2007年8月11日(土)「しんぶん赤旗」

日本共産党創立85周年記念講演会

参院選の結果――政治の展望と日本共産党の役割

志位和夫委員長の講演(大要)


 九日に開いた日本共産党創立八十五周年記念講演会で、志位和夫委員長がおこなった講演の大要を紹介します。


 みなさん、こんばんは(会場から「こんばんは」の声)。CS通信をご覧の全国のみなさん、こんばんは。ご紹介いただきました日本共産党の志位和夫でございます(拍手)。今日は猛暑のなか、会場いっぱいの多くのみなさんが、ようこそお運びくださいました。まず心からお礼を申し上げます。(拍手)

 私は、今日は、「参院選の結果――政治の展望と日本共産党の役割」というテーマで話をいたします。

一、参議院選挙の結果について

日本共産党の選挙結果について

写真

(写真)講演する志位和夫委員長

 まず参議院議員選挙の結果についてのべます。

 私たちはこの参院選を、比例代表では五議席確保、六百五十万票以上を目標にたたかいました。選挙区では、現職区である東京での議席の確保とともに、前回の選挙で議席を失った選挙区での議席奪還をめざしてたたかいました。

 選挙戦の結果は、比例代表で獲得した議席は三議席、選挙区でも現有議席を失い、改選議席を二議席減らす結果となりました。掲げた目標が達成できず、議席を後退させたことは悔しく残念なことであり、わが党の前進に切実な願いを託して一票を投じてくださったみなさんの期待にそう結果が出せなかったことに、党中央委員会としておわびいたします。

 同時に、比例代表で四百四十万票を獲得し、前々回、前回の参院選を、得票数では上回り、これまでの陣地を基本的に維持したことは重要であります。選挙区で当落を争うたたかいにまで持ち込んだ東京、大阪、京都などで、得票の前進をかちとったことも、つぎの議席奪還への展望を開くものであります。

 今回の選挙は、わが党が前進する客観的条件をはらみながらも、それを阻む難しい条件が強力に作用した選挙でした。一方で、自民・公明政治にたいする空前ともいえる激しい国民的批判がわきおこり、その怒りの激流が野党第一党の民主党に集中するという流れがおこりました。他方で、「自民か、民主か」の二者択一を国民に迫り、日本共産党を選択肢から排除するキャンペーンが激しく展開され、自公批判の激流が共産党に流れ込むことをせきとめる最大の壁となりました。そうした二重に難しい条件のもとで、日本共産党が四百四十万票を得た意義は大きいものがあります。

 各種メディアの出口調査をみますと、従来のわが党支持者のうち約10%の方々が、今回の選挙では民主党に投票しています。そういう人たちはどういう思いでそうした選択をしたのか。私たちが印象深く読んだ、二十二歳の女性から寄せられたメールを紹介したいと思います。

 「がんばってください。今回残念ながら議席を減らしてしまいましたが、この結果は自公を、安倍総理を引きずり落とすための苦肉の策の結果だったわけで、私自身も日本共産党の政策に心から同調しておりましたが票が分散しないよう苦肉の策を講じることとなりました。しかし日本共産党を支持する気持ちは全く変わっておりません。ですから今回日本共産党を支持する方が減ったというようには決して考えないで、これからも自信を持ってがんばっていただきたいです。そうでないと心苦しくて仕方がありません。これからも応援させていただきます。絶対に憲法九条と日本の平和を守ってください」

 同様のメールは、党本部に多数寄せられました。こうした思いから、民主党に投票したわが党支持者が少なからずあったのではないかと思います。

 同時に、わが党が、この選挙で、従来にない新しい支持者を獲得したことも事実であります。これまで自民党支持者だった方から「こんどは共産党」という動きが、全国どこでもおこりました。共同通信の出口調査では、支持政党をもたない無党派層が投票した政党は、民主党51・2%、自民党16・7%についで、共産党は8・6%となっています。これは、実数にすれば百万人近い人々になります。「国民の反応が、選挙中も、選挙が終わってからもあたたかい」というのは、全国から共通して寄せられている感想でありますが、それは、有権者のこうした動向を反映したものだと思います。

 このように比例代表の四百四十万という得票は、従来のわが党の支持者をそのまま維持したというものではありません。一方で、従来のわが党の支持者が「苦肉の策」として民主党に一票を投ずるという動きもありましたが、他方では、おそらく百数十万という規模で無党派層、他党支持層からの支持を得た結果が、四百四十万という得票であります。それは激烈な選挙戦に正面から挑んだ、激しいたたかいの結果であります。

 この結果は、暮らしと平和への痛切な思いを日本共産党に託して投票してくださった有権者のみなさんのご支援、そして炎天下の猛暑のなか、また梅雨と台風による風雨のなかで、がんばっていただいた支持者、後援会員、党員のみなさんの大奮闘のたまものであり、心からの感謝を申し上げます。(拍手)

 選挙後、多くの方々から電話、メール、ファクスなどで、激励、叱咤(しった)、ご意見をいただいています。全国の都道府県委員長、地区委員長、選挙戦の先頭でたたかった候補者のみなさんからも感想と意見が寄せられております。

