2007年9月4日(火)「しんぶん赤旗」

主張

農水相辞任

安倍首相の責任こそ問われる


 遠藤武彦農水相が辞任しました。

 わずか八日間の在任、農林水産省では三カ月間に大臣が三人もかわるという異常事態で、安倍政権の一年足らずに大臣の交代は五人目です。「政治とカネ」の問題に対処する能力も、最低限の倫理観も欠く安倍自公政権に、国民は参院選で厳しい審判を下しました。選挙後の内閣改造でも、安倍内閣は何も変わっていないことが鮮明になっています。

清潔求めても得られぬ

 それにしても遠藤氏の辞任会見には、多くの国民があきれさせられました。組合長を務めた農業共済組合の補助金不正は「法的に問題ない」と開き直り、「今後の国会運営を考えれば申し訳ない状況になった」から辞めるというのです。反省などどこにもありません。

 この補助金不正はそんななまやさしい問題ではないのです。多数の農家の名前を勝手に使って加入者を水増しし、国の補助金を不正に受け取る詐欺的な行為を行い、しかも会計検査院の指摘を受けた後も長期にわたって返還していませんでした。

 遠藤氏は「当時の課長がやったことで自分は指示していない」と抗弁していますが、これは通用しません。遠藤氏は、この組合の“飾り物”の組合長であったわけではなく、報酬も受け、実質的なトップとしてふるまっていたからです。「しんぶん赤旗」の調査では、補助金の不正はこの一件だけでなく、十数年前から「上からの指示で」くりかえされていたという疑いがあります。

 農水省の補助金の不正受給をしていた組織のトップが、当の農水省の大臣になっていたという構図ほど、行政の公正を深く傷つけるものはありません。これは大臣を辞めればそれで済むという問題ではありません。遠藤氏自身が説明を尽くし、内閣としても事実の解明に当たり、行政組織の問題や政治家の関与について徹底して明らかにしなければ、国民の納得を得られません。

 安倍首相にはそんな姿勢はまったくみられません。遠藤氏の辞任をもって「一件落着」とし、この問題で政権が被る打撃をいかに小さく抑えるかという「保身の論理」以外ないのです。松岡利勝、赤城徳彦の過去二代の農水相をかばい抜いたときとまったく同じで、その反省のかけらもありません。

 同日、坂本由紀子外務政務官も会議費の多重計上を認めて辞任しました。そればかりか「次の辞任候補」と目される閣僚、政務官リストが取りざたされるありさまです。

 組閣にあたって閣僚候補者の身辺を洗う「身体検査」をいくら念入りにやろうと、清潔な政治家など求めても得られないのです。過去、幾多の疑惑で、党利党略を先行させ、真相解明を拒絶し、問題のすりかえと疑惑隠しで応じてきたことの毒が総身に回り、企業・団体献金と政党助成金にまみれて、自民党の腐敗は骨がらみになっています。まさに「末期的症状」(日本共産党の市田忠義書記局長)といわざるをえません。

「任命責任」とは

 安倍首相は遠藤氏の辞任を受けて「任命責任は私にある」とのべました。こんな空虚な言葉だけで逃げを打つのは許せません。任命責任をいうなら、首相に求められるのは自らの責任を明らかにすることです。首相の居座り自体が諸悪の根源なのであり、いくら閣僚の首をすげかえようとも国民の信頼は回復しません。

 来週から国会がはじまります。日本共産党は安倍首相の責任を真正面から、徹底して追及していきます。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp