を確認しておきたいと思います。

 第一に、今回の選挙でもっとも重要なことは、自民・公明による古い政治の枠組みをつづけていては、日本の前途はないとの国民の判断がくだったことにあります。自公政治の歴史的大敗は、閣僚のスキャンダルなど個々の問題だけでなく、その“基本路線”――貧困と格差を広げた弱肉強食の「構造改革」路線、「戦後レジームからの脱却」を掲げた憲法改悪の押し付けに「ノー」の審判がくだったところに、特別に重要な意義があります。自公政権の大敗は、それ自体としては、前向きの歓迎すべき変化であります。

 第二に、自公政治「ノー」の審判は明瞭(めいりょう)となりましたが、それに代わる新しい政治はなにか、という問題について、国民の選択が明らかになったわけではありません。民主党は、「反自公」を前面に掲げ、批判票の受け皿となりましたが、自公政治に対する路線的な対抗軸は示せませんでした。今回の結果が、民主党の政治路線が支持された結果ではないことは、マスメディアも、また民主党自身も認めていることであります。

 第三に、これは、国民が、自公政治に代わる新しい政治の中身を探求する新しい時代、新しい政治のプロセスがはじまったということであり、国会論戦でも、国政選挙でも、国民の声にこたえる新しい政治とは何かという問題が、いよいよその比重を高めていくことになります。この政治プロセスの行方がどうなるかは、今後の奮闘にかかっていますが、大局的には国民の認識と日本共産党の立場――綱領の立場が接近してくる必然性があります。政治的激動の時期において、日本共産党がはたすべき役割は、いよいよ大きなものがあります。

 「常幹声明」と「記念講演」でのこれらの提起には、積極的反響がよせられました。選挙結果を、大局的、歴史的につかみ、ただちに国民のなかに打ってでる活動を強めながら、つぎの国政選挙で前進に転ずるために選挙戦の総括と教訓を掘り下げる――こうした実践的な姿勢が大切であります。そのためにも、この五中総の提起とあわせて、ひきつづき「記念講演」を読み、討論することを訴えるものです。

選挙戦の総括と教訓(その1)――政治論戦について

 そのうえで選挙戦の総括と教訓について報告します。

 選挙後、全国の都道府県委員長、地区委員長、比例代表と選挙区の候補者のみなさんから、選挙戦をたたかった感想をよせていただきました。それ以外に、党本部に、電話、メール、ファクスなどの形でたくさんの意見がよせられました。それらの全体もふまえ、政治論戦がどうだったのか、選挙活動全体がどうだったのかの二つの点から、総括と教訓の中心点についてのべます。

自公政治を追い詰め、選挙後の情勢に生きた力を発揮

 まず政治論戦がどうだったのかという問題であります。

 わが党の論戦は、自公政治を追い詰めるうえで、全体として論戦をリードし、重要な役割をはたしました。とくに、貧困・格差問題と憲法改定問題を「選挙戦の二つの焦点」にすえ、安倍・自公政治の“基本路線”そのものを正面から追及したことは、まさにこの“基本路線”にたいして国民が「ノー」の審判をくだすうえで、大きな貢献となりました。

 消費税増税問題を熱い争点におしあげた論戦は、「庶民に増税、大企業に減税」という「逆立ち」税制をただすという確固とした政策的立脚点をもつ、日本共産党ならではの論戦でした。「戦後レジームからの脱却」「美しい国」なる旗印の正体を、ずばり「戦前・戦中の軍国主義体制への逆行」と告発した論戦も、侵略戦争に命がけで反対してたたかった歴史をもつ日本共産党の真価を発揮したものでありました。

 わが党の論戦は、選挙後の情勢を動かすうえでも、生きた力を発揮しています。たとえば、それは、政府・財界がこの秋にも具体化を進めようとしていた消費税増税計画に、打撃をあたえています。増税派の巻き返しが始まっていることはいささかも軽視できませんが、増税計画をシナリオ通りに進めることが困難となっていることは間違いありません。

 さらに、「戦後レジームからの脱却」「美しい国」を旗印に憲法改悪をめざす「靖国」派の反動的野望にも、深刻な打撃をあたえました。それは、八月十五日の終戦記念日に靖国神社を参拝した閣僚がわずか一人にとどまったことにも、象徴的に示されました。高校歴史教科書の文部科学省の検定で、沖縄戦の「集団自決」への日本軍の強制に関する記述が削除された問題では、検定の撤回を求める意見書が、沖縄県と県下四十一自治体のすべての議会で可決され、参院選後には県民ぐるみのたたかいがさらに大きく発展しています。安倍首相は、憲法改悪への野望になお固執していますが、彼らがその改憲計画を当初のスケジュールどおりには進められない状況をつくりだしたことは、たいへん重要であります。

 全国からの感想でも、「論戦はたいへん訴えやすかった」「政策と議席の値打ちが語りやすかった」という声が圧倒的に多くよせられました。

 自公政治を追い詰めるうえで果たしたわが党の政治論戦の積極的役割、わが党ならではの役割に確信をもって、公約実現のために力をつくそうではありませんか。

党大会決定が提起した「二重の構え」という政治戦略にてらしての自己検討

 同時に、今回の政治論戦を、さらに大きな視野からふりかえって自己検討をくわえる必要があります。

 第二十四回党大会決定では、国政選挙にむけた政治戦略について、「『たしかな野党』の責任をはたし、日本改革の方針を広く国民に語る」とのべています。すなわち、直面する熱い問題で国民の利益にたって活動するとともに、綱領と日本改革の方針を広く国民に語る活動に、いわば「二重の構え」でとりくむことを、政治戦略の基本として提起しています。とりわけ大会決定では、綱領と日本改革の方針を語ることを、「党の日常の活動として、抜本的に強める」ことを強調しています。この点でどうだったか。

 大会後の活動をふりかえってみますと、76%の支部でとりくまれた綱領学習会の運動、日本共産党の綱領、歴史、理念など全体像を紹介したパンフレット『日本共産党はこんな政党です。』の全戸配布など、一定の努力がはかられました。しかし、日常の活動として、また選挙戦の活動のなかで、系統的にこの課題にとりくむうえで、党中央のイニシアチブに弱さがあったといわなければなりません。

 とくに、有権者の多くが自公政治に愛想をつかし、それに代わる政治をもとめるという大きな流れがおこるもとで、綱領と日本改革の方針に示された自民党政治の根本的改革者としての日本共産党の姿を大きく押し出していくことは、なおのこと重視されて位置づけられるべきでした。これは論戦上の反省点であります。

 直面する熱い争点での訴えも、本物の改革の党の姿が明らかになってこそ、より説得力をもちます。日本共産党と民主党との違いも、個々の政策課題への対応の違いにとどまらず、アメリカいいなり、財界中心政治という自民党政治の基本路線への姿勢の違いの問題として、より太く、また端的に明らかになります。

 直面する熱い問題と統一して、どうやって日本改革の方針を語るかは、新しい探求の課題であります。今後のたたかいにこの教訓を生かしたいと思います。

選挙戦の総括と教訓(その2)――選挙活動の全体について

選挙活動の「二つの課題」の到達点はどうだったか

 つぎに選挙活動全体がどうだったのかという問題であります。

 今回の選挙にむけては、今年一月初めに開催した三中総、五月に開催した四中総とも、直後に開催された全国都道府県委員長・地区委員長会議の参加者が全員傍聴し、県・地区委員長会議では中央委員会総会の方針を受けて積極的な討論がおこなわれ、中央、県、地区、支部が、心を一つに奮闘する意思統一がはかられました。また、二回にわたって全国の会場をCS通信で結んで「全国いっせい決起集会」をおこないました。全国からの感想でも、これらのとりくみが、「全国は一つ」で全党的な決起をつくるうえで歓迎され、大きな力を発揮したことが、共通して報告されています。

 こうして全国各地で大きな奮闘がくりひろげられました。しかし、その全党的な到達はどうだったのか。四中総決定で「参院選公示日までにやりきる」と決めた「二つの課題」の到達点は以下の通りでした。(1)選挙活動の運動量では、その一つの目安となる支持拡大をみますと、支持拡大目標比で公示日の到達は21%、最終到達でも74%にとどまり、目標突破ができないまま投票日をむかえました。最終到達は、前回参院選との比較でも96%にとどまりました。(2)党勢拡大については、党員拡大では大会後新しい同志を迎えた支部は二割にとどまり、党員数は前回選挙時比で99%でした。「しんぶん赤旗」読者数は、日刊紙で前回選挙時比88%、日曜版84%と、全党的には党勢の上げ潮の勢いのなかで選挙をたたかうことができませんでした。全支部と全党員の決起という点では、何らかの形で選挙戦をたたかった支部は九割、党員は五割から七割でした。

