2007年7月28日(土)「しんぶん赤旗」

電気こんろ火災 追及2年
構造欠陥認めさせる


 ワンルームのマンションやアパートなどに据え付けられる「小形キッチンユニット用電気こんろ」で、体や荷物がスイッチに触れ、知らぬ間に電源が入って起こる火災事故――。業界団体や製造メーカー各社は、事故原因は「使用者の誤使用・不注意」としてきましたが、本紙が追及を始めて2年、ようやくスイッチの構造欠陥を認めました。国・業界がメーカー側の事故責任を認めたことで、どんな変化が起きているか、見てみました。(電気こんろ問題取材班)


隠されていた事故

次々に明るみに

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(写真)本紙に告発を寄せた山田滋雄さんが所有するアパートの電気こんろによる火災現場=昨年12月、千葉県我孫子市

 電気こんろ業界は、これから配布を始めるビラに次のように書いています。「意図せずスイッチが『入』となる可能性がある構造であった」。スイッチの欠陥によって火災事故が起きていることを認めた文言です。

火災事故激増 死亡事故も

 欠陥を認めさせたことで起こった大きな変化は、これまで隠されていた事故がぞろぞろとでてきたことです。

 当初、経済産業省製品安全課や業界団体は、1984年度から2006年9月までの22年間で起きた火災事故は205件としていました。製品安全課は「一連の火災では死亡事故は起きていない」ともいっていました。

 ところが、対応を迫られたメーカー13社が「事故を精査」して07年7月3日に発表した事故件数は1985年から2007年6月までの22年間で344件と急増。しかも年を追って火災事故件数が激増しているのです(表1参照)。92年には死亡事故が起きていたことも明らかになりました。

表

年間100件のペースで発生

 5月14日、重大な事故について製造メーカーに報告を義務づけ、その公表を厳しくする方向で改正された消費生活用製品安全法が施行されました。この法律改正を受け、経産省は5月28日から事故内容などの速報を継続的に公表するようになりました。

 公表開始後の2カ月で経産省が明らかにした電気こんろの同種火災は13件です。いずれも同省が事故原因について製品の欠陥の疑いがあると認めたものです(表2の網かけ部分)。

 同省は、この件数について「年間にすると100件というペース」といい、驚くべき数の火災事故が発生していることを認めています。

 また従来、業界が改修してきたのは「一口電気こんろ」だけを対象にしていましたが、「多口電気こんろ」も同様の構造上の問題があることを明らかにし、改修対象にしました。

 多口こんろでどのくらいの火災事故が発生したか、現在、業界が調査中です。

表

抜本的対策へ業界動かす

 業界はこれまで、消費者への注意喚起と、スイッチ操作部の改修につとめてきたといいます。しかし、改修を始めて17年もたつのに、約53万台出荷したうち20万台以上が未改修(07年3月末)という状況でした。本紙と日本共産党の国会での追及で、製品の欠陥を認めさせたことで業界の姿勢が一変しました。火災事故防止への抜本的な対応をとるため、業界は新たに「小形キッチンユニット用電気こんろ協議会」を設立し、対応策を公表しました(7月3日)。

 協議会には、松下電器産業、日立アプライアンス、三菱電機、富士工業など13社が加盟しています。同協議会は事務局を設置し、「業界と各社トップをあげての体制」(経産省製品安全課)をとりました。

 7月4日付全国紙各紙にメーカー連名で「謹告」を掲載。使用者にたいして初めて「お詫(わ)び」を表明して、「改修のお願い」を呼び掛けました。またメーカーがテレビコマーシャルで「改修のお願い」も始めています。

 同協議会が公表した主な具体策をみると――。

 ●未把握物件の確実な情報入手に向けて、ワンルームや賃貸マンションのデベロッパー・管理会社などにローラー作戦(総勢425人)を行う。

 ●大学生協・デベロッパー・管理会社などへチラシ配布による注意喚起や、物件情報提供の協力を要請する。

 ●協議会加盟各社が専門組織の設置を含め、専任人員の増強(加盟会社合計731人増員、総勢1210人)を実施する。

 ●修理履歴情報・代替販売情報の精査、関係取引先・販売店、各社OBを含む営業社員からの聞き取り調査などの推進を図る。

 ●テレビコマーシャルの実施による告知活動の強化。

 同協議会は、こうした取り組みを加速させて、スイッチ操作部改修の年度内100%をめざすとしています。


被害者補償でメーカー 「誠意もって話し合う」

 業界が製品の欠陥を認めたことで、被害者への補償をどうするかが問われることになります。

 同協議会は、「被害補償について、協議会は関与しないことになっています。個々の状況があるので、各メーカーと、火災に遭われた方との話し合いになります」と話します。

 メーカーの一つ、日立アプライアンスは、「誠意をもって話し合う」と、被害者に表明しています。


電気こんろ火災 追及2年の軌跡

05・3・25 メーカー責任で交換を

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 「火のないところも火事になる!? 小型電気コンロ/アパートなどの火災多発の原因に」「危ない 安全ガードないスイッチ/メーカーの責任で交換を」と、本紙は2005年3月25日付くらし家庭面(写真)で報道。

07・4・26 製品自体の欠陥を指摘

 総務省消防庁に取材、1面、4面で、「体触れただけで作動 12年間 電気こんろ火災620件」「1週間に1件の割合 業界なお責任認めず」(4月26日付、一部地域4月23日付)と報道。その中で製品事故の事故原因などを調査・分析する、経済産業省所管の独立行政法人・製品評価技術基盤機構(NITE)が、2000年11月に起きた同種事故から事故原因区分を変更。「消費者の不注意・誤使用」だったものを、製品自体に問題がある「設計不良で使い方も事故発生に影響」に変える。変更の理由は「事故が多発し、それは簡単にスイッチが回りやすい構造になっているということ」(同機構製品安全企画課)。

07・5月上旬 無償改修、新聞に広告

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(写真)質問する塩川鉄也衆院議員=5月30日、衆院経済産業委

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 経済産業省が、業界を指導。

 5月8、9、10日付の全国紙各紙に、「安全にお使い頂くためのお願い」の広告を掲載。無償改修への消費者の申し出を呼び掛ける。

07・5・30 国が製品欠陥を認める

 日本共産党の塩川鉄也衆院議員が5月30日の衆院経済産業委員会で追及。経産省が「製品自体に問題あり」とこれまでの業界の見解をくつがえす答弁。メーカーの責任を認めた上で、「業界を指導していく」と表明。

07・6・25 日立が被害者に謝罪

 火災被害に遭った山田滋雄さん=東京・豊島区在住=に、日立アプライアンスが、事故原因に「設計不良があった」と認め、おわびし、被害補償について誠意をもって話し合うとした文書を6月25日付で送付。その後、本紙取材にたいしても、同社社長室広報グループは「被害者補償について誠意をもって話し合う」との態度を表明。

07・7・3 13社、抜本的対策を発表

 松下、日立などメーカー13社が、新たに協議会を設立し、事故を防止するためにスイッチ操作部改修の年度内100%をめざす抜本的な対策を講じる、と発表(7月3日)。


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