2007年9月9日(日)「しんぶん赤旗」

農村の医療保険 試行錯誤

農業人口83%参加

保障範囲・負担が課題

中国


 【北京=山田俊英】中国衛生省は、格差是正政策の一つとして二〇〇三年に導入した「農村合作医療保険」が、今年六月末までに全国の県の85%で実施され、農業人口の83%にあたる七億二千万人が参加していると発表しました。陳竺衛生相が五日の記者会見で明らかにしました。来年中にはすべての県をカバーできるといいます。

 農村部の医療は一九六〇年代から人民公社が担当しましたが、八〇年代以降は公社の解体とともに医療制度もなくなりました。全国統一の医療保険制度は一九九八年から都市部に導入されましたが、農村部にはありませんでした。

 農村合作医療保険は、財源の三分の二を中央・地方の政府、三分の一を農民が負担(任意加入)して全国的な基金をつくり、各県に配分します。

 陳衛生相によると、〇四年から〇六年にかけてのべ四億七千万人が医療費の保障を受け取りました。まだ導入していない地区と比べると、実施地区の医療機関利用は外来受診で8%、入院で53%高いといいます。また、〇五年から〇六年にかけて百九万人の医師が貧困県に派遣されました。

 ただ、保障はおもに入院治療が対象で、基金の支出の83%が入院時で、外来への支出は15%しかありません。保険料を払えない貧しい農民も多く、記者会見では「小病をがまんして大病になる現象が多いのではないか」との質問が出ました。

 衛生相は「中国は途上国であり、財政水準が低い」と問題を認めつつ、今後、経済成長によって財源が増えることに期待すると述べました。

 出稼ぎのため農村を離れ、長期にわたって都市で生活する農民工にどう医療を保障するかも課題です。同相は、医療を受ける権利について雇用主を啓発し、都市の貧困者向け医療機関を農民工に開放するように求めていると語りました。


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