 何人かの県、地区委員長から、つぎのような共通した感想がよせられています。

 「みんなよくがんばった。有権者の反応もよかった。それだけに結果はショックだった。しかし、その後、冷静にみれば、やはりやるべきことができていなかった。宣伝、対話・支持拡大の到達、党勢拡大の到達、党員・後援会員のたちあがり、結局、これらの到達が得票結果となって示された。有権者の反応は温かかったが、なんといっても働きかけた総量が少なすぎた」。

 選挙戦では、全国でたくさんの先駆的な大奮闘がおこなわれ、感動的なドラマが生まれました。私は、重ねて猛暑のなか大奮闘された同志たちに心からの敬意と感謝の気持ちをのべるものです。しかし全党的にみれば、やるべきことをやりきった選挙戦にできなかったことは、冷厳な事実です。それが政治論戦で有権者のなかに共感を広げながらも、議席、得票の目標を実現できなかった大きな要因となりました。

第一の角度――もてる力を出し切って選挙戦をたたかったか

 それではなぜ、やるべきことをやりきれなかったか。さらに二つの角度から自己検討をすすめたいと思います。そのさい、同じ情勢のもとでたたかいながら、立派な結果を出している党組織が全国各地に生まれており、その経験に、中央も、全国の党組織も、よく学びながら、自己検討をすすめるという姿勢が大切だと思います。

 第一の角度は、もてる力を出し切って選挙戦をたたかったかという問題です。

 この参院選は、全党的には、得票目標を達成できなかった選挙戦でしたが、そのなかでも、二〇〇五年衆院選挙比で得票率を130%以上に伸ばした自治体・行政区が、全国で三十一生まれました。政令市では大阪・福島区、一般市では秋田・鹿角市、神奈川・横須賀市、神奈川・三浦市、三重・四日市市、三重・鳥羽市、奈良・生駒市の六市、町村段階では二十四自治体であります。その共通したもっとも重要な教訓は、参議院選挙とくに比例代表選挙を「自らの選挙」「おらが選挙」にしていくための努力が貫かれていることにあります。

 たとえば得票率を総選挙比で144%と大きく伸ばした大阪・福島区の経験は、学ぶべき多くのものがあります。その教訓は多面的ですが、地区委員長は、参院選を「自らの選挙」にしていくうえで、地区委員会のつぎの二つの特徴を最大限に生かした選挙戦を展開したと報告しています。(1)いっせい地方選挙で、定数二でトップ当選をかちとった市議会議員の同志に、「あなたが市議選以上にがんばることが、支部と党員が『自らの選挙』としてがんばるうえで決定的だ」と励まし、この同志がそれにこたえて大奮闘し、その奮闘ぶりが全党をふるいたたせた。(2)職場支部は、地方選挙では十分に力が出し切れなかったが、職場支部にとっては国政選挙のほうがある意味では「身近な選挙」となり、「全国は一つ」の活動がやりやすいととらえて、積極的な指導・援助を強め、職場支部がほとんどの職場の門前宣伝にとりくむなど大奮闘し、その奮闘ぶりが地域支部の活動も励まし、大きな力を発揮したとのことでした。この二つが大きな推進力となって、参議院選挙を「自らの選挙」としてたたかう底力が発揮され、宣伝でも、組織活動でも、地方選挙を大きく上回る規模の運動がつくりだされ、比例の大幅得票増に実をむすんだとの報告でした。

 同時に、全国からの感想では、「いっせい地方選挙と比較しても、力を出し切れなかった」という率直な自己分析が多数よせられています。

 ある地区委員長は、比例票を伸ばしたがなぜ目標に届かなかったかについて、つぎのような真摯(しんし)な自己分析をよせています。

 「『なぜチャンスがありながら、目標達成ができなかったのか』――その中心問題として、四中総とその後のいっせい決起集会で繰り返し強調された『おらが選挙』の問題がつきささります。地方選前の一年半は『寝ても覚めても』だった気がします。国政選挙でも『寝ても覚めても』という構えと実践をどう探求するか、考え抜きたいと思います」。

 つぎのような自己分析をよせている地区委員長もあります。

 「四中総で強調された『おらが選挙』にすることが極めて不十分に終わったことが最大の反省点である。わが地区の場合、『地方選挙の二倍、三倍のとりくみ』をしなくても、せめて、『地方選挙と同じ構え』でとりくめば、比例の責任目標は達成された選挙であった。しかし、実際は地方選挙の半分程度のとりくみに終わった。『国政選挙に力が入らない』という悪しき習慣を打ち破れなかったことが、最大の問題だった」。

 衆議院の選挙制度が中選挙区制から小選挙区・比例代表並立制に切り替えられたことを、重大な契機として、選挙の回数をへるごとに、率直に言って、「国政選挙に力が入らなくなる」傾向、「国政選挙の影が薄くなる」傾向が、党内に生まれていることは重大な問題であります。

 国政選挙に強い党――とりわけ比例代表選挙を「自らの選挙」として、自らがもつ最大の底力を発揮してたたかう党をどうつくるか。これは、中央をはじめ全党が、今回の選挙から導きだすべき重大な教訓であり、探求すべき重要な課題であります。

第二の角度――党の自力そのものがどうだったか

 第二の角度は、党の自力そのものがどうだったかという問題です。

 参議院選挙で、比例の得票率で20%をこえた行政区が、大阪の此花区(21・4%)、西淀川区(20・2%)、京都の北区(20・5%)、左京区(20・4%)、南区(20・0%)の五行政区あります。これらの行政区では、どこでも党員で人口比1%前後、読者で有権者比3〜4%という分厚い党組織を持っています。これらは、「二大政党づくり」の難しい「風」が吹きつけてきても、有権者と結びついた強固な党があれば、選挙で前進することができることを証明するものであります。

 大阪の西淀川此花地区は、党員でも読者でも、この数年来の努力で、全国で最も分厚い党勢力を築いてきた地区委員会ですが、地区委員長は、参院選で、西淀川区でも此花区でも前進し、とくに此花区では選挙区票で宮本候補が第一位を確保したこと、比例票でも得票率二割をこえて民主、公明についで第三党ですが差は縮まり互角になったことを、「『二大政党づくり』を打ち破る一歩を切り開いた快挙」として、確信にみちた報告をよせています。西淀川此花地区では、地区再編後のこの七年余、「日本最強の地区委員会になろう」「小選挙区で勝てる党になろう」「一人区の府議選挙で勝てる党になろう」という志の高い政治目標を決め、この思いを全支部、全党員のものにする努力を一貫してはらってきたことが、あらゆる活動を発展させるモノサシとも推進力ともなり、党建設を頑強不屈に前進させ、党員を一・六倍に拡大し、分厚い陣地をつくる力となっています。そしてこの力が土台になって、選挙戦になっても、要求活動でも、宣伝でも、組織活動でも、党員の一人ひとりの条件に応じた活動をみんなで分担しあってすすめることによって、一人ひとりの党員の負う荷物はそう重くはなく、無理なく目標をやりきっています。ここには、私たちが学ぶべき豊かな教訓があり、めざすべき一つの目標があると思います。

 「選挙で勝てる強く大きな党」をつくるために、私たちは、大会以来、一連の新しい努力をはらってきました。「支部が主役」の党づくり、綱領学習の強化、「職場講座」にもとづく職場支部の活動強化、中間機関の活動改善、機関紙中心の党活動の探求、雇用問題や平和問題での若い世代のなかでの活動強化などにとりくんできました。

 こうした努力は、党建設での前向きの変化をつくりだす力を発揮していますが、いずれも努力の途上であり、今日の情勢がもとめる水準と、現在の党の実力との大きなギャップが埋められていません。「二大政党づくり」の動きを押し返して、どんな難しい条件のもとでも、選挙で前進・勝利するには、わが党は自力があまりに不足しています。ここに現在のわが党の活動の最大の弱点があります。この弱点を直視し、その打開のためにあらゆる知恵と力をつくすことを、参議院選挙の結果から導きだすべき最大の教訓としたいと思います。

 いっせい地方選挙からひきだすべき総括と教訓についても、四中総決定で明らかにした四つの教訓にくわえて、根本的には党の実力の問題が、結果の「明」と「暗」をわける土台にある問題点でした。それぞれの個別の問題とともに、党の実力という角度から、都道府県、地区ごとに、教訓をひきだす作業を、ひきつづきすすめていただきたいと思います。

二、新しい政治プロセスを前進させるために――「二重の構え」のとりくみを

 報告の第二の主題は、新しい政治プロセスを前進させるために、日本共産党がどういう政治的な構えでのぞむかという問題です。

新しい政党状況と日本共産党の役割

 まず、新しい政党状況と日本共産党の役割について報告します。

 参院選挙の審判をうけて、日本の政治は、国民が、自公政治に代わる新しい政治の中身を探求する新しい時代、わが党にとっていちだんとやりがいのある激動の時代に入りました。この新しい政治プロセスを前進させるために、日本共産党はどういう役割をはたすべきか。

 いまの情勢をとらえるうえで重要なのは、自民党政治のゆきづまりが深刻になるもとで、「二大政党づくり」の動きに、新しい特徴が生まれているということであります。その特徴をよくとらえて、日本共産党が積極的な役割を発揮することがもとめられます。

安倍・自公政権――政治的衰退が極まった末期的な姿

 一方で、安倍・自公政権の政治的な衰退が、いよいよすすんでいます。

 安倍首相は、「『人心一新』が国民の声」といって内閣改造をはかりましたが、「一新」されるべき首相が居座ったうえ、国民から「ノー」の審判をくだされた路線にしがみついている。二重に民意にそむく姿勢をとっています。

 首相は、「改造」内閣発足にあたって、内閣と党の主要ポストを再び「靖国」派でかためたうえ、内閣「改造」は「『美しい国づくり』、『改革』を再スタートさせるためにおこなった」、「戦後レジームを原点にさかのぼって見直しをしていく」とのべ、貧困と格差拡大の「構造改革」路線、「戦後レジームからの脱却」を旗印にした改憲路線にあくまで固執することを宣言しました。

 外交でも、国際的孤立と破綻(はたん)はいちじるしいものがあります。

 「従軍慰安婦」問題では、安倍首相自らの妄言(もうげん)が国際的な怒りを広げ、米国下院で日本政府に公式の謝罪を求める決議が採択されました。

 首相が主導している、同じ「価値観」をもつ国とだけ連携を強めようという「価値観外交」なるものは、「反中国ブロック」をつくろうという時代錯誤の動きとみなされ、アジアと世界でひんしゅくをかっています。わが党の綱領は、「社会制度の異なる諸国の平和共存および異なる価値観をもった諸文明間の対話と共存の関係の確立に力をつくす」ことを、日本のとるべき平和外交の基本点の一つとして明記していますが、安倍首相には、社会制度の異なる諸国や、異なる価値観をもつ諸文明が、相互に理解しあい平和的に共存することこそ、いまアジアでも世界でも本流となっていることが、まったく見えないのであります。

 かつての自民党ならば、国民から厳しい審判をうければ、首相を交代させたり、自民党政治の枠内であっても路線の多少の見直しをおこない、政権の延命をはかってきたものでした。ところが、そうした対応すらできず、国民から「ノー」がつきつけられた人物と路線に、反省もなく日本の政治を委ねようとしている。「改造」内閣発足後も、「政治とカネ」をめぐるスキャンダルが連続して明らかになっている。ここには政治的衰退が極まった自民党の末期的な姿が、示されているではありませんか。

民主党――「対決戦術」への変化と、基本路線の問題点

 それでは、民主党はどうか。民主党は、自公政治への国民の怒りの劇的な広がりのもとで、今回の参院選では、これまでのように、同じ政策目標を掲げて実行力を競い合うという戦術が続けられなくなり、「反自公」を前面に掲げた「対決戦術」をとりました。そのことによって国民の批判票の受け皿になることには成功しました。

 民主党が掲げた「マニフェスト」は、庶民増税問題、憲法改定問題、衆院比例代表定数削減問題などで、重大な問題点をはらみつつも、「対決戦術」のもとで、部分的には国民の要求を反映した内容がもりこまれました。わが党は、民主党の公約のうち、国民の利益にかなった内容については、その実行をもとめていきます。また一致点で、国会内での野党共闘をすすめる努力をはかることは当然であります。

 同時に、三中総決定が指摘した、「自民党政治の『三つの異常』を共有している」という民主党の路線的な問題点が変わったかというと、そうはいえません。大企業中心主義、「日米同盟」絶対論、歴史をゆがめる逆流を抱え込んでいるなどの問題点を共有し、自公政治を変える路線的立場をもっていません。参院選で、民主党は、「反自公」を掲げましたが、自公政治に代わる政治の中身を打ち出せたわけではありませんでした。民主党は、自らの目標を、「政権交代可能な二大政党制をつくる」としていますが、このこと自体が、基本路線では自公に代わるものをもたないことを示すものにほかなりません。

 民主党は、「反自公」を掲げた「対決戦術」と、その基本路線との矛盾が、今後、国民的に問われ、試されることになるでしょう。わが党は、民主党の公約の前向きの要素については実行をもとめつつ、路線上の問題点については、国民の利益にたって明らかにしていくものです。

日本共産党――「二重の構え」で新しい政治プロセスを前進させる役割を

 こうした政党状況のもとで、日本共産党が、つぎの「二重の構え」のとりくみを強化することが、新しい政治プロセスを前にすすめるうえで、またきたるべき衆議院選挙にむかう政治戦略としても、重要になっています。

 第一は、直面する熱い焦点で、間違った政治に反対をつらぬくとともに、国民の暮らし、平和、民主主義にかかわる切実な要求を実現するために、積極的役割をはたすことであります。参議院選挙でくだされた自公政治への国民的審判という土台のもとで、国民の声を代弁した日本共産党の政策提起が国政全体を動かす可能性が、さまざまな問題で存在しています。それをくみつくしたたたかいを展開します。

 第二は、綱領と日本改革の方針を広く国民に語り、国民の利益にかなった「新しい政治」とは何かを、国民とともに探求するとりくみを、思い切って強化することです。自公政権は、もはや「日本をどうするか」というまともな展望をまったく示せず、深刻な政治的衰退に陥っています。民主党も、「反自公」をいうわけですが、「自公政治の政治路線のどこをどう変えるのか」という改革の展望は示せていません。このもとで、日本の政治の行き詰まりを打開する道をはっきり示しているのは、日本共産党の綱領と日本改革の方針であります。これを広く語り、国民多数の合意にする努力をはかることが、新しい政治プロセスを前進させる最大のカギとなっていることを強調したいと思います。

「たしかな野党」のスローガンについて

 ここで「たしかな野党」という、党押し出しのスローガンについてのべておきたいと思います。このスローガンは、二〇〇五年総選挙のさい、「二大政党づくり」の動きとのかかわりで日本共産党の議席の値打ちを押し出すうえで、積極的意義をもつスローガンとなりました。今回の選挙でもこのスローガンが、全体として積極的役割をはたしたことは、全国からの多くの感想でも共通して語られています。

 同時に、今後の問題としては、自公政治に代わる新しい政治の中身を探求する新しい時代が始まり、さきにのべた「二重の構え」にたった党の役割がこれまで以上に強くもとめられる情勢のもとで、新しい情勢によくマッチした党押し出しの新しいスローガンを、検討していきたいと思います。

直面する熱い問題で積極的役割をはたす

 日本共産党が、「二重の構え」にたった党のとりくみを前進させるうえで、それぞれについて、具体的な活動方向を報告します。

 第一に、直面する熱い問題で積極的役割をはたすという点では、国民の暮らしの「命綱」として、また、平和と民主主義のたしかな守り手として、党の存在意義を発揮し、つぎのようなたたかいを国会内外の連携した力ですすめ、安倍・自公政権を追い詰め、衆院の解散・総選挙に追い込むたたかいを展開します。

貧困打開と国民生活を守るたたかい

 まず貧困打開と国民生活を守るたたかいについてのべます。

<消費税増税計画を断念に追い込み、「逆立ち」税制をただす>

 「庶民に増税、大企業・大資産家に減税」という「逆立ち」税制をただすたたかいは、ひきつづく国政の熱い焦点であります。

 消費税増税問題は、参院選の審判にもかかわらず、政府・与党から増税の合唱がおこりつつあり、二〇〇九年度までに手当てが必要な年金財源を口実にした増税論が、いずれ国政の大問題となることは必至であります。安倍首相が、参院選で、消費税問題で国民の審判を仰ぐことを逃げ続けた以上、政府・与党には、消費税増税問題を持ち出す資格はもともとありません。増税計画を断念に追い込むために、たたかいを大いに発展させる決意であります。

 財界や経済産業省などは、大企業と大資産家への減税をさらに拡大、恒久化することを要求していますが、空前の利益をあげている大企業への減税とは、これはとんでもない、あつかましい要求であります。この企(くわだ)てを許さず、ゆきすぎた減税を是正し、もうけ相応の負担をもとめていきます。

<社会保障切り捨て政治から国民の生存権を守る>

 政府・与党は、来年度も社会保障予算を抑制する「構造改革」路線をつづけ、医療、介護、年金、生活保護など、あらゆる分野で貧困に追い打ちをかける切り捨て政治をすすめようとしています。この動きに正面から立ち向かい、国民の生存権を守るために全力をあげます。

 七十五歳以上の高齢者を「後期高齢者」と勝手に名付けて、他の世代から切り離し、過酷な保険料徴収と負担増、医療切り捨てを押し付ける「後期高齢者医療制度」について、来年四月からの実施の凍結と、制度の全面的な見直しを要求してたたかいます。

 参院選で公約した「緊急福祉1兆円プラン」を実現させるために、新しい国会の力関係のもとで、力をつくします。「消えた年金」問題の解決とともに、年金受給条件を二十五年から十年に引き下げるなど年金制度改善の緊急策の実行を迫り、最低保障年金制度の導入をもとめ、安心できる制度への改革をめざします。

