2007年7月18日(水)「しんぶん赤旗」

独で原発論争活発化

先月事故2件 会社の虚偽発表に不信

政府は2020年代に全廃方針

推進論強める電力会社に冷水


 【ベルリン=中村美弥子】ドイツで原子力発電の将来性について議論が活発化しています。独北部の原子力発電所二カ所で六月下旬に相次いで発生した事故をめぐり、電力会社が事実と異なる発表をしていたことが判明したことがきっかけです。電力会社への批判が高まるなか、二〇二〇年代までに原発廃止を目指す政府の計画に支持が広がっています。


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 ハンブルク北西約六十キロにあるブルンスビュッテル原発で配線がショートし、原子炉が自動停止したのは先月二十八日でした。この数時間後には、ハンブルクの南東三十キロのクリュンメル原発の変電施設で火災が発生しました。火は数時間後に消し止められました。どちらの施設でも放射能漏れはありませんでした。

 クリュンメルの事故について発電所を運転するバッテンフォール社は当初、火災は原子炉と離れた場所で発生したと発表しました。しかし、発電所のあるシュレスウィヒ・ホルシュタイン州が公表したところによると、火災は原子炉施設にまで達していました。会社側はその後、発表の誤りを認め、制御室内に煙が充満していたという新たな事実を明らかにしました。

 事故を調査している同州の社会問題省は、バッテンフォール社が無責任な行動を取っていたことが判明すれば、原発施設運転許可の取り消しも辞さないとしています。

 今回の原発の事故と会社側の隠ぺい体質の露呈は、独国内で原発推進論が強まるなかで起きました。ドイツは二〇年代初めまでに国内に十七基ある原子力発電所を閉鎖することを法制化しています。国内の電力会社は、原発は安価なエネルギー供給源であり、地球温暖化への影響が少ないと主張し、原発廃止時期の延長を求めていました。

 今回の事故を受け、連邦政府のガブリエル環境相は、「原発が危険な技術であることがわかった」と述べ、予定通り国内の原発を全廃する意向を改めて表明。環境保護団体グリーンピースは、クリュンメル原子力発電所は必要な安全基準を満たしていないとして、速やかな閉鎖を求めました。

 独誌『シュピーゲル』(電子版)が十六日に公表した世論調査結果は、国民のなかに原発からの脱却が必要だとの見方が広がっていることを示唆しています。これによると、新たな原発施設が必要かとの問いに対し、回答者の62%が必要ではないと答えています。


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