2007年8月17日(金)「しんぶん赤旗」

シリーズ 均等待遇求めて

改定パート法実施を前に

制度活用し一歩でも改善を


 パート労働者に関する法律「パートタイム労働法」が十四年ぶりに改定されました。来年四月に施行される改定はどういうものかみてみます。


 いまパート労働者(週労働時間が三十五時間未満)は千二百万人にのぼり、その七割は女性です。賃金は平均時給で男性千五十七円、女性九百四十円で正社員と比べると非常に低く抑えられています(図)。福利厚生等でも差別があります。

 一九九三年に現在のパート法がつくられますが、パートへの差別を改善する規定がないたいへん不十分なものでした。この間、世界ではパートと正社員との差別を許さない均等待遇を法律で定める流れがすすんできたのに、日本ではパート差別が放置され、格差が拡大してきたのです。こうしたもと、貧困と格差に社会的な批判が高まるなかでの今回の改正には、大きな期待が寄せられました。

グラフ



差別禁止は一部

 しかし改定は、一番求められてきた、賃金や教育訓練、福利厚生などの差別を禁止する均等待遇を、正社員並みに働くごく一部だけにしか認めない不十分なものにとどまりました(表)。職務の内容や責任、人事異動などの範囲、契約期間がすべて正社員と同じ場合だけが対象で、国会での厚生労働大臣の答弁でもパート労働者の4、5%にすぎません。

表



 職務、異動の範囲、契約期間のどれかが正社員と違うパートに対しては、差別を禁止するのではなく、企業の努力義務にとどめました。「職務が同じで一定期間異動もある場合」には賃金を正社員と同じ方法で決めること、また「職務が同じでも異動がない」場合、「職務が違う」などの場合は、職務の内容、成果、意欲、能力、経験等をふまえて賃金を決めることを企業に努力するよう求めています。ただし、たとえ努力義務であっても、改定パート法の趣旨にもとづいて、待遇の改善をはかることが企業には求められます。地域でも職場でもたたかいをすすめていきましょう。

 国会審議で日本共産党は、均等待遇の原則を明記した独自の修正案を提出するとともに、法案が、差別の改善に実効性が弱く、格差の固定化や正社員のパート化など待遇悪化の危険性もあること等を指摘し、採決で反対しました。民主党、社民党も同様に反対しました。

 こうした国会論戦で明らかになった問題点、法案への批判を受けて、八項目にわたる付帯決議がつけられました。差別禁止の対象となる要件の「公正な運用」を求めたほか、パート法が対象としていないフルタイムパート(労働時間が正社員と同じである有期契約労働者)についても「法の趣旨が考慮」されるべきこと、パートの待遇改善を理由に正社員に「一方的な不利益変更を行うことは法的に許されないこと」などが盛り込まれています。

たたかい生かす

 今後は、国会審議や付帯決議の内容を生かし、格差の固定化や正社員の待遇引き下げを許さないたたかいとあわせ、職場で、労働条件を一歩でもよくするために役立つ部分を活用することが大切です。均等待遇の対象をよりひろく認めさせるたたかいが必要です。

 また何年働いても昇給もなく最低賃金すれすれとか、同じ仕事なのに正社員の半分や三分の一という実態に対し、少なくとも改定法では企業に仕事内容や経験などに即して賃金などを決める努力が求められます。他にも、採用の際に昇給や退職金、ボーナスの有無を文書で明示すること、正社員への転換制度や正社員募集の周知、食堂や更衣室などの利用、教育訓練などで一定の改善もあります。

 パート労働者に適用される法律はパート法だけではありません。有給休暇や産前産後休業など労働基準法の規定は当然適用されますし、育児休業なども一定の条件を満たせば取得できます。社会保険等の適用も同様です。たたかってこそ生かすことができます。職場の労働者、労働組合と力を合わせ、パート労働者の待遇改善を迫る運動をひろげましょう。

 今後は、パート労働者への差別禁止、均等待遇を盛り込んだ抜本的改正が不可欠です。参院選での自民・公明大敗をうけて、たたかいいかんで新たな展望、可能性も開けます。最低賃金の抜本的引き上げとともに、切実な要求をかかげた運動を大いにひろげましょう。(女性委員会・米沢玲子)


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