2007年7月6日(金)「しんぶん赤旗」
通常国会にみるたしかな力 共産党(1)
暴走内閣と正面から対決
第百六十六通常国会が五日閉幕しました。十二日間の会期延長で参院選投票日をずらしてまで数々の悪法を強行した安倍自公政権。この暴走と正面から対決し、国民の利益を守りぬくたたかいを展開したのはどの党か。参院選公示(十二日)が迫ったなか、「たしかな野党」日本共産党の姿を通常国会にみます。
■記録ずくめ
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原爆投下を「しょうがない」と発言した久間章生防衛相の辞任(三日)、不透明な「事務所費」と談合疑惑の最中に松岡利勝農水相が自殺(五月二十八日)、その前には柳沢伯夫厚生労働相の「女性は産む機械」発言(一月二十七日)…。百六十二日間の今国会中に起きた一連の閣僚問題。安倍自公政権がいかに国民世論にそむき、政権担当能力がないのかを鮮明にしました。
それは、国会審議にもあらわれました。安倍晋三首相は憲法九条を目の敵にする「戦後レジーム(体制)からの脱却」にしがみつき、行政府が立法府に指図して暴走の指揮をとったのです。
今国会は記録ずくめとなりました。
――四十年ぶり。衆院、参院を通じて、野党欠席のまま与党単独で補正予算を可決。
――十八年ぶり。衆院で野党欠席のまま与党単独で本予算を可決。
――五十九年ぶり。衆院懲罰委員会で委員会開会に同意しない委員長の不信任動議を可決し、懲罰内容を議決。
与野党の合意がなかったり、質疑を与党の「数の暴力」で一方的に打ちきった強行採決は衆参あわせ、実に二十回以上に及びます。(別表)
政府・与党が強行採決に出たのは、国民世論と日本共産党などの論戦に追い詰められ、これまでのやり方では通せなくなったからです。参院選をたたかう自民党議員の一人は、自ちょう気味にいいます。
「国家公務員法改正(天下り自由化法)がザル法だという野党の追及はその通り。でも成立できず安倍さんがダメージを受けたら元も子もない」
■筋通す質問
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日本共産党は衆参両院合わせ十八人の国会議員ですが、政府・与党の暴走と正面から対決しました。「立場は別だが、共産党の質問、反対討論を聞いて唯一スジが通っていると思う」(自民党の閣僚経験者)、「共産党は民主党と一線を画しているだけに与党は苦労する」(自民党国対関係者)――与党側も日本共産党を“真の対決者”と認めます。
今国会の冒頭、柳沢厚労相の「女性は産む機械」発言をめぐって、与党単独で二〇〇六年度補正予算の審議・採決が強行される不正常な事態になりました。日本共産党は衆院議院運営委員会の理事会に出席して与党の暴挙に抗議するとともに、打開に向けた与野党国対委員長会談の開催を提起。これを契機に審議全面拒否の態度をとっていた民主、社民、国民新の野党三党も審議に応じることになりました。
与党の暴走に、民主党が加担した場面も少なくありません。参院では改憲手続き法で国民の意見を聞く中央公聴会を開かないまま、採決の日程を自民党と密室協議で合意。「事務所費」問題をきっかけに与党と民主党が提出した政治資金規正法改定案は疑惑を解明することもなく、参院でわずか一日、五時間の質疑で採決に持ち込みました。
自民党の武部勤前幹事長は「(民主党は)国会審議をボイコットしたり、審議拒否するかと思えば、すぐ立ちあがる。立ちあがるたびに(自民党の)二階俊博国対委員長に裏でいろいろおねだりして、立ちあがる材料を(くれと)いってくる」(三月二十八日の講演)と与党と民主党との国会なれ合いの内幕を明かしています。
■実態踏まえ
間違った政治にきっぱり反対する「たしかな野党」だからこそ、日本共産党は実態調査を踏まえた政策(別項)を打ち出し、国会論戦を展開してきました。
「消えた年金」問題ではすべての加入者、受給者一億人に年金保険料の納付記録を速やかに送ることを粘り強く要求。政府・与党もついに一億人に納付記録を送ることを掲げざるをえなくなりました。
日本の侵略戦争を「アジア解放の戦争」と描く、日本青年会議所作製の「靖国DVD」を文部科学省公認の教材として学校現場に持ち込む画策を国会質問で暴露。全国の父母や党地方議員団による草の根の申し入れ活動で、そのもくろみを阻止しました。
内部文書をもとに自衛隊による違憲・違法の国民監視の実態を告発したことは、政府・防衛省に大きな衝撃を与え、マスメディアも大きくとりあげました。
「たしかな野党」は政治を確実に動かしてきたのです。(つづく)
共産党が発表した主な政策提言
○「消えた年金」緊急解決法案(年金時効 特例法修正案)(6月27日)
○「消えた年金」問題に関する緊急要求 (5月29日)
〇安全でゆきとどいた医療を─看護師不足 を解決するための緊急提言(3月19日)
〇いまこそ人間らしく働けるルールを─日 本共産党の緊急提案(3月15日)
〇無慈悲な国民健康保険証のとりあげをや め、高すぎる国保料(税)の引き下げを ─住民の命と健康をまもる日本共産党の 緊急提言(3月3日)
〇貧困と格差を打開し、暮らしと平和をま もる予算へ─2007年度予算案の抜本的組 み替えを要求する(2月21日)
〇深刻な医師不足を打開し、「医療崩壊」
から地域をまもる日本共産党の提案 (2月7日)(カッコは発表日)
主な強行採決
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2月2日 衆院予算委員会、本会議を与党単独で開会し、2006年度補正予算を強行採決
衆院総務委員会で地方交付税法改悪を強行採決
5日 参院予算委を与党単独で開会し、補正予算を強行採決
6日 参院本会議を与党単独で開会し、補正予算を強行採決
3月2日 衆院本会議、予算委、財務金融委、総務委をそれぞれ与党単独で開会し、07年度予算と関連法を強行採決
15日 衆院憲法調査特別委で与党が改憲手続き法の中央公聴会日程を強行議決
4月12日 与党が衆院憲法特別委で改憲手続き法、同安保委で在日米軍再編促進法を強行採決。翌日の本会議で両法を強行採決、教育3法審議の特別委設置も議決
18日 衆院法務委で与党「修正」案の提出後数時間で改悪少年法を強行採決
27日 衆院法務委で与党が一方的に質疑を打ち切り更生保護法を強行採決
5月11日 参院憲法特委で与党と民主党が改憲手続き法を強行採決
14日 衆院イラク特委で与党がイラク派兵延長法を強行採決
25日 衆院厚労委で与党が質疑を一方的に打ち切り社会保険庁解体・民営化法を強行採決
30日 衆院厚労委で与党が年金時効特例法を強行採決
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6月1日 5月31日からの衆院本会議を延会し、社会保険庁解体・民営化法案と年金時効特例法案を強行採決
13日 衆院政治倫理・公選法特別委で与党が改定政治資金規正法を強行採決
15日 衆院財務金融委で電子記録債権法の野党質疑を一切せず強行採決
18日 衆院懲罰委で与党が委員会開会に同意しない民主党出身の懲罰委員長の不信任動議を可決し、懲罰内容を議決
19日 与党が参院外交防衛委でイラク派兵延長法、文教科学委で教育3法を強行採決
28日 参院厚生労働委で、社保庁解体・民営化法と年金時効特例法を強行採決
30日 参院本会議で、天下り自由化法を参院内閣委員会の採決を省く「中間報告」でいきなり採決