2007年9月3日(月)「しんぶん赤旗」
安倍首相の訪印
「拡大アジア」構想 パール判事の長男との面会
東南アジア紙が批判・懸念
安倍首相が先のインド訪問(八月二十一―二十三日)の際、国会演説で日米豪印の四国同盟による「拡大アジア」構想を提唱したり、東京裁判のパール判事の長男と面会したのに対し、東南アジアの新聞が批判や懸念を表明しています。
インドに鎖かけようと
シンガポール紙聨合早報八月二十九日付は、黄彬華・同紙元論説委員の「安倍氏はインドに向かって『アジアの自由と繁栄の弧』の鎖をかけようとしている」と題する論評を掲載しました。
安倍氏がいう「拡大アジア」は既存の概念を超えた地理的にも当てはまらない言葉だと指摘。中国は含まれず、日本が米国、豪州、インドと「四国戦略同盟」を形成して「中国の興隆をけん制する『大包囲網』とみなされている」と述べています。さらに、「安倍外交」の基本には「日米同盟関係の強化」という目標があると指摘しています。
黄氏は、「拡大アジア」構想は新しい考えではなく、日本がかつてインドとオーストラリア(豪州)を東アジア共同体に参加させるよう主張し、今度はこの両国を米国との「四国戦略同盟」建設に丸め込もうとしているにすぎないとしています。
歴史を覆す狙い指摘も
また、安倍首相が東京裁判でA級戦犯全員の無罪を主張したパール判事の長男と会い、「日本の国内法によれば、A級戦犯は戦争犯罪人ではない」との自らの国会答弁を正当化しようとしたと厳しく批判。「東京裁判の判決に少数意見を表明したパール氏を利用したり、歴史を覆すために国際的な力を借りようとしても、逆に日本は国際的にさらに孤立するだけだ」と結んでいます。
マレーシアの星州日報二十四日付社説は、今回のアジア歴訪が米国のアジア政策が転換する可能性があるもとでおこなわれたと指摘しています。そのなかで、中国を除く「拡大アジア」構想が提起されたことは、アジアで力の空白が生じた場合に備え、米国による強力な軍事的存在の継続が欠かせないとする立場からアジア太平洋地域での「均衡維持」をねらう意図があると分析しています。(宮崎清明)