2007年8月3日(金)「しんぶん赤旗」

主張

税制「改革」

消費税増税、提起の資格なし


 参院選で大敗した安倍内閣が、消費税を含む税制「改革」を予定通り進める姿勢を強調しています。

 政府税制調査会の香西泰会長は先月末の記者会見で「従来の方針で粛々とやっていく」とのべました。尾身幸次財務相は、秋から本格化させる税制議論には「消費税の問題も含まれる」と明言しました。

 安倍晋三首相も選挙の大勢が判明した投票日夜、インタビューに答えて「当然(消費税の)議論は行わなければならない」とのべています。

怒りの審判に従って

 消費税問題は、首相が「消費税を上げないなんて一言も言っていない」と発言したことをきっかけに参院選の熱い争点に急浮上しました。

 党首討論で日本共産党の志位和夫委員長は、「消費税増税の可能性があるなら事前に参院選で国民の審判を仰ぐべきだ」と求めました。これに対して安倍首相は、消費税を今回の参院選の争点にはせず、国民の審判を仰ぐのは「次の衆院選で」と身勝手な姿勢に終始しました。

 それにもかかわらず、首相は国民の審判から逃げられませんでした。六月の住民税の大増税に続いて、政府・与党がまたもや庶民増税を計画していることに国民の怒りが広がり、それが与党大敗の大きな原因となったことは明らかです。

 選挙中、政府税調の香西会長は「もうすでに(国民の消費税に対する)裁判が始まっている」と指摘しています。その「裁判」で明確な判決が出たのです。

 消費税は生活保護世帯にも同じ税率でかかり、所得が低い人ほど負担が重くなる逆進性の強い最悪の不公平税制です。もとより、消費税増税について国民に誠実に説明することから逃げ続けた安倍内閣と与党には、消費税増税を提起する資格すらありません。その上に国民の厳しい審判が下っています。安倍内閣と与党は、消費税の増税計画をいさぎよくあきらめるべきです。

 安倍内閣の狙いは消費税増税だけではありません。先月末の記者会見で香西会長は、扶養控除など所得税の諸控除見直しを掲げている民主党の公約を挙げ、「私は所得税についてはぜひ見直したいと前々から思っていた」と強調しました。

 民主党は所得税などの見直しで二・七兆円の財源をつくるとしていますが、配偶者控除や扶養控除の縮減・廃止は中低所得層にいっそう過酷な負担を強いる庶民増税にほかなりません。

 それ以下の所得に課税しない水準を示す課税最低限は日本の場合、すでに国際的に見ても低すぎるところまで下がっています。財務省によると、ことし一月時点の課税最低限(夫婦と子二人)はアメリカ四百一万円、イギリス四百二十三万円、ドイツ五百五十八万円に対して、日本は三百二十五万円にすぎません。

 OECD(経済協力開発機構)は日本に関するリポートで、再三にわたって、日本の税制が世界でも特に低所得層に厳しいことを指摘しています。低所得層の税負担を一段と重くし、さらに低い所得の世帯にまで課税することになる諸控除の縮減・廃止は、貧困と生活難をいっそう深刻にします。

大企業優遇の是正を

 財源の話になると庶民に増税することしか出てこないおそまつな政治に国民は怒りの審判を下しました。

 税制改正でまずやる必要があるのは住民税増税を中止して増税分を国民に返すことであり、大企業と大資産家への減税の大盤振る舞いをすっきりとやめることです。



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