<日雇派遣など非人間的な雇用を規制し、人間らしく働けるルールを求める>

 人間らしく働けるルールをもとめるたたかいでは、(1)「偽装請負」を一掃し、非正規雇用で働く労働者への不当な差別・格差をなくし、正社員化をすすめること、(2)「サービス残業」を根絶し、過労死をもたらす異常な長時間労働を是正するたたかいが、ひきつづく重要な課題です。

 わが党の要求によって、政府は「ネットカフェ難民」の調査をおこない、その一端が明らかになりましたが、日雇派遣など非人間的な雇用形態の規制をもとめるとともに、緊急の手だてとして家賃補助なども要求します。最低賃金法を改定し、時給千円を目標に抜本的に引き上げることを強く要求していきます。

<国による地域社会の破壊から住民と地域を守る>

 国による地域社会の破壊から、住民と地域を守るために力をつくします。「三位一体」の改革の名で強行された地方財源切り捨て政策の抜本的見直しをもとめます。地域医療、郵便局、公共交通、中小企業の経営の破壊など、「構造改革」の名ですすめられている地域切り捨て政策をやめさせます。農産物輸入の全面自由化をやめさせ、価格保障と所得保障を組み合わせて家族経営を守る政策に転換させるために力をつくします。

 これらの問題のなかには、野党の共同で対応できる条件のある問題もありますが、根本的解決のためには異常な大企業中心主義という政治の古い枠組みそのものの打破がもとめられます。切実な要求から出発しながら、根本的解決の道を明らかにしていくとりくみが大切であります。

「海外で戦争をする国づくり」を許さず、憲法を守り抜くたたかい

 つぎに「海外で戦争をする国づくり」を許さず、憲法を守り抜くたたかいについて報告します。

<テロ特措法の延長を許さず、インド洋から自衛隊を撤退させる>

 テロ対策特別措置法の問題は、直面する国政の最大の課題の一つであります。国連憲章の精神をふみにじった米国の報復戦争に、憲法を蹂躙(じゅうりん)して参加するこの無法な枠組みの延長を許さず、インド洋から自衛隊を撤退させるために全力をあげてたたかいます。

 二〇〇一年九月十一日の同時多発テロにさいして、わが党は、世界各国政府にたいして二度にわたって書簡を送り、国際社会が協力してテロリストを“法による裁き”のもとにおくことこそ解決の道であり、報復戦争に訴えることは事態の悪化しかもたらさないと訴えましたが、この警告の的確さは六年間の現実によって証明されました。報復戦争は、テロの温床を拡大し、アルカイダのネットワークが世界六十カ国に広がったと指摘されるように、テロを世界中に拡散する結果をもたらしました。アフガニスタンでは、米軍などによる無差別の武力掃討作戦によって多くの民間人が殺害され、それが、外国軍の駐留への怒りを強め、自爆テロを急増させるという情勢悪化の悪循環がおこっています。戦争でテロはなくせない。このことが明らかになったのが、この六年間の重大な教訓であります。

 テロ特措法を撤廃し、自衛隊を一刻も早く撤退させ、日本は報復戦争から手をひくべきであります。テロ根絶のための努力としては、その土壌をなしている貧困や教育の問題での支援こそ日本にもとめられていることを強調したいと思います。あわせて、イラク特措法を廃止し、イラクから自衛隊を撤退させることも急務であります。

<米軍再編に反対するたたかいを発展させ、全国の連帯を強める>

 米軍再編問題は、これから正念場をむかえます。沖縄、神奈川、岩国、横田など、全国各地の基地強化・恒久化を許さないたたかいを発展させ、たがいに連帯を強めます。

 三兆円にのぼる無法な米軍再編への国民の税金の支出をやめさせるとともに、来年三月に期限をむかえる在日米軍への「思いやり予算」、米軍駐留経費負担にかんする特別協定の改定に反対するたたかいにとりくみます。

<国民の審判に逆らう改憲派の巻き返しを許さず、改憲反対の国民多数派を>

 憲法改定の策動は、今回の選挙結果によって、大きな打撃をこうむりましたが、安倍首相は、自民党が「マニフェスト」のトップで掲げた「三年後の国会で憲法改正を発議する」という公約について、「公約を見直す考えはない」と明言するなど、国民の審判に逆らって改憲の企てにあくまで固執しています。改憲派の巻き返しを許さず、相手を攻めに攻めぬいて、憲法改定にむけた具体化の一つひとつの動きにストップをかけ、「九条の会」の一翼を担ってひきつづき奮闘するなど、草の根からの憲法改悪反対の国民多数派を築くために力をつくします。

 ここでも、一つひとつの熱い課題でのたたかいを前進させながら、根底にある「日米同盟」の地球的規模への拡大という軍事同盟強化路線をたえず告発し、軍事同盟をなくして独立・中立の日本を築くという方向での国民の合意を広げる努力が重要であります。

「政治とカネ」――感覚マヒの根源にある企業・団体献金と政党助成金にメスを

 「政治とカネ」の問題も、直面する重大な焦点です。政治資金の支出を透明にするのは当然ですが、収入を企業・団体献金と政党助成金に頼っているという根本にこそメスを入れる必要があります。政治をカネで買う。国民の税金で政党がぬくぬくと暮らす。ここにこそ政治とカネをめぐる感覚マヒの根源があり、それを禁止・撤廃することこそ問題解決の道であることを、広く明らかにしてたたかいます。

 最優先させるべきは、政治の腐敗・不正にかかわる疑惑の徹底糾明であります。遠藤前農水大臣の疑惑は、大臣辞任で一件落着になりません。税金のだまし取りという不正行為と利権構造の徹底糾明が必要です。事務所費疑惑などが指摘されている閣僚についても、使途不明金の実態の徹底糾明が必要です。あわせて首相の任命責任、政権担当能力を追及していきます。そのさい、国政調査権を発動して疑惑の徹底糾明をおこなうことを提起していきます。

「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」の提案

 第二に、綱領を語り、国民の利益にかなった「新しい政治」とは何かを国民とともに探求するとりくみを、草の根からおこす「大運動」を提案するものです。

綱領と日本改革の方針が、こんなに情勢とかみあい、共鳴しつつあるときはない

 第二十四回党大会決定では、日本の政治がどんな歴史的時期に直面しているかについて、「歴史への無反省、アメリカいいなり、大企業中心主義――世界でも類例のない異常な特質をもつ自民党政治が、国民との矛盾、世界の流れとの矛盾を深め、どの分野でもいよいよ立ち行かなくなるもとで、いま日本の情勢は、大局的にみれば、国民中心の新しい日本への条件をはらんだ歴史的転機をむかえている」とのべました。

 「改革」と偽って国民を苦しめる悪政を押し付けた小泉政治の「うそとごまかし」がはげ落ちて、自公政権が参議院選挙で歴史的大敗を喫するもとで、「日本の情勢は、大局的にみれば、国民中心の新しい日本への条件をはらんだ歴史的転機をむかえている」という大会決定の指摘は、多くの国民の共通の実感、認識となりつつあるのではないでしょうか。

 そして重要なことは、どの問題をとっても、わが党の綱領と日本改革の方針が、こんなに情勢とかみあい、情勢と共鳴しつつあるときはないということです。とりわけ、わが党が自民党政治の「三つの異常」と指摘してきた問題が、どれをとっても破綻(はたん)に直面し、これらの異常を根本から改革する方途を示したわが党の綱領の値打ちが、どの問題でも鮮明になっています。いま私たちが、国民のなかで綱領と日本改革の方針を語れば、「国民が主人公」の日本をめざす国民的合意を大きく前進させる条件が広がっており、この条件をくみつくした積極的なとりくみを大いにすすめようではないかということを、よびかけたいのであります。

自民党政治の「三つの異常」をただす日本改革と、綱領の諸規定について

 綱領を国民に語るとりくみは、党大会決定を指針としつつ、それぞれの同志の入党の初心、党への思いなどをまじえ、相手の関心にもこたえて、自由闊達(かったつ)にすすめることが大切ですが、「三つの異常」をただす日本共産党の日本改革の方針を語るためには、綱領の次の諸点をよくつかむことが重要です。

<過去の侵略戦争を正当化する言論、政策、行動を大本から転換する改革>

 自民党政治の第一の異常――過去の侵略戦争を正当化する言論、政策、行動を、大本から転換する改革についていいますと、まず綱領は、第一章「戦前の日本社会と日本共産党」で、侵略戦争と植民地支配の誤りを、歴史の事実にもとづき、またこの誤りと命がけでたたかった日本共産党の当時の現場での闘争にもとづいて、明らかにしています。

 さらに第四章「民主主義革命と民主連合政府」のなかの「日本社会が必要とする民主的改革の主要な内容」のところでは、日本がとるべき平和外交の諸政策の冒頭に、「日本が過去におこなった侵略戦争と植民地支配の反省を踏まえ、アジア諸国との友好・交流を重視する」ことを明記しています。

<異常なアメリカいいなり政治をただす改革>

 自民党政治の第二の異常――異常なアメリカいいなり政治とそれをただす改革についていいますと、まず綱領は、第二章「現在の日本社会の特質」のなかで、日本の現状が、「発達した資本主義諸国のあいだではもちろん、植民地支配が過去のものとなった今日の世界の国際関係のなかで、きわめて異常な国家的な対米従属の状態にある」ことを、日本全国に配備されつづけている米軍基地、アメリカの世界戦略の一翼を担わされている自衛隊、軍事・外交・経済などあらゆる面での従属の実態を示しつつ、正面から告発しています。

 そして第四章の「民主的改革の主要な内容」のところでは、この異常な状態からの脱出の道が、日米安保条約の廃棄と日本の進路の平和・中立・非同盟路線への転換にあることを明示し、新しい日本がとるべき平和外交として八項目の内容を示しています。

 さらに第三章の「世界情勢――二〇世紀から二一世紀へ」の分析では、今日の世界の大きな流れは、アメリカの覇権主義的な世界支配を許さず、国連憲章にもとづく平和の国際秩序を築き、核兵器も軍事同盟もない世界を実現することにあるとして、この転換の国際的な背景と意義も明らかにしています。

<極端な大企業中心主義の異常をただす改革>

 自民党政治の第三の異常――極端な大企業中心主義の異常とそれをただす改革についていいますと、まず綱領は、第二章の「現在の日本社会の特質」のなかで、国民を苦しめる諸悪の根源が、国内的には「大企業・財界の横暴な支配」にあること、とくに、「国民の生活と権利にかかわる多くの分野で、ヨーロッパなどで常識となっているルールがいまだに確立していないことは、日本社会の重大な弱点となっている」ことを指摘し、雇用、女性差別、中小企業、農業、環境、経済・財政政策、汚職・買収・腐敗など、国民生活と日本社会の各分野での異常なゆがみを告発しています。

 そのうえで第四章では、「経済的民主主義の分野」での「民主的改革」の内容として、「国民の生活と権利を守る『ルールある経済社会』をつくる」こと、「大企業にたいする民主的規制を主な手段として、その横暴な経済支配をおさえる」こと、「国民各層の生活を支える基本的制度として、社会保障制度の総合的な充実と確立をはかる」こと、そして、国の経済運営の全体を、「大企業・大銀行本位の支出や軍事費を優先させている現状をあらため、国民のくらしと社会保障に重点をおいた財政・経済の運営をめざす。大企業・大資産家優遇の税制をあらため、負担能力に応じた負担という原則にたった税制と社会保障制度の確立をめざす」という方向に大きく転換させることなどを、掲げています。

 自民党政治の「三つの異常」をただす日本改革の方針と綱領とのかかわりをいくつかの角度からのべてきましたけれども、こうのべてきますと、綱領の一つひとつの規定が、本当に今の情勢と響き合い、かみあっている。どの命題も、国民の中で語ったときに、あたりまえの常識的なこととして受けとめられる、そういう内容であるということがよくわかると思います。どの問題でも、国民の認識と日本共産党の立場――綱領の立場が接近してくる条件と可能性、そして必然性がある。そこをとらえて大いに綱領を語り、「どんな日本をつくるか」を語り、新しい日本の進路をともに探求するとりくみをすすめようではありませんか。

 そのなかで綱領の示す世界論、未来社会論、党の歴史も含め党の全体像を語ることも大いに重視していきたいと思います。綱領の第三章「世界情勢」では、「巨大に発達した生産力を制御できないという資本主義の矛盾」について地球的規模から明らかにし、綱領の第五章「社会主義・共産主義の社会をめざして」では、資本主義を乗り越えた未来社会への変革の内容、展望、道筋が、全面的に明らかにされています。これらの中心点をつかんで、日本共産党のめざす未来社会とはどのようなものか、日本共産党という党名が、党の歴史とともに党のめざす未来社会とも不可分のものであることを明らかにしていくことも大切であります。

総選挙をめざして、すべての支部が草の根から「綱領を語る集い」を開こう

 このとりくみを日常の活動として定着させるために、第五回中央委員会総会として、きたるべき総選挙での前進をめざして、「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」にとりくむことを、全党のみなさんに提案します。すべての支部、地区、都道府県が、「綱領を語る集い」を開きましょう。この「集い」は、国民の関心にこたえつつ、綱領を指針に、日本の進路を語り合うことを正面からの主題にとりくむようにしましょう。

 「集い」には、もちろん中央からも弁士が参加しますが、都道府県と地区の機関幹部、講師資格者、地方議員、支部長などが、積極的に弁士をつとめ、大・中・小の規模で、草の根から自由闊達(かったつ)、縦横にとりくむことが何よりも大切であります。後援会との協力を強め、さまざまな分野ごとにもとりくみを大いにすすめましょう。

 この「大運動」は、綱領の学習運動をさらに前進させることと一体に推進をはかりたいと思います。100%の支部で綱領学習にとりくみ、少なくとも五割以上の党員が綱領を一刻も早く読了することをめざして努力を強めましょう。

 「大運動」と一体に、多くの入党者を迎え入れ、読者と後援会員を増やし、きたるべき総選挙にむけて党支持者を広げることを、自覚的に追求しましょう。

 「大運動」をつうじて、綱領と日本改革の方針を広く国民に語り、日本の進路をともに探求する活動を、党の日常の活動として定着させ、綱領と日本改革の方針への国民の支持と共感をうまずたゆまず広げる党活動への発展をかちとろうではありませんか。

 「大運動」の成功を、心からよびかけるものであります。

三、総選挙の方針について

 報告の第三の主題は、総選挙の方針についてであります。

政治的な構えと政治目標

 まず政治的な構えと政治目標についてのべます。

直面する熱い争点で積極的役割はたし、日本改革の方針への合意を広げる

 きたるべき総選挙は、一方で、「自民か、民主か」の文字どおりの「政権選択選挙」の大キャンペーンによる共産党締め出しの大きな圧力に抗してのたたかいとなることは間違いありませんが、他方で、自公政治の深刻な行き詰まりのもとで、その打開の道を示す日本共産党の綱領の立場がいよいよ重要となる選挙となります。

 日本共産党は、安倍・自公政権を追い詰め、解散・総選挙に追い込むために力をつくします。安倍・自公政権のゆきづまりと政治的基盤の崩壊は深刻であり、いつ解散・総選挙となっても前進をかちとるための活動に、ただちにとりくみます。

 この選挙にのぞむ政治的構えとしては、さきにのべた「二重の構え」を堅持することが、前進・勝利にとって決定的に重要となります。すなわち、(1)直面する熱い争点で、間違った政治に反対をつらぬき、国民の要求実現のために積極的役割をはたす。自公の悪政にたいする根本的な批判者の党として、それを追い詰める先頭にたつとともに、民主党の路線上の弱点、問題点についても国民の利益にたって明らかにしていきます。(2)自公政治に代わる新しい政治の中身を大いに語り、日本改革の方針への合意を広げる選挙にしていきます。

議席目標と、全国的な得票目標について

 総選挙の政治目標は、議席目標では、党大会決定で確認しているように、「衆議院の全国十一のすべての比例代表ブロックで議席を獲得し、増やすこと」とします。現在議席のない北海道、北陸信越、中国、四国での議席獲得と、東京、北関東、南関東、東海、近畿、九州・沖縄での議席増を目標とします。東北は、現有議席確保を目標としてたたかいます。

 得票目標は、今回の参院選でかかげた「六百五十万票以上」を、きたるべき総選挙においても全国的な目標としてたたかいます。都道府県、地区、支部は、「六百五十万票以上」にみあう得票目標の達成に、ひきつづき挑戦するようにしたいと思います。

 国政選挙は、衆議院選挙と参議院選挙が、だいたい三年に二回程度、多くの場合には交互にたたかわれます。どちらの場合も比例代表選挙がたたかいの軸となるわけですが、当面は「六百五十万票以上」を衆参の国政選挙の共通の全国的目標として掲げ、その達成をめざす。そして衆議院であれ、参議院であれ、六百五十万票を達成したら、あるいはこの目標に接近したら、次の国政選挙から目標を新しい段階にひきあげますが、それまでは同じ目標を全国的な目標として追求するようにする。これは新しい問題提起でありますが、こうしたたたかい方を導入することは、比例代表選挙の準備を日常不断の活動にしてゆく基盤となり、国政選挙を「自らの選挙」「おらが選挙」にしていくうえでも力を発揮するでしょう。

 ただし比例ブロックによっては、「六百五十万票以上」にみあう得票目標では議席目標にとどかないブロックもあります。そうした比例ブロックでは、議席目標達成に必要なより高い得票目標を決めることにします。

比例代表での前進に力を集中する新しい選挙方針を提案する

小選挙区と比例代表選挙での候補者擁立の基本方針について

 現在の力関係のもとで、わが党が総選挙で前進できるかどうかは、比例代表選挙の結果にかかっています。

 そのために全党的にも、ブロック・都道府県ごとにも、現在の党組織の力量を、もっとも効果的、効率的、積極的に、比例代表選挙に集中できる選挙態勢をとることが必要であります。そのために、「すべての小選挙区での候補者擁立をめざす」という従来の方針を見直して、つぎの方針でたたかうことを幹部会として提案するものです。

 第一に、小選挙区での立候補は、「参院選比例得票を8%以上獲得したところで、日常的・系統的に活動できる力量ある候補者を擁立できる選挙区」と「各都道府県で一選挙区以上」で候補者を擁立してたたかうことをおよその目安にして、都道府県の自主的判断で決定するようにします。候補者を擁立する小選挙区では、いかに比例代表選挙での前進に貢献するかを最優先の任務にしつつ、小選挙区でも得票を伸ばし議席を争う力量をつけることをめざして奮闘します。候補者を擁立しない選挙区では、比例代表一本のたたかいで前進をはかることにすべての力を集中します。

 第二に、比例代表選挙の候補者は、ブロック全域で活動する候補者にくわえて、全県からそれぞれの県で日常的な活動をおこなう候補者を擁立するようにします。これは、小選挙区との重複も含みます。それは、日常的に、それぞれの県で比例代表選挙のとりくみを強化するうえで大きな力になるとともに、選挙本番でも、小選挙区に立候補することで確保できる候補者届出政党カーを、比例代表選挙での支持を訴えるために全県的に活用できるようになるなど、比例代表選挙を全県的に展開する保障となります。

現在の党の力量をリアルにとらえ、比例での前進を必ずかちとるための方針

 この方針の見直しは、今回の参議院選挙の結果をふまえて、現在の党の力量をリアルに検討したうえでの提案であります。

 小選挙区・比例代表並立制が導入されて以降の四回の総選挙では、わが党は、全小選挙区ないし、ほとんどの小選挙区で候補者を擁立してたたかい、候補者を先頭にした奮闘は、比例代表での得票を積みあげるうえでも、大きな貢献となりました。候補者としてその先頭に立った同志たちの奮闘に、あらためて敬意を申し上げたいと思います。

 しかし、今後を展望しますと、「すべての小選挙区での候補者擁立をめざす」という従来の方針のままでは、「支部が主役」の党活動を指導・援助する機関体制、「比例を軸」にした選挙体制、多額の供託金没収などによる財政圧迫などの点で、党組織と党活動に過重な負担をかけ、比例代表選挙で前進をはかるうえでも、総合的に考えてマイナスが大きいという判断をいたしました。

 もちろん、候補者を擁立しない小選挙区が大量に生まれることが、政見放送、新聞広告、選挙ハガキなど公職選挙法上の制約もふくめ、選挙戦をたたかううえでの大きなデメリット(不利な点)となることは、いささかも軽視できません。それを直視しつつ、比例代表に党の力を集中できるというメリット(有利な点)を最大限に生かして、デメリットを上回る効果をあげ、比例での前進を必ずかちとろうというのが、今回の提案であります。

 今回の措置は、現在の党の力量を考慮してのものであり、本来は、すべての小選挙区で候補者を擁立してたたかうことが、綱領路線の実現という見地からも、将来的にはめざすべき当然のあり方であります。選挙のたびごとに小選挙区での候補者擁立を増やし、やがては小選挙区でも議席獲得をはかるということを展望してとりくみを発展させるようにします。

比例選挙を日常不断のとりくみにし、比例選挙に党の力を集中する

 この方針のもとで、比例代表で前進をかちとるには、よほどの覚悟とともに、これまでの選挙戦と党活動の抜本的な立て直しをはかることが必要となります。なによりも、「比例を軸に」、「自らの選挙」にするという方針を、「支部を主役」に抜本的に強化し、国政選挙に強い党をつくるための執念をもったとりくみがもとめられます。それは全党が知恵と力をあわせて開拓すべき新しい探求課題ですが、報告ではとくに二つの点を強調しておきたいと思います。

 第一は、総選挙の比例代表選挙で前進するためのとりくみを、あらゆる選挙戦と党活動全体の中軸にすえ、文字どおり日常不断のとりくみにしていくことです。すなわち、選挙活動の日常化ということであります。

 もともとわが党の選挙方針の根本は、選挙活動の「四つの原点」(国民の要求実現、大量宣伝と対話・支持拡大、読者拡大と党員拡大、後援会活動)にもとづいて、「支部を主役」に日常の活動として選挙活動をすすめる――選挙でわが党を支持してくれる人を日常的に増やすことにあります。

 ところが選挙制度が改変されたことを重大なきっかけとして、比例代表選挙という主戦場で、一票一票を他党としのぎを削って争いながら、それを積み上げて議席に結びつけるという執念と迫力を持った日常的・系統的なとりくみが、中選挙区制時代と比べても全体として弱まってきているという現状があります。この弱点は今度の参院選でもあらわれました。選挙間際にならないと本気のとりくみがはじまらないという現状を、何としても抜本的に立て直し、比例での前進のためのとりくみを、全党をあげての日常不断のとりくみにしていく必要があります。

 すべての支部が後援会をつくり、後援会員を日常的に増やし、後援会ニュースなどを定期的にとどけ、政治的・人間的な結びつきをつよめ、その力を借り、ともに選挙をたたかうことは、選挙活動の日常化の一つの要となるものです。

 またさきに提案した「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」に全党が積極的にとりくみ、総選挙での前進のためのとりくみを日常化する一大転機にもしていくことを訴えるものであります。

 第二に、今回の新しい方針によって、比例代表選挙に、機関と幹部の力をより効果的に集中できるというメリットを最大限に生かしきることが大切であります。

 いっせい地方選挙では、全国二千近い選対をささえるために数千人という規模の非常勤の同志を結集し、それが大きな力を発揮しました。四中総決定では、この力を、参議院選挙での「支部が主役」の選挙戦の発展への援助に集中することを強調しましたが、参院選で前進をかちとった党組織の教訓の一つは、非常勤の同志もふくめて党が潜在的にもつ力をくみつくし、発揮したことにありました。

 この経験を、総選挙でさらに発展させ、これまで小選挙区の候補者とそれをささえる体制、財政の確保などに注いでいた多大な力を、「支部が主役」の選挙戦の発展のために、余さず集中するようにしたいと思います。これまで小選挙区制で立候補するためには、党組織の力の弱いところでは、たとえば専従者の一人が候補者になり、もう一人が運転手になる。そうすると専従者がいなくなり、結局、支部への指導がいきとどかないという悩みもありました。党の持っている力を今度は余さず「支部が主役」の選挙戦の発展のために集中したい。前回の総選挙で候補者を擁立しなかった選挙区で、こうした構えで前進をかちとった経験が、萌芽的ではありますが、生まれていることも、大いに参考にしたいと思います。

 国政の中心をなす衆議院選挙で、私たちがいかに党への支持を広げ、大きな議員団をつくりあげるかという仕事は、国政の民主的・革新的打開をめざす日本共産党にとって、最大の使命であり、綱領がもとめる任務です。

 ぜひこの幹部会の提起をこの中央委員会総会でもじっくり議論していただき、新しい方針のもとで、比例代表での前進をかちとるために、全党が新たな挑戦にとりくむことを心から訴えるものです。

新しい方針にそくした「供託金支援基金」の見直しについて

 なお今回の方針の見直しにともなって、第二十四回党大会で設置した「衆議院小選挙区選挙供託金支援基金」の見直しが必要になります。

 新しい方針によって、小選挙区候補者は大幅に減りますが、比例候補者は一定程度増えることになります。供託金の没収額を推定しますと、小選挙区と比例代表をあわせた没収額が大幅に減ることは間違いありませんが、それでもある程度の没収は避けられません。全党の力で総選挙候補者の擁立を支えるという「基金」はひきつづき必要であります。

 そこで、供託金支援基金の支給対象を小選挙区候補者に限定していた現行制度を見直して、比例代表選挙(重複)の候補者にも支給対象を広げることにしたいと思います。「基金」の名称もそれにふさわしく変更するようにしたい。これが幹部会としての提案です。

 今回の総選挙方針の見直しと、それにともなう「基金」の見直しは、大会決定の変更になりますが、この中央委員会総会で承認が得られれば、次期大会に報告し承認をもとめたいと思います。

選挙制度の民主的改革を訴えてたたかう

 選挙方針の最後に、選挙制度の民主的改革の問題についてのべます。

 大政党有利に民意をゆがめる小選挙区制度、憲法を蹂躙(じゅうりん)した政党助成金制度、異常に高い供託金、巨額のカネを使ったCMや新聞広告は天下御免なのに、草の根での選挙活動は不当な制限だらけ――こうした世界でも異常な不公正・反民主的な選挙制度を告発し、その民主的改革を訴えてたたかうことを、選挙の政治論戦の重要な柱にすえたいと思います。

