2007年8月19日(日)「しんぶん赤旗」

自民・武見氏落選 医師会に衝撃

会員4割 さじ投げた

小泉「構造改革」への反発


 自民党の強力な支持基盤を誇った日本医師会(約十六万四千人)が揺れています。日医の政治団体・日本医師連盟(委員長・唐澤祥人日本医師会会長)が、参院比例区で推薦した自民党の武見敬三氏(厚生労働副大臣)が落選。この「まさか」(西日本の前県医師会長)の事態がなぜ起きたのか。選挙戦の中心を担った医師会幹部たちの話から見えてきたのは、小泉政権以来の医療切り捨て政策にたいする怒りの深さです。(内藤真己子)


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(写真)日本医師会と日本医師連盟が同居している日本医師会館=東京都文京区

 今回の参院選挙で日医連は百万票の得票目標を掲げ、武見氏の後援会員獲得にあたって「従来の単なる後援会会員の獲得にとどまらず……第一線に立ち、先兵として活動し得る会員の獲得を」と全国に指示。会員数は八十五万六千人余にもなりました。ところがフタを開けてみれば、得票数はその二割程度の約十八万七千票でした。三年前の参院選で推薦した比例候補の得票より、六万票以上の後退です。この結果について日医連の唐澤委員長は、年金問題、閣僚の不適切発言、事務所費問題による自民党への逆風と、日医連の足並みの乱れが原因とのべました。

自民に対する考え方が変化

 しかし選挙戦の最前線で指揮をとった幹部たちは、敗北の最大の要因が「小泉『構造改革』への反発にある」と口をそろえます。

 「今回の選挙は医師会の四割の先生がさじを投げた。私は執行部の一員として一生懸命やったが、面と向かって『今回は(選挙運動を)やらないよ』という人が何人もいた。だからこの結果は当然だ」。同連盟のある執行委員の実感です。

 「国民は小泉『構造改革』の負の遺産で苦しめられている。東京一極集中、大企業中心の政策の誤りを肌で感じている。医師も安心・安全の医療ができず、医師不足で地方の病院・診療所の閉鎖が相次いでいる。そこへ(与党は)また診療報酬を引き下げ、医療制度改革法を強行採決した。武見氏は同法に付帯決議を付けたり、産科の無過失補償制度の創設へ動くなどしたが、それくらいの実績ではとても間に合わない」。自公政府の一連のやり方が今回の事態を招いたと分析します。

 日医連の常任執行委員の一人も言います。「政府・与党は昨年の『骨太の方針』で、社会保障予算の一兆六千億円の削減を決めている。これではどうしても医療費が下がり医療は崩壊する。このことへの不満が会員にあった。この種をまいたのは小泉(前首相)さんだが、安倍(首相)さんも共通する政策だ」。そのうえで「自民党に対する会員の考え方が変わってきている。医師会の三分の二はそっぽを向いている。どこに入れたのか聞いてみたいくらいだ」と語りました。

 東日本の県医師会長も務めた日医連の役員は「小泉政権を引き継いだ安倍さんは格差是正もしないし、いろんな問題が起きた」とのべ、「(武見氏の支持を求め)私もかなりがんばって相当話したけど、自民党へのアレルギー、反発があった」と、お手上げ状態だったことを明かしました。

日医連内に足並みの乱れ

 また小泉「構造改革」への対応をめぐる日本医師会内の対立も影響しました。昨年四月の日本医師会会長選挙に、小泉「改革」路線に反対し、政権と距離を置く前植松治雄会長に対抗し、現唐澤会長が「自民党との関係回復」を訴え立候補。武見氏が強力に支援した唐澤氏が当選しました。その対立が尾を引き、大阪の医師政治連盟が武見氏の推薦を見送るなど、近畿の足並みは大きく乱れました。

 日本医師会の元最高幹部は、今回の事態について「自民党は心を入れ替えよ、というのが国民の声。しかし自民党は分からないと思う。安倍さんにそんな力はないでしょう。実際、来年度予算編成でも社会保障予算削減の方針は変えていない」と語ります。

 年間十七億円を超える資金を集め、組織とカネで自民党を支えてきた日医連。今回の推薦候補の落選は「自民、組織票に衰え」といわれる「象徴」(「朝日」十一日付)ともなっています。

 関東地方のある県の元医師会長は、選挙結果を振り返り、日本医師会が自民党の支援団体の枠から抜けることを提言します。「いまはもう昔のようなやり方は通用しない。今後の医師会は、患者である国民とひざを交えて議論しながら政策をまとめ、どの党に向けても発信していくべきだ」


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