 参院選からくみ出すべき教訓は何か、どうしたら次の国政選挙――衆議院選挙で本格的な前進をかちとることができるかについては、内外のみなさんの意見に真摯(しんし)に耳を傾け、第五回中央委員会総会で明らかにします。

選挙結果の全体――自公政権の「歴史的大敗」をどうみるか

喜ぶべき前向きの大きな変化

 さて、参議院選挙の結果をみるさいに、日本共産党の進退だけでなく、その結果の全体を大局でつかむことが大切であります。

 今回の選挙で最も重要なことは、自民・公明の政治の古い枠組みをつづけていては、日本の前途はないとの国民の判断がくだったところにあります(拍手)。自民党は、改選六十四議席から二十七議席減の三十七議席となりました。公明党は、改選十三議席から四議席減の九議席となりました。自公両党は、前回比で約百万票、前々回比で約五百万票の得票を失いました。参議院での多数を失い、文字どおりの「歴史的大敗」となりました。

 この結果に、多くの国民は喜んでおります。残念ながら議席獲得ができなかったある候補者が、選挙結果の報告で地域をまわりますと、多くの有権者から開口一番「よかったですね」(笑い)という声が返ってくるとの報告がありました。自公政権の大敗は、それ自体としては、喜ぶべき前向きの大きな変化だということを、私は、強調したいと思うのであります。(拍手)

「逆風三点セット」だけでは説明がつかない

 なぜこういう自公政権の「歴史的大敗」がおこったか。

 一部にいわゆる「逆風三点セット」――「消えた年金」の問題、「政治とカネ」のスキャンダル、あいつぐ閣僚の暴言が原因だとする見方があります。

 もちろん、これらが国民の怒りを燃えあがらせるきっかけになったことは、疑いありません。たとえば、選挙直前に赤城前農林水産大臣の疑惑が明るみにでましたが、まともな説明はまったくありませんでした。絆創膏(ばんそうこう)姿であらわれて(笑い)、その説明すらしない。この無責任な態度、それをかばう首相の態度は、国民のごうごうたる批判をあびました。

 しかし、自公政権の「歴史的大敗」の原因を、こうした問題だけにもとめるならば、結果を見間違えることになります。彼らの敗北の根本には、自公政治の内政、外交の深刻なゆきづまりと、それへの国民の深い批判と怒りがあります。

弱肉強食の「構造改革」路線への「ノー」の審判

 第一に、暮らしの問題では、小泉・安倍政権がすすめた弱肉強食の「構造改革」路線の矛盾が噴き出しました。庶民への重税、社会保障の切り捨て、働くルールの破壊が重なり合って、貧困と格差が劇的に拡大し、一大社会問題になりました。「消えた年金」の問題が国民のあれほどの深い怒りをよびおこした根底には、三年前に自公政権が強行した年金制度の大改悪への国民の深い不信と批判があります。

 ところが、安倍・自公政権は、この庶民の痛みがまったくわからない。それには目もくれず、住民税大増税の強行につづいて、消費税増税の追い打ちをかける計画をすすめようとしました。読売新聞が選挙戦最終盤におこなった世論調査では、「投票のさいに重視したい争点」として、第一位の「年金」(65・3%)につづいて、第二位に「消費税問題」(43・8%)が急浮上しました。

 国民は、弱肉強食の「構造改革」路線には、もう我慢がならない。この路線に「ノー」の審判を下したのではないでしょうか。(拍手)

「戦後レジームからの脱却」を旗印にした改憲押し付けへの「ノー」の審判

 第二に、平和と民主主義にかかわっては、安倍首相が「戦後レジームからの脱却」をスローガンにして、過去の侵略戦争に無反省のまま、憲法改定を最優先課題として国民に押し付けようとしたことが、多くの国民の強い危惧(きぐ)と批判をまねきました。

 東京新聞は、八月五日付の「『戦後』は継承したい」と題する社説で、つぎのようにのべています。

 「首相は、『私たちが進めてきた基本路線は理解いただいた』と言いますが、強弁です。むしろ『基本路線』に危惧を抱いた有権者の方が多かったのではないか。そうでなければこれほどの惨敗は説明がつきません。例えば『戦後レジームからの脱却』…。…日本の戦後レジームは、六十年余で定着した現憲法の基本理念である主権在民、人権尊重、非戦主義に基づく民主主義体制です。ここからの『脱却』とはどういう意味なのか。…まさか戦前の体制に回帰するのではと驚きました。…一連の動きには国権強化、国家によるさまざまな分野への関与強化への志向が見られます。…米国が望むように協力して武力行使ができる憲法に変えるのではないか。『戦後レジームからの脱却』には危うさが透けて見えます」

 投票日の開票のさなかに、TBS系のテレビネットワークが投票直後におこなった世論調査の結果を放映しました。そこでは「『戦後レジームからの脱却』に共感できるか」という質問に、50・8%が「できない」と答えています。「『美しい国』づくりに共感できるか」という質問に、63・1%が「できない」と答えています。「憲法改正に共感できるか」という質問に、61・9%が「できない」と答えています。