 またこうした反民主的な選挙制度と一体にすすめられている「二大政党づくり」というキャンペーンについて、「二大政党」以外の政党を最初から有権者の選択肢から排除するというキャンペーンは、それ自体として民主政治を踏みにじる有害で不当なものであることを正面から問題にし、広く世論に訴えてたたかいます。

四、国政選挙で勝てる党の建設をめざして

 報告の第四の主題は、国政選挙で勝てる党の建設をめざすとりくみについてであります。

 国民が新しい政治の中身を探求する激動の時代を、日本共産党が主導的に切りひらくには、政治と理論の面で、そして組織の面で、強く大きな党がどうしても必要です。

 いっせい地方選挙、参議院選挙をつうじて、「選挙で勝てる強く大きな党をつくりたい」という声は、全国から共通して痛切な声としてよせられました。きたるべき総選挙にむけて、国政選挙で勝てる党の建設をはかることは、死活的に重要な課題であります。

 すべての党機関と党支部が、総選挙での政治目標の実現にみあった党員と読者拡大の目標を明確にし、その達成にむけて計画的・系統的にとりくむようにします。そのさい、党員拡大では、総選挙にむけて、すべての支部が新しい党員を迎えることを目標にとりくみます。読者拡大では、前回総選挙時を一刻も早く上回り、上げ潮のなかで選挙をたたかうことを目標に奮闘します。

 どうやってこの分野での前進を切りひらくか。大会決定とこれまでの中央委員会総会決定を前提に、今回の選挙戦の経験と教訓をふまえて、五点について重点的に提起します。

「支部が主役」――この大道を本格的に発展させる

「この道しかない」――方針の正しさは、参院選でも実証された

 第一は、「支部が主役」の党づくりという大道を本格的に発展させることです。すなわち、すべての支部が「政策と計画」をもち、国民と日常不断に結びつき、要求実現にとりくみ、党建設をすすめるという方針をゆるがず発展させることであります。

 党大会決定をうけて、「支部が主役」の党づくりの努力が強められ、一定の前進がつくられました。「政策と計画」をもった支部は、党大会時の52%から75%に前進しました。職場支部で「政策と計画」をもった支部が、「職場講座」を契機に、30%から60%に前進したことも、重要な一歩であります。

 大会を契機に、少なくない党機関が、非常勤の党員を結集するなどして、補助指導機関の確立や機関体制の充実をすすめ、「支部が主役」の活動発展へ指導を改善させつつあることも、この間の重要な前進です。

 全国の県・地区委員長からの感想では、「支部が主役」の活動に一貫してとりくんだことが、参院選のなかでも豊かな力を発揮したと、数多くのべられています。

 東京・北多摩北部地区では、文字どおり100%の支部が「政策と計画」をもち、得票目標をもち、要求活動、宣伝・組織活動にとりくんだ結果、得票を率・数ともに伸ばし、地区全体の得票率は11・3%、地区内の五つの市すべてで得票率が10%をこえています。とくに、地区が、国政選挙の得票目標を四万三千と決め、それを正面にすえ、すべての支部が自らの目標として国政選挙の得票目標をもったことが、「支部が主役」の選挙戦をたたかう大きな力となったという報告でした。

 二中総では、「支部が主役」の党づくりについて、「この道しかない」「いまの努力が必ず実を結ぶ」ということを討論をつうじて確認しましたが、そのことは参院選でも実証されました。

どうやって全党に定着させるか――党機関の援助、政治目標の重要性について

 同時に、この努力は、全党的にはまだ始まったばかりというところであり、ひきつづき全党に広げ、定着させることを本格的に追求します。

 全国の県・地区委員長からの感想では、この問題の重要性を痛感しながら、支部への指導が届かない、支部の実態がつかめないなど、多くの悩みもよせられました。その解決は、ひきつづき全党的な探求の課題ですが、この間の実践をつうじて確認された法則的方向――(1)地区委員会の政治目標を明確にする、(2)支部を励ます政治活動にとりくむ、(3)「知恵は現場にある」という立場で双方向・循環型の活動をすすめる、(4)時間をとった機関での討議・学習を重視する、(5)その党組織が持っている力をくみつくし機関体制の確立・強化をはかる――をふまえつつ、新たな前進をめざしたいと思います。

 すべての支部が、「どういう党をつくるか」という政治目標と、総選挙の得票目標、「全国は一つ」という見地での支持拡大目標を自覚的に決め、その実現のために自発性・創意性を発揮してとりくむことが、「支部が主役」の党づくりに“魂”を吹き込み、「支部が主役」の選挙戦を前進させる要になることをとくに強調したいと思います。

党員拡大に思い切って力をそそぐ――とくに職場支部、青年・学生分野について

若い世代、働き盛り世代を党に迎え入れ、世代的継承をはかることは急務

 第二は、党建設の根幹である党員拡大に思い切って力をそそぐということです。

 参院選では、全国各地で、高齢の党員が大奮闘されました。社会の高齢化がすすむなかで、高齢の党員が、長い人生経験を生かし、地域や全国各地でのつながりを生かし、条件におうじて奮闘していることの意義は、たいへんに大きなものがあります。年配の同志たちの献身的な奮闘に、心からの敬意と感謝を申し上げるものです。

 同時に、この選挙戦をつうじて、若い世代、働き盛りの世代を党に迎え入れ、党の世代的な継承と発展をはかることがいかに急務かも、痛いほど実感されました。党の世代的継承をはかるうえで、とりわけ職場支部、青年・学生分野の活動の前進と党勢拡大のために、全党が知恵と力をそそがなければなりません。

職場支部――「職場講座」を力にした変化と努力方向について

 まず、職場支部の強化についてであります。

 全国の県・地区委員長からの感想では、参院選で、職場支部がこれまでにない活力を発揮して奮闘した経験が数多く報告されました。共通して、「職場講座」が力になっている、この内容を血肉にしてとりくみの前進がはかられているという報告がよせられました。

 職場支部が集中しているある地区の委員長からは、「『全国は一つ』の立場でためらいを踏み切って支持を訴える経験が多数生まれたことは、大きな前進面であり、確信にしている点であり、党勢拡大に実らせていく宝がたくさんできた」という感想がよせられました。

 とくに、職場を基礎としたたたかいの前進によって、職場支部が元気になっているということは、この間の希望ある変化であります。非正規雇用や成果主義賃金の広がりのもとで労働者の生活と権利を守るたたかい、「サービス残業」と「偽装請負」など無法を根絶するたたかい、教育基本法改悪反対のたたかい、公務労働への攻撃をはねかえすたたかいなど、各分野でのたたかいが前進し、その先頭にたつ党への共感と信頼が広がり、たたかったところでは、職場支部が新鮮な活力を得ています。これらが、選挙戦での奮闘、党建設での前向きの変化にも、端緒的ですが実を結んでいることはたいへん重要です。たたかってこそ職場に党がつくられる、このことがこの間のとりくみの中でも確認されています。

 同時に、いわゆる「団塊の世代」が大量に退職を迎えるもとで、職場支部が全体として減少していることを、直視しなければなりません。後継者を必ず職場につくり、支配勢力の攻撃に抗して営々と築いてきた職場の陣地の灯を、何としても次の世代に引き継ぐうえで、いま、職場支部も機関もふんばりどきであります。

 「職場講座」の内容を討論した支部は、全国的に五割から六割程度です。「講座」の成果をすべての職場支部のものにする努力をつくします。党機関の親身な援助、とくに職場支部援助委員会の系統的で丁寧な援助が、重要な役割をはたしています。すべての県と条件のある地区に職場支部援助委員会をしっかり確立して、一つひとつの職場支部への援助をつよめます。

青年・学生分野――雇用と平和でのたたかいを発展させ、知的目覚めへの援助を

 つぎに、青年・学生分野のとりくみについてのべます。

 若い世代を結集する条件という点では、二つの分野でのたたかいの目覚ましい前進は、この分野の前進の洋々たる可能性を示すものであります。

 一つは、雇用問題で、若い世代が深刻な実態を勇気をもって告発し、仲間とともに労働組合をつくってたたかいに立ち上がり、全国各地で職場の現実を変える成果をかちとりつつあることです。5・20青年大集会の大成功、多くの県でとりくまれた雇用アンケートや集会・シンポジウムなど、多面的な活動が広がっています。青年・学生党員と民青同盟が、このたたかいのなかで、先駆的役割を発揮し、若者のなかでの信頼を広げています。

 いま一つ、平和問題で発揮されている若いエネルギーも素晴らしいものがあります。原水爆禁止運動で、世界大会参加者の半分を若者がしめ、世界青年のつどいに二千人が参加しました。学生のなかでも「九条の会」が広がり、東京では学生が連帯して憲法擁護の大集会を開くことも計画されています。

