2007年7月10日(火)「しんぶん赤旗」

介護保険改悪1年3カ月

「難民」生まれる 風呂に入れない


 自民、公明与党と民主党が推進した改悪介護保険法の全面実施から一年三カ月。必要なサービスが受けられなくなり「介護難民」と呼ばれる人たちが生まれています。とりわけ軽度者の多くを従来の介護給付から切り離して移行させた「新予防給付」では、受けられるサービスが減らされ、人間らしい最低限の暮らしまで脅かされています。(内藤真己子)


軽度者の利用制限・自費負担重く

 「一人ではお風呂に入れないのに、介護保険ではヘルパーさんに介助してもらえなくなり困っています。お風呂が一番の楽しみなのに」。山梨県笛吹市の田村喜子さん(84)=仮名=は開口一番、こう訴えました。

 桃畑に囲まれた丘にある一軒家。夫を亡くしてから六年間一人で暮らしています。脳こうそくの後遺症で半身がマヒし、左手はほとんど動きません。屋外は車いす。家の中では、つえをついて歩くのがやっとです。

「要支援2」に

 介護保険の認定ランクは「要介護1」でしたが、昨年七月から「新予防給付」の対象の「要支援2」になりました。介護保険の改悪によって「要介護1」の人は、病気や外傷で不安定な状態か認知症の人を除き、原則として「要支援2」にランク下げされることになったためです。

 その結果、田村さんの場合、訪問介護が週五回計十時間から週三回計三時間へ、三分の一以下に減らされたのです。

 週三回の入浴介助が受けられなくなりました。やむなく介護保険の適用外の訪問介護を頼み入浴しています。一時間二千円かかり、月にして二万八千円前後の保険外負担が生活を圧迫します。「国は通所介護で入浴しなさいと言うのかもしれないけど週一回しかない。それにお風呂は家でゆったりと入りたいんです」

疲れが目立つ

 田村さんのケアマネジャーで共立居宅介護支援事業所「ほほえみ」の堀忍さんは心配します。「効率的に援助が受けられるようにとヘルパーが来る前に台所の周りを整えたり生活の大半が家事動作に費やされ、疲れが目立つようになりました」 「忙しくて友だちに手紙を書く時間もなくなった」という田村さん。「国は『自立、自立』というけど、かえって容体が悪くなることもありますよ」と話します。

 「ヘルパーさんに週一回しか買い物を頼めなくなったので、野菜が食べにくくなったね」。同市のアパートに一人で暮らす永山実さん(62)=仮名=の場合です。やはり「要介護1」から「要支援2」に下がり、週二回一時間半ずつだった訪問介護が一回は一時間に減り、掃除や調理をすると、買い物の時間がとれないようになったのです。

 脳こうそくの後遺症で半身がマヒ。荷物を持って歩けず買い物はヘルパーが頼り。しかも小型冷蔵庫しかなく一週間分の野菜の保存はできません。「ヘルパーさんと話す時間も減ってしまって…。悲しいです」

 リハビリ治療のため通院していました。ところが医療保険の日数制限で昨年九月、打ち切りになりました。代わりに介護保険の通所リハビリに行きましたが「リハビリの内容がまったく違うんですよ。それに昼食代が一食五百円もかかるんです。月十数万円の年金じゃ続けられない…」。介護保険法の改悪で通所サービスの食費が〇五年十月から全額保険外負担になったからです。二カ月で通所リハビリを中止しました。「保険料は上がる一方なのに利用には制限があり金もかかる。しわ寄せは弱いところにばかり」


どの党が生み出した

自・公 「給付の効率化」と強行

民主党 「制度本来の姿」と推進

共産党 「給付の削減に」と反対

 多数の介護難民を生み出している改悪介護保険法は〇五年六月、自民・公明与党と民主党の賛成で成立しました。法案には、(1)軽度者向けに「新予防給付」を創設し、訪問介護などの利用を制限(2)介護施設の食費・居住費を全額自己負担にし一人当たり年約四十万円の負担増を強いる―が盛られました。

 日本共産党は「国庫(負担)の支出削減を目的に給付の削減と国民負担増ばかり押しつける法案」(小池晃参院議員)と改悪案に反対しました。

 しかし自民・公明与党は、「給付の効率化、重点化が進められる」(自民党・国井正幸参院議員)、「必要な改革」(公明党・高木美智代衆院議員)と推進。サービスの利用制限が深刻な事態を招きかねないと指摘されていたにもかかわらず「公明党が強く推進してきた介護予防システムの導入が図られる」(遠山清彦参院議員)などと持ち上げ強行したのです。

 一方、民主党は衆院委員会では批判を繰り返していましたが、採決を前に与党と悪法の本質を変えない「修正」案を共同提出し、賛成に回りました。参院でも民主党は山本孝史議員が賛成討論。新予防給付の創設は「介護保険制度本来の姿に戻ろうとするもの」などとのべ、改悪を推進しました。

 また同党は与党と共同提案した付帯決議に、現行は四十歳以上の介護保険料負担年齢の引き下げにつながる、被保険者などの「範囲の拡大」の検討を盛り込ませ、さらなる改悪に道を開きました。


共産党の参院選政策から

 日本共産党は、「二〇〇七年参議院選挙にのぞむ日本共産党宣言」で打ち出した「緊急福祉1兆円プラン」の中で、急増する“介護難民”問題を打開するため、「『介護とりあげ』を中止させ、高齢者の人間らしい生活を支えるのに必要なサービス水準を守ります。特養ホームの増設、療養病床削減の中止など、基盤整備に全力をあげます」と訴えています。

 「介護保険」についての詳しい政策は参院選分野別政策にあります。日本共産党ホームページからご覧いただけます。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp