2007年8月1日(水)「しんぶん赤旗」

07年 政治考

“首相は分かってない”


 「開き直りは国民をばかにしている」「本人は『安倍か小沢か』って政権選択をにおわせていたくせに結果が出た途端に、自分の言葉を忘れてこの態度か」――リスナー(聴者)が討論に参加するTBSラジオ番組「アクセス」(三十日放送)には、参院選で歴史的大敗を喫した安倍晋三首相(自民党総裁)の続投表明に怒りのメールが相次いで寄せられています。

 三十一日付地方紙社説は「責任はあるが、取らない。この不思議な論法が国民の政治不信に拍車をかけることを首相は分かっていない」(北海道新聞)、「首相は納得が得られる説明もないままに政権を維持するという。これでは、選挙をした意味が分からなくなってしまう」(神戸新聞)など「分からない」を連発しました。

 国政選挙で示された国民の審判を安倍首相や自民、公明の与党が受け止められないことに国民はあきれかえっているのです。

 しかし、自民・公明の与党内は首相の続投宣言を黙って受け入れる状況です。渡辺喜美行革担当相は三十一日の講演で早くも内閣改造に話を進め、「戦後レジーム(体制)の大転換を行うにふさわしい、安倍カラーを全面的に出した『純化路線』(の人事)を推し進めるべきだ」と強調。選挙戦で逆風の一因とされた赤城徳彦農水相は「参院選の結果は厳粛に受け止める」と淡々としたもので、自民党として辞任を迫る動きもありません。

 わずかに三十一日の自民党総務会で「青木幹雄参院議員会長が辞めるのにおかしい」(加藤紘一元幹事長)、「首相は『私か小沢一郎民主党代表の選択』と何回も訴えた。有権者にどう説明するのか」(石破茂元防衛庁長官)などの声が出ただけ。

 「これだけ負けたのだから、党内抗争をしている余裕なんてない。早くみんなで党の立て直しをはかるのが先だ」(自民党参院幹部関係者)、「『ポスト安倍』がいまはいない」(同党関係者)という党内事情があります。

 日本政治の研究で知られるジェラルド・カーティス米コロンビア大教授は三十日の日本外国特派員協会での講演で、「わがまま坊ちゃんは有権者の声を聞こうとしない。参院で多数をとっていないのに、どうやって『課題』を遂行するのか」と提起。「国民は安倍退陣を求めている。日本の政治史上、非常に決定的な転換点になるだろう」と述べています。

「根本的な変化が進行」

 「現職閣僚(松岡利勝前農水相)の自殺で、安倍さんが『美しい国』といっても受け入れられなくなった。広報戦略がガターンとなった」

 自民党広報局長の片山さつき衆院議員は三十日の民放番組でこう嘆きました。

 しかし、安倍・自公政権の歴史的大敗の原因は単に広報戦略だけの問題ではありません。

 自民党の麻生派関係者は「『構造改革』で自民党の支持基盤が弱り、市町村合併で自民党が利用できる行政機構も弱っている。郵政民営化で(特定郵便局長会の政治団体の)『大樹』も動かない。基礎体力が落ち、求心力もないなかで、逆風が吹いた。都市型の流れが郡部にも及んだ」とみています。

 政権担当能力や政治路線そのものも問われています。

 ジェラルド・カーティス米コロンビア大教授は、今回の選挙について有権者が、(1)年金問題などでの安倍首相の指導力へのノー(2)「戦後レジームからの脱却」という安倍政権の国民の願いとかけ離れた優先政策へのノー(3)日本社会に経済格差を生み出した小泉・安倍の改革にノーという「三つのノー」を示したと分析し、「日本では自民党の土台を侵食する根本的な社会の変化が進行している」と指摘しています(三十日の日本外国特派員協会の講演)。

 三十日の記者会見では安倍首相の「政策の基本路線について国民の理解を得られた」という発言に「その根拠は何か」という質問が飛びました。答えは「演説の聴衆の反応で分かった」。首相一人の肌感覚でした。

 その演説で安倍首相は「戦後レジームからの脱却」に憲法改定だけでなく、国の年金運営の責任を放棄する社会保険庁の民営化・解体まで入れて、選挙で国民に“実績”としてアピールしました。それが否定された以上、文字通り「続投」する根拠は完全に崩れています。


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