 こうした若者のたたかいに、党が連帯してたたかうとともに、若い世代のなかで「綱領を語る集い」――綱領と科学的社会主義を語り、日本と世界の前途を語り合うとりくみに、力をそそぎたいと思います。私たちは、ある大学で、新入党員のみなさんに集まってもらって、入党の動機を聞くということをおこないました。「何をきっかけに党に入ったのですか」ということを聞いたところ、そのほとんどは、わが党が開いた綱領、世界論、未来社会論などを語る集会に参加して、社会にも発展法則があることを知ったことに新鮮な驚きと喜びを感じ、それが入党の決意につながったとのことでした。若い世代の知的目覚めへの援助を強め、生き方への模索にこたえる活動の重要性を痛感いたしました。

 要求にもとづくたたかい、知的目覚めへの援助、社会的・人間的連帯――大会決定が提起した若い世代を結集する「三つの観点」は生きた力を発揮しています。この立場で若者のなかに飛び込み、党の総力をあげて、青年・学生支部、民青同盟への援助を強めることを心からよびかけるものです。

機関紙活動を、安定的な前進の軌道にのせる

 第三は、機関紙活動を、いかにして安定的な前進の軌道にのせるかという問題であります。

 党大会後も機関紙拡大には、全党の大きな努力がそそがれてきました。しかし、前進した月は三回あるものの、大半の月ではあと一歩というところまでいきますが、全党的には後退傾向を脱していないというのが現状です。

 そのなかでも、粘り強い努力で大会水準を上回るか、ほぼ維持している党組織も少なくありません。この中央委員会総会にむけて、私たちは、その聞き取り調査をおこないました。三つの点が教訓的でありました。

毎月、着実に読者を増勢にする支部を全党の大勢に

 一つは、毎月の前進のために執念をもやし、そのための力を集中したとりくみを、「支部を主役」に、また力持ちの党員の奮闘に支えられておこなっていることであります。毎月の前進への構えと執念ということが、まず共通した教訓であります。

 読者拡大を安定的な前進の軌道にのせる一番の基本は、毎月一部でも二部でも着実に読者を増勢にする支部を全党の大勢にしていくために、不断に力をつくすことにあります。

「しんぶん赤旗」の役割をつかみ、魅力で対話する

 二つ目は、「しんぶん赤旗」日刊紙を、すべての党員が購読し、機関でも支部でもよく読む気風を強め、「しんぶん赤旗」の役割をたえず新鮮につかみ、またそれを全党に徹底し、「しんぶん赤旗」の魅力で対話し、増やしているということであります。

 今日のメディアの状況とのかかわりでも、「しんぶん赤旗」のかけがえのない役割を、全党の共通の確信にする努力をはかりたいと思います。「二大政党づくり」のキャンペーンによる共産党締め出しのシフトを、自力で打ち破ろうとすれば、「しんぶん赤旗」を増やすことが最良の力となります。党中央としても、さきほどのべた「二重の構え」にたって、紙面のいっそうの充実、刷新のための努力をつくします。

「支部が主役」の配達・集金体制――すべての支部で確立しよう

 三つ目は、「支部が主役」の配達・集金体制の確立のために、粘り強いとりくみをはかっていることであります。

 大会時の読者の勢力を維持している地区党組織の実情を聞きますと、その大半は、地域支部を中心に、ほぼすべての支部が、「支部が主役」の配達・集金体制を確立し、たえず改善・強化のために努力していることが、共通した教訓でした。この体制を確立した党組織では、選挙戦でも、読者との日常の生きた結びつきが前進の大きな力となっています。

 「支部が主役」の配達・集金体制の大切さについて、ある地区委員長は、「これは『支部が主役』の選挙戦、党活動の土台だ。ここが崩れると『支部が主役』といってもできなくなる」とのべています。

 二中総決定では、「『支部が主役』の配達・集金体制の確立の問題は、単なる実務の問題ではありません。支部が配達・集金に責任を負っている地域や職場では、読者と結びつき、読者の要求が日常的につかまれ、地域や職場の状況がよくみえるようになり、減紙も少なく、そして読者を増やす意欲も高まってきています」とのべましたが、この体制をつくりあげてこそ、読者拡大を安定的な前進の軌道にのせる土台が築かれます。

 この努力は、全党的には、まだ支部の半数余の到達にとどまっています。これを文字どおり全支部のものにすることが、法則的な読者拡大の大道であることを強調したいと思います。

量とともに質的水準を高める

 第四は、量とともに、共産党らしい党づくりのために努力をつくす――党の質的水準を高めることであります。とくに二つの点を強調したいと思います。

政治的激動に立ち向かう政治的、理論的、思想的に強靭な党を

 一つは、国民が新しい政治を探求する激動の時代で、日本共産党が積極的な役割を発揮するためには、政治と理論に強い党をつくることが不可欠であるということであります。

 党創立記念講演会での二つの「記念講演」では、歴史的大局にたって情勢の進展をとらえること、「政治対決の弁証法」のなかで党の到達点をとらえることの重要性をのべました。日本の政治が大きな激動期に入ったいま、情勢の複雑な展開のなかで、一喜一憂することなく、ゆるがぬ世界観的な確信にたって奮闘するためには、綱領路線の学習、党史の学習、科学的社会主義の基礎理論の学習が必要であります。

 党の決定の読了が三〜四割にとどまる状況を、党の現状に即したやり方で抜本的に打開し、全党員への決定の徹底のための努力を強めましょう。

 学ぶ気風を全党にみなぎらせ、政治的にも、理論的にも、そして思想的にも強靭(きょうじん)な党をつくりあげようではありませんか。

「党生活確立の三原則」を定着させ、すべての党員が活動に参加する党を

 いま一つは、「党生活確立の三原則」――支部会議に参加する、党費を納める、「しんぶん赤旗」日刊紙を読む――を定着させ、すべての党員が参加する党づくりに力をつくすことであります。

 支部会議を定期的に開いている地域支部、職場支部では、多くのところで、支部会議そのものが、日々の生活の悩みや世の中の矛盾を出し合いながら、励ましあい乗り切る連帯と交流の場となり、「労働相談」「生活相談」の場ともなっています。そうした立場で、支部会議を大切にし、会議を週一回開くことを軸に、党員との日常的な連絡、連帯のネットワークをつくり、温かい人間的連帯にあふれた党づくりにとりくみたいと思います。

 国民のなかで広がる貧困と格差は、党員の苦しみでもあります。国民の苦難の軽減のために献身するとともに、一人ひとりの党員の直面している困難を、ともに打開していくとりくみをはかるなかで、“強い”とともに“温かい”党をつくるために力をつくそうではありませんか。

財政活動の強化、とくに党費納入率の引き上げについて

 第五に、財政活動の強化について報告します。その基本は、繰り返し強調してきたように、「財政四原則(党費、機関紙誌代、募金、節約)」にたった努力を粘り強く続けることであり、またそれが大道です。

 いま直視する必要があるのは、「財政四原則」のなかでも根幹をなす党費納入が、全党的に低下傾向にあり、今年の七月までの納入率は63%にとどまっていることです。これは、すべての党員の自覚的結集という点からも、党財政の根幹の弱まりという点からも、打開のための手だてがつくされなければならない大きな問題であります。

 この点でも私たちは、この総会にむけて、全国のすぐれたとりくみの聞き取りをおこないました。昨年の納入率でも、今年の七月までの納入率でも、七割台を維持し、機関財政で黒字になっている四道県――北海道、福島県、滋賀県、奈良県にその教訓を聞きました。つぎのような努力がはらわれています。

 一つは、財政問題を、一分野、一担当者の問題とせずに、すぐれて党機関とその長の責任の問題と位置づけて、長がイニシアチブを発揮し、毎月の常任委員会や地区委員長会議などで、必ず討議を重ね、前進のための具体的な手だてをつくしていることです。

 いま一つは、財政問題でも支部の自覚的とりくみを前進させるための援助をおこなっていることです。中央が発行している『財政活動のしおり』を討議するなど、「支部が主役」の財政活動を前進させる努力がはらわれています。

 企業・団体献金も、政党助成金も受け取らず、財政でも草の根の力に支えられていることは、わが党の清潔さと自主性を保障するものであり、わが党の誇りであります。その根幹をなす党費納入率を引き上げ、財政活動を強化するための努力を訴えるものです。

綱領を力に新たな活動の発展をはかり、総選挙勝利にむけた活動を開始しよう

 みなさん、参議院選挙での自公政権の歴史的大敗という事態を受けて、日本の政治は、新しい激動の時代に入りました。

 綱領を手に多くの国民と語り合い、綱領の示す日本改革の方針への国民の合意を広げ、綱領を力に強く大きな党をつくり、新しく開始された政治の激動的プロセスを前向きにすすめるために、全力をあげようではありませんか。

 きたるべき衆議院選挙の前進にむけた活動をただちに開始し、全党の結束した力で、今度こそ勝利をつかみとろうではありませんか。

 以上をもって幹部会報告といたします。


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