 投票日の翌日、安倍首相が記者会見をおこないました。しかし、あの会見の中では、「戦後レジームからの脱却」という言葉は一言も出てきません。「『美しい国』づくり」という言葉も出てきません。「国づくり」という言葉はあるのですが、「美しい」がとれてしまっています(笑い)。この言葉はさすがに恥ずかしくて使えなかったようです。

 いまでは「戦後レジームからの脱却」論は、戦後の日本の体制にではなく、戦後の自民党の体質に向けられる言葉にさえなっています(笑い)。ある論者は、あまりに腐敗・堕落しきった「政治とカネ」をめぐるスキャンダルを批判して、こう痛烈に述べました。「戦後レジームからの脱却をうたうなら、自民党の最も暗い戦後レジームに踏み込む勇気が求められる」。「脱却」というのだったら、戦後体制ではなくて、自民党体制からの脱却こそ必要だ――この声がおこっているではありませんか。(拍手)

 「戦後レジームからの脱却」、「美しい国」をスローガンにして、憲法改定を最優先課題として国民に押し付ける――この安倍・自公政権の「基本路線」の危うさを国民が見抜き、「ノー」の審判を下した。ここに選挙結果のもう一つの大きな意味があるということを、私は強調したいと思います。(拍手)

日本共産党が果たした役割に確信をもって

「自民大敗の背景に、共産党の活動が大きな力になって作用した」

 安倍・自公政権を追い詰めるうえで、日本共産党の政治論戦は、少なからぬ役割を果たしました。

 わが党は、「政治とカネ」の問題での先駆的な追及、「消えた年金」問題や年金制度問題についての建設的提案などで、現実の政治を動かす役割を果たしました。

 そして何よりも、「ストップ貧困、憲法九条を守れ」をスローガンに掲げ、貧困・格差問題と憲法改定問題を「選挙戦の二つの焦点」にいっかんしてすえてたたかいぬき、この「二つの焦点」で、自公政権を追い詰めるうえで重要な役割を果たしました。

 わが党が定率減税廃止による住民税大増税を告発したことは、自公政権に打撃を与え、国民の税金を三億円も投入してウソの言い訳を満載した「政府広報紙」を出さざるを得ないところまで追い込みました。自公政権が、選挙中は隠したまま、この秋に強行を狙っていた消費税増税問題を、選挙の熱い争点におしあげるうえでも、わが党の論戦は貢献したと考えるものであります。(拍手)

 わが党は、安倍首相がいう「戦後レジームからの脱却」、「美しい国」なるものの正体が、戦前の軍国主義体制への逆行にほかならないことを、この内閣が「靖国」派――過去の侵略戦争を正当化する勢力によって構成されているという具体的事実も示して明らかにしましたが、これらのスローガンの危険な正体は、多くの国民に見抜かれる結果となりました。

 公明党の果たしている「悪政戦犯」としての役割を正面から批判した政党は、日本共産党だけでありました(拍手)。私たちは、公明党の役割について、「自民党の暴走にブレーキをかけるふりをしながら、アクセルを踏んでいる」と批判しましたが、このことは広い国民の共通認識となりつつあります。選挙後、公明党の幹部自身もつぎのようにのべたと報じられました。「暴走機関車に乗り込み、ブレーキをかけていたつもりだったが、国民からは一緒に石炭をくべていると思われていた」

 元防衛庁防衛研修所第一研究室長の前田寿夫さんは、選挙後、つぎのようなメッセージをよせてくださいました。

 「今回の選挙で自民党が大敗を喫した背景に、貴党の活動が大きな力となって作用したことは、疑う余地がないと思われます。それにもかかわらず貴党の議席数が伸びなかったことは、まことに残念に思われます。しかし、今回の選挙を通じて蓄積されたエネルギーはかならずや今後の飛躍に生かされることと信じます」(拍手)

 ぜひこの期待にもこたえたいと思います。

激動の時代の扉を開くうえで、政治論戦が一定の貢献

 昨年一月の第二十四回党大会決議に、私たちはつぎのように書き込みました。

 「さきの総選挙で、小泉・自民党は、郵政問題一本に争点をしぼり、自らの失政と悪政を覆い隠すという、国民をあざむく方法で、危機におちいった自民党政治の延命をはかる戦術をとった。…しかし、それは自民党政治の一時の延命になっても、この政治のもつ異常な特質と国民との矛盾、世界の流れとの矛盾を解決するものではない。うそとごまかしが明らかになれば、政治の大きな激動はさけられない」

 いままさに、「うそとごまかしが明らか」になり、「政治の大きな激動」がはじまりました。私たちは、この激動の時代の扉を開くうえで、日本共産党の政治論戦が一定の貢献をしたことに確信をもって、選挙戦で掲げた公約の実現のために全力をつくす決意を表明するものです。(大きな拍手)

二、新しい政治プロセスと日本共産党の役割

国民が新しい政治の中身を探求する、新しい時代がはじまった

 つぎに今後の日本の政治の展望と日本共産党の役割について話したいと思います。

 今回の選挙で、安倍・自公政治の基本路線にたいして「ノー」という審判は下りましたが、それに代わる新しい政治はなにかという問題について、国民が答えを出したわけではありません。国民の選択が明らかになったわけではありません。

 今回の選挙では、民主党が大幅に議席を増やしましたが、朝日新聞が選挙後おこなった世論調査で、「民主党が議席を増やした一番大きな理由は何だと思いますか」という質問にたいして、「自民党に問題がある」と答えた人が81%に達し、「(民主党の)政策に期待できる」と答えた人は9%にとどまっています。

 ジェラルド・カーティス・米コロンビア大学教授は、“有権者は安倍・自公政権に「ノー」といったけれども、民主党政権樹立に「イエス」といったわけではない”とのべましたけれども、そのことはこれらの世論調査の結果からも裏付けられています。

 またそのことは、民主党自身からも聞こえてきます。あるメディアは、民主党の今回の議席増について、「そこに『政策』は不在だ」として、「これは民主党に対する期待で信任だとは思っていない」とする民主党中堅幹部の声を紹介しています。

 自民・公明の古い政治の枠組みに代わる、新しい政治の中身がどのようなものか。それを国民が見定めていくのは、これからの大仕事になってきます。国民が、自公政治に代わる新しい政治の方向と中身を探求する新しい時代、新しい政治プロセスがはじまった。これが現状であります。

どうやってこの政治プロセスを前向きに打開するか
――三つの政治的な中心点

 いまはじまった政治プロセスがどういう行方になるか。それは、今後の国民のたたかい、わが党の奮闘にかかっています。これをどうやったら前向きに打開できるか。私たちは、政治的な中心点が三つあると考えています。日本共産党は、つぎのそれぞれで大いに積極的な役割を果たしたいと決意しています。

歴史をゆがめる逆流の克服――「靖国」派外交は国際的に大破たんした

 第一は、過去の日本の侵略戦争を正当化する異常な逆流を克服することであります。

 参議院議員選挙の投票日の翌日の七月三十日、米国下院本会議は、アジア太平洋戦争中に日本軍によって性奴隷とされた元「慰安婦」たちに対し、日本政府が「公式かつ明確な謝罪」をおこなうことを求める決議を、反対なしで採択しました。決議の採択にあたりラントス下院外交委員長は、つぎのようなもっともきびしい言葉で、日本の「靖国」派の妄動を批判し、日本政府に歴史の真実に向き合うことを求めました。

 「日本の一部の人がおこなっている、歴史をゆがめ、否定し、犠牲者に罪をなすりつけようとする継続した努力には、吐き気をおぼえます。すべての『慰安婦』が喜んでその行為に加担し、自発的に行動していたという者は、『レイプ』という言葉の意味をまったく理解していないのです」「これ(謝罪)がおこなわれない場合、こうした恐ろしい犯罪が繰り返され、今回のケースと同じように傲慢(ごうまん)な取り扱いがされる可能性があるというシグナルを、世界中の国家にたいして発することになります」「世界は、日本政府が歴史を全面的に清算することを待ち望んでいます」

 この決議は、まさに安倍・「靖国」派外交の国際的大破たんをしめすものにほかなりません。(拍手)

 過去の犯罪を正当化する態度をつづけるかぎり、日本政府は、世界のどの国にたいしても、まともな外交をおこなう最低限の資格を問われることになります。安倍首相は決議を無視する態度を続けていますが、それは問題をいよいよ深刻にするだけです。わが党は、「従軍慰安婦」問題での国際社会の批判と懸念を解くためには、日本国首相として、公的な資格での公式の声明として、歴史的事実を受け入れ、謝罪をおこなうことが不可欠であることを指摘し、その実行を首相に強く求めるものであります。(拍手)

 みなさん、日本の政界から、歴史をゆがめる逆流を一掃するために、引き続き、知恵と力を尽くそうではありませんか。(拍手)

米国いいなりからの脱却――インド洋とイラクからの撤退、憲法改定問題について

 第二は、異常なアメリカいいなり政治から脱却することであります。

 この問題では、米国の無法な戦争への加担をつづけるのかどうかが、ただちに問われてきます。

 まずテロ対策特別措置法への対応であります。テロ特措法は、米国などによるアフガニスタンへの報復戦争を支援するために、自衛隊をインド洋に派兵する根拠とされてきたものですが、その期限が十一月一日で切れます。すでに六年におよぶ報復戦争がもたらしたものは、テロの根絶ではなく、アフガンにおけるタリバン勢力の復活が象徴しているように、テロの温床を拡大し、テロを国際的に拡散することでした。米国主導の武力掃討作戦が情勢の悪化をもたらしているという批判は、派遣国のなかでも大きくなり、ドイツでも撤退支持が世論調査で66%にのぼっています。戦争でテロはなくならない――このことは事実を通じて証明されました。(拍手)

 テロ特措法は、国連憲章を踏みにじったアメリカによる報復戦争を、日本国憲法の原則をじゅうりんして支援する無法な枠組みであります。わが党は、政府・与党によるテロ特措法の延長を許さず、インド洋に派兵した海上自衛隊をすみやかに撤退させることを、強く要求するものであります。(拍手)

 この問題では、民主党が、従来と同じように反対をつらぬくなら、仮に衆議院で強行されたとしても、参議院においてテロ特措法延長法案を葬ることは可能であります。わが党は、テロ特措法延長法案を、衆参両院でのたたかいで廃案においこむために野党が共同することを、よびかけるものであります。(拍手)

