2007年8月17日(金)「しんぶん赤旗」

「慰安婦」決議採択の米

「靖国」派の対応を注視


 日本軍の「慰安婦」問題で米下院が日本政府に公式な謝罪を求める決議を七月末に採択した後も、米国ではこの問題への追及・監視が衰えていません。

 米誌『タイム』(電子版)は十五日、靖国神社を参拝しなかった安倍首相について「日本の安倍首相、神社に現れず」と題して伝えました。「故意に中国や韓国などの隣国を挑発した」前任の小泉首相よりも「個人的にはより保守である政治家」の安倍首相が参拝しなかったのは「前向きな動き」だとしながらも、靖国神社は「日本とアジア諸国の関係においてとげ」となってきたと、この問題を注視しています。

 日本の「靖国」派外交の破たんを象徴的に示したのは、米下院が七月三十日に採択した「慰安婦」問題で日本政府に公式な謝罪を求める決議でした。日本の過去の侵略戦争を正当化し続ける「靖国」派を厳しく批判し、日本政府に歴史の真実に向き合うことを求めました。

 決議採決直後の議員たちの新聞発表でもそのことが端的に語られています。

 「罪のない多くの若い女性たちが朝鮮半島から連行され、言い表せない最悪な犯罪に苦しみ、人生を破壊された。謝罪はこの痛みを元に戻すことはできないが、被害者にとってその政府が過去の誤りの責任を受け入れたと知ることは重要である」(共和党のビト・フォセラ議員)

 「慰安婦に関する歴史の事実の正確さを日本は棚上げし続けている。日本皇軍が若い女性たちを性奴隷にしたことについて、日本政府がしっかりと認め、謝罪し、歴史の責任を明確であいまいでないやり方で受け入れない限り、正義は果たされない」(共和党のクリス・スミス議員)

 ペロシ下院議長も、決議の採決を歓迎。「米下院は真実と認知を求めてたたかう慰安婦を支持する」と述べ、米議会で証言した元「慰安婦」をウソつき呼ばわりする「靖国」派の主張をけん制しました。

 本会議での採択の際、反対を表明した議員は一人もいませんでした。それどころか、外交委員長のラントス議員(民主)は「靖国」派の国会議員の米紙への意見広告に言及。「慰安婦」にされた被害女性を責める「靖国」派の主張に「吐き気を催す」との強い嫌悪感を示しました。ホロコーストの生き残りである同議員は、ナチス・ドイツの戦争犯罪を認め、後世に伝える努力を続けるドイツと比較し、日本は「歴史の健忘症を推進している」と指摘しました。

 「慰安婦」の強制はなかったという発言で国際的批判を受けてきた安倍首相は、決議採択について「二十世紀は人権が侵害された時代だった。二十一世紀は人権侵害のない、世界の人々にとって明るい時代にしていきたい」と述べました。

 決議を提出したマイク・ホンダ議員(民主)は一日、「二十世紀は戦時の人権の残虐行為で満ちている。これらの残虐行為を受け入れてこそ、われわれは今日の諸国に共有の人権基準を順守するように迫ることができる」と表明し、安倍首相に行動を迫りました。

 同議員は、「われわれがお互いに間違いを指摘し合い、教訓を共有するときに諸国間の強固な友情もまた築かれる」とも強調しました。日米同盟を重視する米国議員たちも、「靖国」派の主張を容認しないとの立場を明確にしています。(ワシントン=鎌塚由美)



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