2007年8月11日(土)「しんぶん赤旗」

原爆症訴訟 国が控訴

認定基準見直し 首相表明の直後


 原爆症認定を求める集団訴訟で原告二十一人のうち十九人を原爆症と認めた熊本地裁判決について、厚生労働省は十日、「六つの地裁判決は、それぞれに考えが異なっており、行政が依拠できるような統一的な考え方は示されていない」として敗訴部分について福岡高裁に控訴しました。

 同地裁判決は、厚労省の原爆症認定の審査のあり方に問題があると六度目の司法判断をくだし、「残留放射線による内部被曝(ひばく)の影響が考慮されていないのは、相当とはいえない」とこれまでの判決よりも踏み込んだ判断を示しました。

 安倍首相が今月五日、広島の被爆者七団体との懇談会で、認定基準について「見直すことを検討している」と表明した直後の控訴であり、重い病気をかかえて裁判をたたかう被爆者の「もう時間がない。今度こそ控訴せず、一日も早い見直しを」との願いを踏みにじる行為です。

 日本被団協の田中熙巳事務局長、日本共産党被爆者問題対策委員会の小池晃責任者が政府を批判する談話をだしました。

 日本被団協や全国弁護団連絡会などは同日、厚労省内で記者会見し、抗議声明を発表しました。

原告団・弁護団 抗議の記者会見

 原爆症認定集団訴訟熊本原告団・弁護団は十日、国が控訴したことに対し熊本市内で抗議の記者会見をしました。

 原告の中山高光さん(78)は、「政府は、被爆国として、世界に原爆の深刻さを明らかにする責任があるのです。そこを明らかにしないと核兵器を持つ国は増えていく。くじけはしません。事実を受けとめる政府を求めてがんばる」と怒りをこめ語りました。

 寺内大介熊本訴訟弁護団事務局長は「首相も認定基準の見直しを口にしたが、その前提となる裁判を受け入れるのが、出発点になる。控訴に断固抗議する。被爆者は高齢化しており、人道上許せない」と抗議の声をあげました。

首相は行動で被爆者裏切る

 日本共産党被爆者問題対策委員会の小池晃責任者・参議院議員の談話 控訴は言語道断だ。安倍首相は、原爆症認定基準の見直しを約束したが、行動では被爆者の心を裏切った。控訴は撤回し、認定基準の抜本的改善に踏み切るべきだ。


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