 さらに、自衛隊のイラクからの撤退も、さしせまった課題であります。イラク戦争が誤った情報をもとに開始された侵略戦争であったということは、国際的にも明白になっています。イギリスでは、ブレア首相が世論の批判で退陣に追い込まれ、アメリカでも、ブッシュ大統領にたいして、来年三月までに撤退を完了させるという決議が議会から突きつけられました。いまだにこの戦争を「正しかった」と言いつのり、米軍の輸送のために自衛隊の派兵をつづける日本政府の態度は、国際的にみても異常きわまりないものといわなければなりません。

 この問題でも、参議院で、イラク派兵法廃止法案の提起などの対応を可能にする新しい条件が生まれています。わが党は、国会が、自衛隊撤兵のためのあらゆる手段を講じることを強く求めてたたかいます。(拍手)

 参議院選挙の結果は、憲法改定の企てへの重大な打撃ともなりました。自民党は、「マニフェスト」の「155の約束」の冒頭に「三年後の国会において憲法改正案の発議をめざす」ことを公然と掲げて選挙をたたかいました。首相は、選挙後の会見で、「年金問題などがあったため、選挙戦で憲法問題について十分な議論ができなかった」として、「国民とともに今後も議論をしていく」と、なお憲法改定の野望に固執しています。しかし、「十分な議論ができなかった」というならば、これほど重大な問題を勝手に進めることは許されないことは明りょうであります(拍手)。そしてともかくも、安倍・自民党が「マニフェスト」のトップに改憲を掲げ、そして惨敗した以上は、改憲方針は撤回するのが筋というものではないでしょうか。(拍手)

 国会では、憲法審査会の設置を許さず、憲法改定案の策定を許さないたたかいが重要になってきます。そして何よりも草の根からのたたかいが、ますます大切です。全国で六千をはるかに超えて広がった「九条の会」の運動をさらに前進させ、相手の巻き返しを許さず、いまこそ攻めに攻めて改憲勢力を国民的に包囲・孤立させるたたかいを、元気いっぱい前進させようではありませんか。(拍手)

財界中心の異常をただす――たたかいいかんで現実政治を動かせる新しい条件

 第三は、極端な大企業中心政治の異常をただし、国民の命と暮らしを守ることであります。この分野でも、国会での新しい力関係のもとで、国民のたたかいいかんでは、国政を現実に動かせるさまざまな可能性が広がっています。

 わが党は、参議院選挙で、「ストップ貧困、いのちを守る――緊急福祉1兆円プラン」を公約に掲げてたたかいましたが、国民の審判は、この公約を部分的であれ実現しうる条件をつくりだしました。

 たとえば、子どもの医療費の無料化は、公明党が一方で「実績だ」と大宣伝している問題ですから、これを法案にして参議院で通せば、衆議院で否決する「理由」を考え出すことは、公明党であってもきわめて難しくなるでしょう。(笑い)

 障害者自立支援法による負担増の撤回は、民主党も「マニフェスト」で公約している課題であり、参議院で多数になる条件はおおいにあります。

 母子家庭への児童扶養手当の削減について、民主党は法改悪のさいには賛成しましたが、今度の選挙の「マニフェスト」(「2007政策リスト300」)では「児童扶養手当の支給水準の変更を元に戻し、母子加算の廃止を見直します」と公約しています。ですから、削減を中止させる法案を参議院で提出し、多数をえるように働きかけていきます。(拍手)

 国民の審判がつくりだした新しい条件のもとで、わが党が提案した「1兆円プラン」のさまざまな要求が、参議院で多数派になる可能性が生まれています。もちろん、その一つひとつについて、実現するまでには、困難や妨害が予想されますが、可能性が生まれました。それを現実のものとし、これを実行させるために、国会内外でおおいに力をつくして奮闘しようではありませんか。(拍手)

 年金制度の改善についても、わが党が緊急策として提案した年金受給条件を現在の二十五年から十年に引き下げるという提案にたいして、自民党、公明党も、選挙中の論戦をつうじて「検討する」と約束しました。公の場で言明した以上、これは公約です。ですからわが党は、まずこの緊急策についての公約を実行することを、政府・与党に強く迫っていくものであります。(拍手)

 参議院選挙での国民の審判は、政府・与党が進めようとしていた消費税増税の企てにも、重大な打撃を与える結果となりました。わが党は、選挙戦の論戦をつうじて、共産党は消費税の増税には絶対に反対ですが、政府・与党が秋の税制改革で増税をおこなう方針をもっているというならば、事前に参議院選挙において国民の審判を仰ぐべきだと、安倍首相の態度を重ねてただしてきました。首相は、消費税を上げるとも上げないともいわないまま、国民の審判を仰ぐことは拒否するという勝手な態度に終始しました。国民の審判を仰ぐことを逃げ続けた以上、政府・与党には、消費税増税を持ち出す資格はないということをはっきり言っておきたいと思います。(拍手)

 国民の審判によって、政府も財界も、消費税増税をこの秋に持ち出すことは、困難な状況に追い込まれつつあります。しかしもちろん相手はあきらめたわけではありません。ここでもおおいに攻め時です。攻めに攻めて、消費税増税計画を断念に追い込むまでたたかいを発展させようではありませんか。(拍手)

