2007年8月20日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

雨水浸透ます


 雨水を下水に流す従来のやり方では、コンクリートで覆われた都市部で、少しの雨でも水害の原因となります。雨水を土中に浸透させる「浸透ます」は、都市型水害から守る上でも、地下水やわき水を豊かにし、清流を取り戻す上でも有効です。東京都小金井市と、大阪府茨木市の取り組みを紹介します。


清流を取り戻す

住宅の半数に設置

東京・小金井

地図

 東京都小金井(こがねい)市は、雨水浸透ますの設置件数が一万一千九百六軒(二〇〇七年七月三十一日現在)、浸透可能家屋軒数に対する設置率は49・8%を誇り、ドイツ、スイスの各都市の設置率を上回り、〇一年には第三回日本水大賞グランプリを受賞しました。

がけにはわき水

 「土地の人はなぜそこを『はけ』と呼ばれるかを知らない」というくだりで始まる大岡昇平の小説『武蔵野夫人』。小説に登場する「はけ」は小金井市内を東西に走る「がけ」のことで、「はけ」のたもとにある神社や民有地、緑地、都立公園内にはわき水が何カ所もあります。

 市内の南側に隣の国分寺市内の湧水(ゆうすい)群を源流とする野川が流れ、市民の心を和ませてくれています。

 豊かな環境に恵まれた小金井市が、浸透ますを増やすきっかけとなったのは、下水道の整備、農地の宅地化、道路の舗装などで都市化が進み、地下水や湧水が減少したことでした。

 一九八六年、「小金井市式多孔型雨水浸透ます」を考案。その後、浸透実験を公共施設で開始し、実用化し、水道業者の協力も得て進めてきました。地下水の涵養(かんよう)と湧水の復活をめざし、マンションなどの大規模な建物の開発について浸透ますの設置の指導を始め、「宅地開発指導要綱」でも設置を求めています。

 九三年に小金井市は、東京都の助成制度を生かし四十万円を限度額として八八年九月以前の建物すべてに雨水浸透ます設置の助成を開始し、継続しています。

 市民の地下水や野川に清流を戻す活動は活発で、八七年には「河川シンポジウム」を開催、野川の水質調査の実施、「野川クリーン作戦」も行われています。環境基本条例や環境基本計画の策定を市民が参加し議論し、この中に地下水と湧水を保全する条例の施策も盛り込まれました。

 最近では、武蔵小金井駅南口商店会が中心となって、地蔵様のある境内に深井戸を掘り、市民が利用できるようになりました。

保全条例を制定

 一方、小金井市議会でも、かねてから日本共産党は雨水浸透ますの公共施設や民間住宅への普及、流域下水道の委託料の軽減などを求めてきました。他の会派からの提案をうけ、地下水の涵養と地下水脈の分断の防止、湧水の回復を目的とした「地下水と湧水を保全する条例」を共同で議員提案し、全会派一致で制定しました。条例制定にあたっては、市民や専門家の力を借り、勉強会などを継続し制定したものです。

 この条例が効果を発揮し、「はけ」の近くのマンション建設、地下を深く掘る工事については、近くに地下水の影響はないかを調査することを事業者にお願いすることや専門家会議を開催し、地下水の状況を常に調査できるようになりました。都市のオアシスを大切にする市民の願いが一つ一つ前進しています。

 今後は流域の自治体との共同の対応が大切です。(森戸よう子市議)


地中にしみ込み 都市水害防ぐ

ダムに頼らない治水へ

大阪・茨木

地図

 大阪府茨木(いばらき)市では、建築に当たって雨水浸透ます・貯留槽といった雨水流出抑制施設の普及・協力依頼に取り組み、二〇〇三年四月一日から設置者に対して補助制度を設けています。

内水被害減らす

 この目的は、急激な都市化による都市型水害、特に初期の合流式による下水道整備が行われた中心市街地で多発する内水被害に対して、(1)下水道管や水路への流出抑制(2)土地の保水力活用によりヒートアイランド化を防ぐ一助とする(3)雨水を散水に利用し、雨水利用をはかる―ことです。

 補助制度の中身は、別表の通り。市が把握している〇六年度末までの設置実績は、雨水貯留槽で三十六基(〇四年度)、二十二基(〇五年度)、十八基(〇六年度)。雨水浸透ますでは、百十一基(〇四年度)、三十六基(〇五年度)、四十基(〇六年度)となっています。

 日本共産党市議会議員団は、都市型水害、内水被害根絶のため安威川(あいがわ)の堆積(たいせき)土砂のしゅんせつや支流の河川改修、公共下水道と水路改修計画の見直しや雨水浸透・貯留施設設置の促進などの対策を要求してきました。

 先進の東京都小金井市を視察して、その成果を資料で示し、市民参加の下に雨水流出抑制施設設置を求めました。雨水浸透ます・貯留槽設置補助は、その主張の一部が取り入れられたものといえます。

市民運動広がる

 こうした内水対策を重視して取り組んできたことには理由があります。茨木市では市北部の安威川上流に大阪府が事業主体で「安威川ダム計画」が進められています。しかし、「浪費型公共事業」の典型として大きな批判がわき起こっています。

 市民運動では「茨木・箕面北部丘陵地域の自然を守る市民会議」が「安威川ダム計画はいったん、凍結してダムに頼らない利水と治水対策の検討を」と、ダムに代わる内水対策の具体的内容を示した、四万人を超える「安威川ダム見直し署名」にも取り組んできました。こうした世論と運動を背景に、大阪府は「見直し」を表明しましたが、結局、ダムの利水計画を縮小しただけで、ダム建設を強行しようとしています。

 もともと安威川ダム計画は、一九六七年の北摂大水害をきっかけとして計画されたものです。「市民会議」では当時の洪水被害の資料を分析し、北摂大水害の浸水被害のほとんどは内水被害によるものと、支流の茨木川、勝尾寺川などの破堤によるもので、安威川の決壊による直接の浸水は全くなかったことを明らかにしました。

 ここから導き出される結論は、上流のダム建設による治水ではなく、流域全体の総合治水こそ、下流の都市型水害防止にもっとも有効だということです。

 この間の設置補助制度実現は、一歩前進とはいえますが、行政が設置数目標を持ち、実現するための具体的手だてをうっていくという点では非常に不十分です。

 学校や都市公園などの公共施設の地下に雨水貯留施設建設を進めたり、市街地のマンションなど大型開発時の大型雨水貯留施設設置を義務づけたりすることなど、より効果的な対策が必要です。

 引き続き、安威川ダム計画は中止し、ダムに頼らない総合治水対策推進のため、市民と力を合わせてがんばります。(朝田みつる市議)

表

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp