2007年8月4日(土)「しんぶん赤旗」
賃金差別告発強化へ
米下院 制限緩和の法案可決
【ワシントン=山崎伸治】米下院は七月三十一日の本会議で、労働者による賃金差別の告発を事実上認めない米最高裁判所の判決を覆す法案を採決し、賛成二百二十五、反対百九十九で可決しました。
法案は、米大手タイヤメーカーの元女性社員が、男性社員との賃金差別をめぐり会社に賠償を要求した裁判で、最高裁が五月末に元女性社員の主張を退けたことを受けたもの。六月に民主党のジョージ・ミラー下院教育労働委員長が提出していました。元女性社員の名前をとって「リリー・レッドベター公正賃金法案」と呼ばれています。
現行法で賃金差別の告発は、その賃金が支払われた時点から百八十日以内に起こせばよいとされてきました。差別賃金の支払いごとに告発の機会があることになります。
ところが五月の最高裁判決は、会社が賃金を差別すると決定した時点から百八十日以内だとする新たな解釈を示しました。つまり差別賃金が最初に支払われた時点で告発しなければ、その後、差別賃金が支払われ続けても労働者は告発できないということになります。最高裁はその解釈にたって、元女性社員の告発は「期限を過ぎていた」として退けました。
法案はこの最高裁判決を覆し、賃金差別については二年前にまでさかのぼって告発できるようにすることが主眼。可決に際して、ミラー委員長は「最高裁は基本的な公正という問題で時計を逆に進めようとしたが、議会はそれを容認しない」と歓迎の声明を発表しました。一方、米商工会議所は同法に強硬に反対を表明しています。
同様の法案は上院にも提出されており、九月の夏期休暇明けにも審議、採決の予定です。