 暮らしをめぐるどんな問題でも、政府・与党が国民要求を阻む口実にしてくるのが、財源問題です。ここでは、無駄づかいを一掃するとともに、ゆきすぎた大企業減税にメスを入れられるかどうかが問われてきます。この立場がないと、結局は、庶民増税に社会保障の「財源」を求めるという邪道におちいることになります。この点で、大企業・大資産家にもうけ相応の負担を求めるという道理ある立場にたつ日本共産党が、今後果たしていく役割はいよいよ大きいということを強調したいと思います。(拍手)

 みなさん、私たちは、「ストップ貧困」を掲げて選挙戦をたたかいぬきました。この選挙のなかで、「いまの政治のもとではもう生きていけない」という痛切な声を、どれだけ聞いたことでしょうか。この声にこたえ、国民の苦難を軽減するという党の存在意義にかけてがんばりぬきたい。貧困で苦しむ国民をなくし、貧困に落ち込む心配のない社会をつくるために、国政でも草の根でも全力をつくす決意をのべるものであります。(拍手)

新しい国会での日本共産党の基本的立場について

 今回の選挙の審判をうけて始まった新しい政治プロセスが、国民の利益にかなった前向きのプロセスになるかどうか。それは、いまお話ししてきたように、過去の侵略戦争の正当化、アメリカいいなり、財界中心主義という、私たちが「自民党政治の三つの異常」と批判してきた問題について、日本の政治がその克服にむけて動くかどうかが、重大な試金石になります。これは今後の国会闘争でも、国政選挙でも、つねに問われてくる根本問題となるでしょう。「三つの異常」をただす日本改革をすすめるという日本共産党の綱領の立場が、いよいよ重要であります。まさに綱領こそ、現状を前向きに打開する最大の羅針盤となっているのであります。(拍手)

 国会の様相は、衆議院では自民・公明が多数を占めるが、参議院では野党勢力が多数を占めるという状況になりました。こうした新しい状況のもとで、わが党はつぎの四つの原則を堅持して、国会のたたかいにのぞむものです。

 第一は、どんな問題でも国民の利益をまもる立場にたち、一歩でも二歩でも国政を動かすために奮闘するということです。わが党の議席は、衆院でも、参院でも、まだ少数ですが、国会の新しい勢力配置のもとで、その主張が、国民の声と結びつくならば、国会全体を動かすこともありうるという自覚をもって、どんな問題にも積極的・攻勢的に対応していきたいと思います。

 第二は、自民・公明の暴走と巻き返しを許さないということです。また「政治とカネ」の問題など、腐敗と不正をただすということです。

 選挙結果を受けて、政府・与党は、政治資金規正法の再見直しを提起せざるを得なくなっています。わが党は法改正にたいしては、企業・団体献金の禁止という抜本策を掲げつつ、積極的に対応します。しかし同時に、政治腐敗の問題では、真相究明こそ何よりも急務であるということを訴えたいと思います(拍手)。国会、とりわけ野党が多数を占めている参議院で、国政調査権を発動して、一連の疑惑の真相究明をおこなうことを提起していきたいと考えております。(拍手)

 第三は、一致点での野党共闘に積極的にとりくむということです。これまでもわが党は、そうした姿勢で国会対応にあたってきましたが、参院で野党が共同すれば多数を占めるという状況のもとで、一致点で野党が共同して国民要求を実現し、自民・公明政治を追い詰めていくことは、いよいよ重要となっています。

 第四は、どんな問題でも、草の根での共同をいっそう強めることであります。今回の選挙結果をうけて、各分野の国民運動で「要求実現のチャンスだ」と、運動をさらに活発に発展させようという機運が広がっています。国会でのたたかいと国民運動との共同を、これまで以上に強化していきたいと考えています。

 今度の国会では、内政、外交のあらゆる問題で、自公政治の立場がきびしく問われてきます。わが党は、一つひとつの問題で、自公政治をきびしく追及し、彼らを追い詰め、衆議院の解散・総選挙に追い込むという基本姿勢でのぞみます。(拍手)

 同時に、民主党の立場も問われ、試されてきます。民主党が参院選で掲げた「マニフェスト」には、民主党の従来の基本路線との矛盾をかかえた内容も多数含まれています。わが党は、民主党にたいしても、国民の利益をまもる立場にたって、積極的な働きかけをおこなっていきます。

 新たに始まった政治的激動の時代において、どの問題でも日本共産党の役割がいよいよ重要となってきます。党綱領を羅針盤に、いま始まった政治プロセスを前に進めるために、お互いに力を尽くそうではありませんか。(大きな拍手)

情勢を主導的に切り開く、強く大きな党を

 いま始まった新しい激動の政治プロセスが、どういう展開になるか、どういう結果に結びつくか。これは、予断をもっていえません。しかし、国民が政治的体験を一つひとつ重ねながら、新しい道を探すことは大仕事であって、恐らくは何回かの国政選挙をふくめた、一定の期間が必要とされることは、間違いのないことだと思います。

