2007年9月11日(火)「しんぶん赤旗」

主張

安倍首相演説

反省の意味が分かっていない


 臨時国会が始まり、参院選で大敗した安倍晋三首相の、選挙後初の所信表明演説を聞きました。

 首相は、国民の思いや怒りにこたえていなかったこと、政治や行政に不信を招いたことへの「深い反省」に立って国政にあたっていきたいと切り出しました。しかしそのあとがひどすぎます。退陣要求に逆らって政権の座に居座り続けることを「改革を止めてはならない」ためと合理化し、消費税増税や改憲についても、これまでの方針を繰り返したのです。安倍首相は、「反省」という言葉の意味が分かっていません。

審判への開き直り

 参院選挙で自民・公明の与党を大敗に追い込んだ国民の審判は、「消えた年金」、「政治とカネ」、閣僚の暴言などの問題で国民が不信をつのらせたためだけではありません。小泉・安倍の二代の政権の弱肉強食の「構造改革」と、「戦後レジームからの脱却」や「美しい国」を掲げた安倍首相の改憲押し付けに、国民が「ノー」の審判を突きつけたものです。

 選挙後も安倍首相の退陣を求める声が消えないのも、国民が安倍政治そのものを続けさせるわけにいかないと思っているからです。安倍首相が本当に参院選の結果を受け止めるなら、いの一番にやるべきなのは自らの退陣なのに、「改革」を口実に居座り続けるとは、首相には「反省」どころか、国民の審判への開き直りしかありません。

 たしかに安倍首相の所信表明演説も、ちょうど一年前の就任直後の演説やことし一月の施政方針演説とくらべると、「戦後レジーム」の枕詞(まくらことば)に「憲法を頂点とした」という言葉がなくなったり、消費税増税に「十九年度を目途に」という目標がなくなったりと、言葉を空回りさせただけで具体化を避けた面は否めません。それは参院選の結果思うようにはいかなくなっていることの反映ですが、だからといって、国民の審判に向き合う態度はありません。

 選挙後の内閣改造からわずか一週間余りで閣僚の一人が辞任した「政治とカネ」の問題でさえ、わずか一言で済ませてしまう驚くべき態度です。

 思わず耳をそばだてたのは、安倍首相が居座り、「構造改革」や「戦後レジームからの脱却」を続けていく理由を、「わが国の将来のため、子どもたちのため」とまでいったことです。国民の審判に逆らって、国民が「ノー」を突きつけた政治を進めることがなぜ日本のため、子どもたちのためか。「構造改革」による貧困と格差の拡大が国民を苦しめ、過去の侵略戦争を正当化する「靖国」派が先頭に立った改憲が日本を世界から孤立させるのは明らかです。首相の態度は、国民の意思などまったく意に介さない、むき出しの挑戦そのものです。

居直りへの反撃こそ

 安倍首相は、所信表明演説に先立つ八日の日米首脳会談でブッシュ米大統領にインド洋での給油の継続を約束し、その後の記者会見では、そのためのテロ特措法の延長に、「職を賭して取り組んでいく」とまで発言しました。とんでもないことです。参院選挙での国民の審判には開き直って居座り続けるが、アメリカとの約束が実現できなければ退陣するというのでは、いったいどこの国の首相か。安倍首相が政権に居座り続けるのはブッシュ大統領のためだということを認めたのも同然です。

 安倍首相に政権をゆだねられないことはいよいよ明らかになりました。臨時国会の論戦で追い詰め、解散・総選挙に追い込むことが大切です。


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