2007年9月7日(金)「しんぶん赤旗」
教員2万1千人増 文科省が要求
子どもへの対応 充実?
管理職強化で多忙化も
文部科学省は二〇〇八年度予算の概算要求で、二年ぶりに教員の数を増やすことを盛り込みました。「先生が事務処理に追われ、子どもと向き合う時間がとれない」という批判を受け、「教員の子どもと向き合う時間の拡充」のための施策を掲げています。子どもと向き合う時間を増やすことはできるのでしょうか。
「小さな政府」を掲げた「構造改革」で、二年間、教員の数は抑えられてきました。文科省は〇六年度、教員の千人増を求めたものの、財務省に認められませんでした。〇六年には、「行政改革」推進法が成立。「児童・生徒の減少に見合う数以上の教職員の純減」が定められたため、〇七年度予算では教員増の要求すらできませんでした。
今回、教員増を要求したのは、教育現場の悲鳴や教育条件整備を求める声の高まりを受けての一定の前進です。
文科省は、子どもと向き合う時間の拡充として、(1)教員の定数増(2)非常勤講師の活用(3)地域ボランティアの活用―の「三点セット」を掲げています。
教員定数増は、三年間で二万一千人増を求めています。全体の自然減分を差し引くと、三年間で一万四千人の純増になります。〇八年度は、百六十七億円を計上し、約七千人増を求めています。
ただその内訳は、半分以上の一万一千人が、新たに設けられた管理職である「主幹教諭」の負担を軽減し、主幹の機能を十分に発揮できるようにするという目的です。教員が増えるといっても、 主幹以外の一般教員は、「上命下服」が強まり、より多忙化が促進される可能性があります。
また、習熟度別・少人数指導の充実のために三年間で五千七百人があてられています。習熟度別・少人数授業は、教員同士の打ち合わせなどに多くの時間を割くため、教員多忙化の要因の一つになっています。このようなやり方で教員を増やしても多忙化解消に効果があるか疑問です。
二つ目の非常勤講師活用として、文科省は三年間で二百二十八億円を計上し、全国の一万五千校に配置することを求めています。非常勤講師の導入は、都道府県で行われていますが、講師の待遇が悪く、身分も不安定で、将来の保障がありません。
千葉大学の三輪定宣名誉教授(教育行政学)は「国が非常勤講師の制度を率先、乱用することは絶対にあってはならない。教員の待遇が悪ければ、子どもにとっても学ぶのにいい条件とはいえない。ILO・ユネスコの『教員の地位に関する勧告』にそむくものです」と批判します。
地域ボランティアの活用について文科省は、二百五億円を要求しています。部活動指導や学校の環境整備、登下校の安全指導などを地域の住民にボランティアで行ってもらおうというものです。コーディネーターを各学校に一人配置し、教員の要望を聞いたり、住民を組織することにあたってもらうことになります。
文科省の掲げる教員多忙化解消の「三点セット」について、三輪名誉教授は「文科省の案では、国民の血税を使っての措置が、教員の多忙化解消につながらず、教育の悪化につながりかねません。教育予算を抜本的に増やし、少人数学級を行い、つまずいている子どもにきちんと指導できる時間を保障することこそ必要です」と指摘します。