2007年8月30日(木)「しんぶん赤旗」

軍国主義、ファシズム、ナチズムとは?


 〈問い〉 軍国主義、ファシズム、ナチズムという用語は、どう使い分けられているのですか? (東京・一読者)

 〈答え〉 「軍国主義」とは、政治・経済・文化のあらゆる面で全国民を侵略戦争やその準備に動員する体制とそのイデオロギーを表す用語ですが、そのあらわれ方は国によって違い、それぞれ特徴があります。戦前の日本の政治体制は、その意味で軍国主義そのものでした。

 「ファシズム」の用語は、その発祥の地であるイタリアだけでなく、暴力的・専制的な政治支配を表す用語として、広くもちいられています。ドイツのナチズムも「ドイツ型のファシズム」と表現されることがあります。1930年代によびかけられた「反ファシズム統一戦線」も、第2次世界大戦の火つけ役となったドイツやイタリアなどのファシズムと侵略戦争の危険に対抗するためによびかけられたものです。

 「ファシズム」が一般的な用語となったのは、イタリアが1922年というもっとも早い段階で、ムソリーニを総裁とする国家ファシスト党がクーデターで支配を確立し、25年以降一党独裁体制をうちたて、そのすさまじさを世界にみせつけたことによります。その後、ドイツやポルトガル、スペインなど、似たような暴力的・専制的な政治支配を表す言葉として使われていきます。

 「ナチズム」は、ヒトラーを指導者とするナチス(国家社会主義ドイツ労働党)によってつくられたドイツのファシズムをさします。ナチスは、テロとクーデターなどをくりかえし、1932年11月の総選挙で第1党となり、33年ヒトラー首班の連立内閣を組織し、共産党の非合法化、さらに社会民主党など他の政党を解散し、一党独裁体制をうちたてました。ゲシュタポ(秘密警察)と強制収容所による残酷な弾圧、議会制度の廃止、極端な人種的排外主義と侵略政策などを特徴としています。

 これにたいして戦前の日本では、1931年の中国侵略戦争開始以降、軍部が発言力を拡大するなかで、軍国主義が強化されました。そして、1940年には日独伊三国同盟を結び、せまりつつある太平洋戦争にそなえて、大政翼賛会発足をはじめ侵略戦争推進のための国民動員体制をつくりあげました。

 しかし、日本の軍国主義体制もファシズムの一種か否かについては議論が分かれています。それは、イタリアとドイツの場合と日本の場合は、大きく異なっていることがあるからです。イタリア、ドイツと日本では、民主主義、議会制度の発展の度合いが違っていて、ムソリーニ、ヒトラーが政権を握るのは、テロやデマゴギーなどの暴力がありますが、それと並行して国会で多数を握るという経過をたどりました。

 これにたいして日本では、天皇が絶対的な権力を握っていて、最初から議会の権限が制限されており、ファシズム政党が政権を奪取するという経過をたどっていません。また、天皇制権力は、独占大企業とともに、封建的な性格の強い地主勢力を基盤にしていたという特徴もあります。(喜)

 〔2007・8・30(木)〕


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