 この新しい激動の時代を、日本共産党が主導的に切り開くには、政治と理論の面でも、また組織のうえでも、強く大きな党がどうしても必要です。「選挙で党が前進するにはまだ実力が足らない」「どんな情勢のもとでも前進できる党をつくりたい」――これは選挙戦をたたかった全党のみなさんの共通の痛切な気持ちでもあると思います。

 この参議院選挙で、比例票を前回比で120%以上獲得した自治体を調べてみましたら、全国で七十二自治体あります。その多くでは、日本共産党の党組織が国民の「命綱」として要求活動に日常的にとりくむとともに、綱領や決定の読了など学習を意欲的にすすめながら、党勢拡大でも積極的なとりくみをすすめ、党勢を維持・前進させています。こうした先進的な経験を全国に広げていきたい。

 この参議院選挙は、「しんぶん赤旗」の読者を減らしたもとでの選挙でしたが、得票は基本的に維持しました。逆にいいますと、読者一人あたりの得票が大きく増えているということになります。日曜版読者一人あたりの得票は、二〇〇一年の参議院選挙で二・七〇票、二〇〇四年の参議院選挙で二・九二票、今回の参議院選挙は三・五二票となりました。もちろん、読者を増やさなくとも票がでるということをいいたいわけではありません(笑い)。いま自民党などが従来の支持基盤としてきた組織が大きく崩れている。そういうもとで、わが党が、一人の党員、一人の読者を増やすことが、これまで以上に日本共産党の得票増につながる時代になっているのです。そういう点では、こんなに党建設のやりがいのある時代もないと思います。(拍手)

 私たちは、この激動の時代を主導的に切りひらくうえでも、次の総選挙で勝利するうえでも、強く大きな党をつくる仕事に、新たな気持ちで精魂を傾けてとりくむ決意です。とりわけ、この選挙で元気いっぱいに輝いた若い世代のなかで、若者が直面する困難をともに打開しながら、おおいに党づくりをすすめたいと思います。

 多くのみなさんの日本共産党への入党を心から呼びかけるとともに、党づくりへのご協力を心からお願いするものです。(拍手)

三、歴史的大局にたって日本の希望ある未来を

歴史の逆流とのたたかいで、自らを鍛え、前途を開く

 みなさん、今日は、党創立八十五周年を記念する講演会です。私は、いまわが党がたっている歴史的地点を、一九六一年にいまの綱領の原型にあたる綱領路線を確立したあとの四十六年におよぶ政治対決の歴史のなかでとらえてみたいと思います。

 この四十六年間に、わが党は二つの政治的躍進のピークを記録しています。わが党の躍進は、そのたびごとに、支配勢力による歴史の逆流をよびおこし、その逆流とのたたかいで自らを鍛え、つぎの前進・躍進をめざす、こうしたジグザグのなかで、党の前途を開くために奮闘してきたのが、わが党の歴史にほかなりません。

70年代の政治的躍進と、“共産党封じ込め”戦略

 最初の政治的躍進のピークは、一九七〇年代の躍進であり、わが党は一連の国政選挙で約六百万票を得ました。革新自治体が全国に広がりました。国政も地方政治も様相が一変しました。わが党が提唱した民主連合政府が、現実的な課題にのぼってきました。

 これに恐怖した支配勢力によって、“共産党封じ込め”戦略が発動されました。まず、戦前の特高警察とまったく同じ立場、暗黒政治とまったく同じ立場からの反共キャンペーンが開始されました。一九八〇年には、「社公合意」によって旧社会党を革新の戦線から離脱させて日本共産党を孤立させる反共政治体制がつくられました。さらに一九八〇年代末から九〇年代の初めにかけてのソ連・東欧体制の崩壊を利用して、「社会主義・共産主義崩壊」論――「体制選択論」攻撃がくわえられました。私が、書記局長に選任されたのはこの時期でしたが、「共産党は時代遅れ」という論調が、それこそ横行した時期でした。くわえて一九九三年から九四年にかけての「非自民」政権の樹立によって、「自民か、非自民か」を押し付け、「共産党はカヤの外」という逆風がふきつけられました。「そんな汚いカヤの中には頼まれても入らない」(笑い)といってがんばりましたけれども、なかなかの逆風でした。これらの一連の攻撃に、わが党は正面から果敢に反撃しましたが、国政選挙で押し込まれた時期がつづきました。しかしこの期間にも、わが党は草の根で力をたくわえ、地方議員を増やし、粘り強くその陣地を維持しました。

90年代の政治的躍進と、「二大政党づくり」の動き

 日本共産党が、第二の政治的躍進のピークを迎えたのは、「非自民」政権が無残な失敗に終わり、自民党政治の矛盾がいよいよ深刻になった、一九九〇年代の後半です。わが党は一九九六年の衆議院選挙で七百二十六万票、九八年の参議院選挙で八百二十万票を得ました。この躍進は、国会運営から共産党を排除するという悪弊を打ち破り、国会の様相を大きく変えました。

 これにたいして支配勢力は、二〇〇〇年の総選挙で、空前の規模での反共謀略ビラの大量配布をおこない、二〇〇三年の民主党と自由党の合併を機に、財界主導で「二大政党づくり」の大キャンペーンを開始しました。これは国民に「自民か、民主か」という選択肢を無理やり押し付けて、共産党をはじめから選択肢の外においてしまうという、戦後、最も大掛かりな“共産党封じ込め”戦略にほかなりません。

 小選挙区制、政党助成金、選挙活動の不当な制限、そして共産党を徹底して無視するマスコミの沈黙作戦という道具立てもくわえて、日本共産党を政界から締め出そうということが支配勢力の野望であります。選挙活動の不当な制限ということでは、商業新聞を大々的に買い占めて投票日にあれだけの広告を出すなどの活動はまったく自由なのに、選挙戦に入ったらハンドマイクすら許されない、メガホンでなければ音すら出せない、本来もっとも自由が保障されてしかるべき草の根の運動はきびしく制限される。こんな不当なやり方がまかり通っているというのは、世界でもまったく異常な事態であります。

 わが党は、この数回の国政選挙で、「二大政党づくり」の動きと正面からたたかってきましたが、いまだこれを本格的に打破して、本格的な前進に転ずるにはいたっていません。しかし同時に、この数回の国政選挙で四百数十万票という得票を維持し、わが党を政界から締め出そうという相手のもくろみも許してはいません(拍手)。これが現在の到達点であります。(拍手)

自民党の衰退――前進を可能にする条件は日本社会そのもののなかにある

 日本共産党という政党は、日本社会を根本から改革しようという志をもつ政党です。ですからわが党が前進すれば、必ずそれは支配勢力による歴史の逆流をよびおこします。わが党の前進というのは、たんたんとすすむものではなく、歴史の逆流に立ち向かい、逆流とのたたかいで自らを鍛えあげながら、それを打ち破って前途を開く、ジグザグな過程をへながら進まざるをえません。

 しかし、私は強調したい。歴史はけっして無駄には流れておりません。この四十数年の一貫した傾向は、自民党政治と国民との矛盾が深まり、自民党の衰退がすすんだというところにあります(拍手)。一九六〇年の国政選挙で自民党は58%の得票率を記録していますが、今回の参議院選挙での自民党の得票率は28%にまで落ち込みました。自民党はこの十数年間は単独では政権を維持できず、連立政権によってかろうじて政権にしがみついてきました。しかしついに今回の選挙では、自公連立によっても参議院選挙で大敗するという事態にたちいたったのであります。(拍手)

 私たちの目の前に新しい視界が開けてきました。国民が自公政治に代わる新しい政治を探求する時代がやってきました。これを前向きに打開すれば、新しい日本への展望が見えてきます。それを可能にする条件がどこにあるでしょう。日本社会そのもののなかにある。国民と自民党政治との矛盾の深まりのなかにこそあります。みなさん、こんなに胸おどる、たたかいがいのある時代はないではありませんか。(拍手)

 みなさん、一九七〇年代のピークは約六百万票でした。九〇年代のピークは約八百万票でした。ですからつぎのピークは、それを上回る峰を築く意気込みで未来にのぞもうではありませんか。(大きな拍手)

85年の誇りある伝統を、21世紀に発展的に生かそう―歴史を大局でとらえ、不屈さを発揮し、科学的理性をもって

 参議院選挙のさなか、七月十八日に、日本共産党の戦前、戦後のリーダーをつとめた宮本顕治元議長が亡くなりました。

 八月六日におこなわれた党葬で、不破哲三前議長は弔辞のなかで、宮本顕治さんが、戦前の専制権力による野蛮な弾圧とのたたかい、ソ連・中国の干渉と結びついて引き起こされた党の分裂――いわゆる「五〇年問題」の解決、一九六〇年代に開始された旧ソ連および中国・毛沢東派の干渉とのたたかいという、日本共産党にとってきわめて重大な三つの危機の時期にあって、どの場合にも「不屈の意志と強固な理性的対応をつらぬいて、危機を打開するたたかいの先頭にたち、新たな発展への道を開いてきた」と語りました。

 私が、宮本さんの著作を読み返してみて、とりわけ強い感動を覚えるのは、宮本さんがどの危機の時期にあっても、大局観にたって歴史をとらえ、行動してきたことであります。宮本さんは、太平洋戦争末期の一九四四年の十二月、獄中から宮本百合子さんにあてた書簡のなかで、「『歴史の淘汰(とうた)』が古きものと新しきもの、善きものと悪しきものとを截断(たちき)る規模と的確さは未曽有の景観を示すことだろう」という言葉を残しています。日本国民の多くが、日本の前途に暗澹(あんたん)たるものしか見いだせなかったその時期に、まもなく新しい時代がはじまると言い切った歴史への洞察力、そして世の中の善悪のすべては「歴史の淘汰」をまぬがれない――歴史によって審判を受けるという揺るがぬ信念は、今日の時代に、当時とはまた違った困難を打開して前途を開こうとしている私たちを励ましてやまないものがあります。

 歴史を大局においてとらえ、どんな困難にも負けない不屈さを発揮し、科学的理性をもって前途を開く――これは日本共産党の幾多の先輩たちによって築かれてきた八十五年の党史をつらぬく誇りある伝統であります。(大きな拍手)

 みなさん、この伝統を二十一世紀に発展的に引き継ぎ、日本の希望ある未来を開くためにともに力をつくそうではありませんか。ご清聴ありがとうございました。(大きな拍手)


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