2007年8月28日(火)「しんぶん赤旗」

安倍改造内閣

顔ぶれから見えるもの


 参院選での歴史的大敗を受けて「人心一新」を掲げた安倍晋三首相の内閣改造。しかし、本来退陣すべき首相が居座ったがために、国民の審判になんら応えない、清新さも何もない顔ぶれとなりました。


中枢に改憲派ずらり

憲法改悪

 自民党が参院選公約のトップに二〇一〇年の改憲発議を掲げながら、参院選で歴史的大敗を喫したことは、改憲を中心とした安倍首相の「戦後レジーム(体制)からの脱却」に、国民が「ノー」の審判を示したものでした。

 ところが、今回の組閣では、改憲と侵略戦争正当化を主張する「靖国」派の日本会議国会議員懇談会の特別顧問を務める麻生太郎氏を党運営の中心である幹事長に起用。内閣の中枢にも自民党新憲法草案をまとめた与謝野馨官房長官など改憲派を多数すえるなど、「戦後レジームからの脱却」に反省の色はありません。

 また、安倍首相を含め十八人の閣僚のうち十二人が日本会議国会議員懇談会など「靖国」派議連に所属。教育再生担当首相補佐官には安倍首相の盟友・山谷えり子参院議員が留任しました。侵略戦争を正当化し、戦前の秩序の復活を目指す「美しい国」路線に固執する姿勢も明瞭(めいりょう)です。

 参院選での惨敗を受け、政局対応と総選挙へ向けた挙党体制づくりの要となる幹事長には、党内から「野党との付き合いが薄く、少数派閥の麻生氏には荷が重い」という声も出ていました。しかし、この間、「安倍カラー」を前面に押し出す“政権運営”で、首相が「最も信頼」してきたとされる盟友・麻生氏の起用にこだわったのです。

 改憲推進という点でも麻生幹事長が“要”です。改憲手続き法が成立した段階で、世論に挑戦して政党レベルの改憲論議を本格化させる狙いがあります。

 舛添要一厚労相は自民党新憲法草案作りで与謝野氏を補佐し、現在も改憲手続き法の成立を受け新たに党内に設置された憲法審議会の会長代行です。

 また、十七人の閣僚のうち五人が今年三月に中曽根康弘元首相を会長として結成された「新憲法制定議員同盟」の役員を務めています。

消費税増税派が増加

「改革」格差

 「成長を実感に」を掲げ、「構造改革」のスピードアップを参院選で訴えて大敗した安倍内閣は、「改革」に関係する甘利明経済産業相、大田弘子経済財政担当相、渡辺喜美金融・行革相ら閣僚を軒並み留任させました。

 参院選結果が示したのは、増税や社会保障改悪など、貧困と格差を助長する悪政を推進してきた自民・公明連立政権への国民の審判でした。

 しかし、留任した閣僚の顔ぶれを見るかぎり、安倍首相がみずから掲げる「改革」に反省すべき点がなかったと考えていることは明りょうです。党役員の方でも、石原伸晃政調会長が、「規制改革や構造改革は決して否定されたわけではない」とのべました。

 自民・公明政権がめざす「構造改革」の内容を示すのは、今年六月に閣議で了承された「骨太の方針2007」です。その中心は「成長力の強化」「歳出削減」で、今後五年間で社会保障関係費の伸びを国と地方の合計で約一・六兆円抑制することを明記。地方を除く国の分だけで医療や介護、生活保護などの自然増分を毎年二千二百億円ずつ抑制していく計画です。

 留任した大田経済財政担当相は参院選後の七月三十一日の記者会見で「困難があっても(歳出改革方針を)守っていく」と表明。就任後の会見でも「改革に停滞は許されない」とのべるなど、方針を変えることは一切考えていません。

 また、参院選での大敗を受け、消費税増税の先送りの議論もある一方で、安倍内閣には、新たに与謝野馨官房長官や額賀福志郎財務相ら消費税増税論者が増えました。額賀財務相は、就任会見でさっそく「消費税を含めた形で、いろんな議論をしていくことは結構なことだ」とのべました。

 安倍改造内閣が、「歳出削減」に集中的にとりくむ構えをみせながら、消費税増税についてどのような判断を下すのか。厳しく問われています。

同盟強化推進の“実績”

日米関係

 安倍新内閣にとって九月から始まる臨時国会での最重要課題は、十一月一日に期限切れを迎えるテロ特措法の延長問題です。「対テロ」戦争を口実に、米軍支援のため海上自衛隊の補給艦などを五年九カ月もの長期にわたってインド洋に派兵している根拠法です。

 新内閣の防衛相、外相の顔ぶれをみると、日米同盟強化で“実績”を重ねてきた閣僚経験者を据え、米国の延長要求になんとしても応えようとする布陣になっています。

 防衛相になった高村正彦氏は、小渕内閣の外相としてアジア太平洋地域での米国の戦争に参戦する周辺事態法(一九九九年)を成立させました。

 イラク戦争では、開戦前の段階から「日本は支持する以外の選択肢は考えられない」(二〇〇三年三月二日)と主張。米国が開戦を強行した三月二十日には「最後の手段としてアメリカの下した判断に対し、理解し支持する」(衆院本会議)と表明しました。イラク特措法を強行した特別委員会の委員長も務めました。

 外相に就任した町村信孝氏は、小泉内閣時代にも外相を務め、関係自治体・住民が強く反対している在日米軍再編の日米文書(〇五年十月)を合意し、推進してきた当事者です。

 また、米兵に性暴力を受けた女性の「一日も早く基地をなくして」という訴えに対し、町村氏は「米軍あるいは自衛隊があるからこそ日本は平和」と真っ向から反論(〇五年七月)。同県にある沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した事故の際にも「(米兵は)操縦技術が上手だったのかもしれないが、よく最小の被害でとどまった」(〇四年十月)と発言し、いずれも県民から強い非難を浴びました。

 両氏に共通しているのは、国民世論に逆らっても、あくまで米国を擁護してきた“実績”―。こうした姿勢で、テロ特措法延長や在日米軍再編を強行すれば、国民からのいっそうの批判は避けられません。


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