2007年8月1日(水)「しんぶん赤旗」

NHK各党討論

市田書記局長の発言


 日本共産党の市田忠義書記局長は三十日、NHKの討論番組で、参院選での有権者の審判にどうこたえるか、をテーマに各党代表と討論しました。司会は山本孝解説委員でした。


自公大敗――自公の枠組みでは日本の前途はないと有権者が判断

 自公大敗の結果となったことについて、自民党の中川秀直幹事長は、「年金記録問題、政治とカネ、閣僚の失言など大変な逆風が最後まで止まらなかった」と発言。一方で、「小泉改革以来の『中央から地方へ』、『成長戦略で格差をなくしていく』という基本にまでかかわる選挙ではなかった」などと述べ、首相続投を合理化しました。

 市田氏は、日本共産党の議席後退について問われたのに対し、「比例で三議席で、マイナス一でした。その点では残念だったのですが、得票でみますと前回、前々回を上回りまして、四百四十万頂いたんです。選挙区も議席獲得はならなかったけれども、東京、大阪、京都などでかなり票を伸ばすこともできましたし、その点では確かな手応えがありました。ご支持いただいた有権者の皆さん、頑張っていただいた後援会、支持者、党員の皆さんに感謝したいと思います」と述べました。

 そのうえで、自公大敗の結果については次のように述べました。

 市田 選挙結果について言いますと、やはり安倍内閣と、自民・公明の与党に対する非常に厳しい国民の審判が下った。やはり有権者が自公の枠組みでは日本の前途はないと(判断した)。しかもそれは単なる首相や閣僚の失言、暴言、年金の処理のミスということにとどまらない、根本的な内政外交の行き詰まり(への批判)です。貧困と格差の拡大、外交で言えば侵略戦争を肯定するような考え方を、一方的に外国に押し付ける、そういうことの破たんのあらわれとして、今度の結果を私は見るべきじゃないかなと思います。

野党協力――自公の暴走を止めるため一致する点は積極的に力を合わせる

 参議院で与野党逆転したもとでの議会運営をめぐって、菅直人民主党代表代行は「我が党が政権を取ればもっと直接やれることが具体的に見える形で進めていきたい」と述べました。中川氏は、「菅さんは政局第一主義でなくて、生活第一主義ということを言った。(野党が対案を)出してこられれば、真摯(しんし)に議論したい」と述べました。市田氏は、国会での野党の協力関係について問われ、次のように述べました。

 市田 これまでも悪い法律を阻止したり、国民の要求実現のためには、野党間で一致点で力を合わせてきました。われわれは、自民、公明の暴走を止めるためには、やはり野党で一致できる点は、おおいに積極的に力を合わせるということで全力をあげたい。参議院の議長問題でも当然第一党から議長ということで、第一党は民主党ですから、当然賛成します。そういうルールに参議院はなっています。第一党議長、第二党副議長ということになっていますから、そのルールに従って当然賛成します。

年金問題――記録は1億人にすぐ通知を、納付期限の短縮と給付金増額はかれ

 年金記録の問題について、中川氏は「国会で与野党で協議したらいい」と述べたのに対し、菅氏は「民主党の提案に沿うなら話し合う」と述べ、議論は平行線となりました。この問題で市田氏は次のように述べました。

 市田 歴代政府・厚生労働省は国民から保険料を集めることには熱心だったけれど、その財産をきちんと管理して年金をきちんと支給するという点では、きわめてずさんでいいかげんだったと(思います)。基礎年金番号で統一すること、それ自身はいいことだったと思いますが、その時点で五千万件も突合(とつごう)できない記録があることが分かっていたわけですから、やはりきちんと対応すべきだったと思います。歴代政府と厚労相に責任があると思います。それは徹底して追及します。

 同時に、問題の解決にあたっては、党利党略ではなく、国民の利益を第一に、一人の被害者も出さないように一刻も早く解決する。心配だったら問い合わせにきなさいと待っているのではなく、年金記録があるわけですから、納付記録を一億人の加入者・受給者にきちんと通知しなさいと(提案しました)。これは政府もやると約束しました。ただ来年の四月からといっているので、これは(山本「もっと早くやれと」)すぐにでもできるわけですから。一億人に通知すれば五千万の突合の促進にもなるわけです。

 また市田氏は、民主党が年金財源の流用禁止法案を提出することについて問われ、「賛成です。保険料は給付以外に使ってはならないというのは基本です。それを一時的に財政が大変だからと(流用を)やっていたわけで、(社会保険庁解体・民営化法案で)恒久法までつくったわけです。その流用を禁止するのは賛成です」と述べました。

 年金制度のあり方について市田氏は、国の財政との関係で消費税を据え置いたままで大丈夫かと問われ、「大丈夫です」と答えたうえで、次のように主張しました。

 市田 日本の年金制度は、三年前に「百年安心」ということで政府は(改悪を)やられたわけですが、一年たりとも安心できない。非常に年金額が少ないのがいちばんの問題で、無年金者も多い。だいたい国民年金だと無年金者が六十万人から百万人です。四十年間かけ続けて満期でもらえる額が一カ月六万六千円、平均四万七千円、二万、三万という人も多いんです。

 一番目にすぐできるのは、年金受給資格の問題です。いまは二十五年以上払い続けないと掛け捨てになります。ヨーロッパでそんなところはほとんどないわけで、十年以上にするべきです。この点については公明党の太田代表もいったし、自民党の中川政調会長がNHKの討論会で「検討する必要がある」とおっしゃった。その気になれば、すぐやれるわけで、これをやれば無年金者をなくせる。一致できるならば(やれる)。

 もう一つは土台のかさ上げをやると。一元化といっても低い方に合わせるのではだめで、いま国民年金、共済年金、厚生年金とあるんだけれど、土台を引き上げるためには最低保障年金制度を全額国庫でやる。(司会が)消費税に頼らずにやれるのかとおっしゃったが、やはりムダづかいがいっぱいあると思うんです。船の来ない港をつくったり、飛行機の飛ばない空港をつくったりとか、軍事費のムダもあるでしょう。

 税金を取るなら、むちゃくちゃ税金をまけてもらっている、負担能力のある大企業や大資産家からきちんと取る。ヨーロッパと比べたら日本の大企業の税と社会保障の負担の割合は、フランスの六割、イタリアの七割ぐらいです。きちんと、そういうところから取って、消費税は一番不公平な税制なんだから、その消費税を財源に頼るというのはよくないと思います。

  年金納付期間については、北側氏も「もう少し短くできないか検討したい」と発言。中川氏は消費税増税について「ムダがまだあるぞというのが、今回の民意ではないかと思う」とのべました。

「政治とカネ」――疑惑をかけられた政治家はいっさいの真実を明らかにせよ

 「政治とカネ」をめぐる問題では、視聴者から「まず政治家が信頼される姿になるべきだ」などの厳しい声が寄せられました。赤城徳彦農水相の架空事務所費疑惑で、「なぜ、もっと納得できる説明ができないのか」と問われた中川氏は「おっしゃるとおりだ」と述べざるをえませんでした。菅氏は、すべての政治団体について、一万円以上の支出に領収書を添付する政治資金規正法改正案を提出する意向を表明。市田氏は次のように述べました。

 市田 われわれはすべての支出について(添付すべきだと思います)。ただ、みんなが一万円ということになれば、検討してみたらいいと思います。

 (「政治とカネ」で)一番大きい問題は、疑惑をかけられた政治家が、いっさい真実を、国会と国民の前に明らかにしていないのです。佐田(玄一郎前行革担当相)さんもそうだし、松岡(利勝前農水相)さんも、角田(義一元参院副議長)さんも、赤城さんもそうです。疑惑をかけられた政治家が、やましいところがないのだったら、「法にのっとって」と弁明するけど、政治資金規正法には領収書を公開してはならない、公開したら罰するとは書いていないんだから(公開すべきです)。

 中川 公開しろとも書いていない。

 市田 法律に書いていないから、別に透明性をきちんとしなくていいんだという考え方が、(疑惑を)闇に葬ってきたと思うのです。ザル法ばかりつくっても(仕方がない)。やはり疑惑をかけられた政治家がちゃんと領収書をつけて、やましいところがないなら、公開すればいいのです。

 それと、経常経費を明らかにしたら、どうして政治活動の自由が奪われるのか。政治団体が七万あるといわれますが、七万あろうがいくらあろうが、すべての人は確定申告やるときは、一円から領収書をつけてやるわけですよ。事務が煩雑だからとごまかすのは(納得がいきません)。ザル法をつくったところでしょう。それを改めるというのはいいですよ。いいですけど、ついこの間、ザル法をつくったわけで、その反省がなかったら信用されませんよ。それは、きちんとすべきですよ。

 山本 ザル法をつくったばかりではないかという野党側の指摘ですが、この点はザル法的なところがありますか。

 北側 資金管理団体に限っているという点では、おっしゃっているとおり、もれるところがあると思います。

 北側氏はこう述べて、「秋にでも野党のみなさんのご意見をちょうだいしながら、より透明化できるように努力したい」と再改定に前向きの姿勢を示しました。中川氏も、野党側が改正案を提出した場合、「ゼロベースで取り組んでいく」と述べました。

自公政治に代わる新しい政治の中身と方向の探究が始まった

 番組の最後に、有権者の期待にどうこたえるのかと問われました。中川氏は「与野党責任ある対応をしなければならない。民主党に財政再建のビジョンを出してほしい」と述べ、菅氏は「政権交代という小沢代表の主張に、(国民から)やってみろというチャンスをもらった」と述べました。市田氏は次のように発言しました。

 市田 自公政治への国民の審判が下ったわけですけれど、それにかわる新しい政治の中身と方向の探求がいま、始まった、その第一歩、プロセスだと思います。ところが、自公にかわる新しい政治の中身がなにか、これはまだ国民の選択が明らかになっていないと思います。国民の切実な声にこたえる新しい政治とはなにか。激動の時代にふさわしい対応ができるよう、われわれ自身、選挙のなかでも(国会論戦でも)、がんばりたい。

 山本 新しい政治の方向は見えてきているのですか。

 市田 自公がああいう審判を受けたということは、それにかわる新しいものを探求しようというスタートだと思います。ただ、それにかわるものがなにかということは、国民はまだ選択していない。それを私たちは積極的に示しながら、審判を仰いで、次の機会には必ず前進できるようにしたいと思います。


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