2007年7月4日(水)「しんぶん赤旗」

米ロ会談

ミサイル防衛 新提案

プーチン大統領 “NATOと協力”


 【ワシントン=鎌塚由美】ブッシュ米大統領とプーチン・ロシア大統領は二日、メーン州ケネバンクポートで前日に続き首脳会談を行いました。米国によるミサイル防衛(MD)の東欧への配備問題では具体的な合意に至らず、引き続き協議することで一致しました。

 プーチン大統領は会談後の共同記者会見で、ロシアと北大西洋条約機構(NATO)の協力でMD配備を進めるという新提案をしたことを明らかにしました。

 東欧へのMD配備について強く反発していたプーチン大統領は六月の主要国首脳会議(G8サミット)で、アゼルバイジャンのレーダー基地を共同使用することを提案。今回は、同レーダー基地の強化とともに、ロシア南部のレーダー基地との連携も提案しました。

 米国が狙うチェコまたはポーランドへの配備については、「欧州に新たな施設は必要ない」と改めて表明しました。

 ブッシュ大統領は「(NATO関与の)考えには強く同意する」と表明。しかし欧州へのMD配備については「ポーランド、チェコは含まれる必要がある」と発言、この問題での溝は埋まりませんでした。

 ハドリー大統領補佐官(国家安全保障担当)によると、ロシア側は、モスクワとブリュッセルに情報交換センターを設置することも提案したといいます。同補佐官は、プーチン氏の提案を「励まされるものだ」と語りました。

 会談では、イランや北朝鮮の核問題でも協議。イランの核開発については米側は、追加制裁でロシアからの協力を得たい考えでしたが、ロシア側は同意せず継続協議となりました。

 北朝鮮問題では、「次の段階は、北朝鮮が(核廃棄を約束した)二月十三日の合意約束へ行動すること」(ハドリー氏)に合意したといいます。


解説

平和求める声 置き去り

 米ロシア間のミサイル防衛(MD)問題での論議の特徴は、平和を求める人の声を置き去りにしたまま、軍事大国が影響を行使しようという思惑のぶつかり合いでした。

 敵の弾道ミサイルを迎撃し無力化することで先制攻撃を可能にするために、MD網を欧州へと伸ばし、チェコにレーダー基地を、ポーランドに迎撃ミサイル発射基地を建設する計画を持っているのが米国です。

 これに反発するロシアも、相次いで新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を強行。「米国の核戦略が欧州全域で拡大するのなら、われわれとしては欧州で新しい標的を設けることになる」(プーチン大統領)と強硬姿勢には変わりません。

 しかし両国とも、重大な矛盾を抱えています。

 米国では、二〇〇八年のMD関連予算を審議した下院の軍事委員会が、ブッシュ政権が要求した三億一千万ドルのうち、約半分の一億六千万ドルをばっさり削減しました。MDの欧州配備は認めつつも、「必要な国際的合意がないまま、欧州地上発射迎撃基地ないしは欧州レーダー基地の建設に支出するのは時期尚早」というのが理由でした。

 プーチン大統領の表明にたいしても、欧州メディアから、米ロ対立の激化による「新たな冷戦」につながるとして、危機感と警戒感が表明されています。

 チェコ、ポーランドでも国民の過半数がMD導入に反対しています。

 こうしたなかで、六月のドイツでのG8サミットで、プーチン大統領がアゼルバイジャンの旧ソ連レーダー基地の共同使用を提案。ブッシュ大統領は「興味深い提案」と応じたものの、思惑が交錯するだけで結論は先延ばしでした。

 プーチン大統領は共同記者会見で、北大西洋条約機構(NATO)とロシアの協力のもとでMD配備を進めるとの新提案を示したことを明らかにしました。しかし、MD計画の「口実」となっているイランのミサイル問題や核開発関連の追加制裁問題では、両首脳の一致はなく、継続協議となるなど、ここでも思惑の違いが表面化しています。(西村央)


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